「聖なる夢に幸運を」
2018年クリスマス記念作です♪
皆さんも素晴らしいクリスマスをお送りくださいね♪
クリスマス・・・。
それは年に一度しかない大切なイベント
年に一度しかないことなんて、世の中にいくらだって存在するだろう。
だけど、私にとってこの日だけは絶対に忘れられない最も大切な日なのだ。
それなのに、どうして・・・。
どうして私は今こんな寒い場所に立っているの!?
12月25日、19時30分
去年までの私であれば、今頃は恋愛ドラマを部屋でくつろぎながら見ているか、
それとも友達の香澄と他愛もないおしゃべりをしていることだろう。
だけど、今年2018年の私はなぜか、
サンタコスを着せられた状態で売り子をさせられている
どうして、こんなことをさせられる羽目になったのだろう。
どう記憶を振り絞っても、なぜかその記憶だけが
欠落しているかのように全く思い出せない。
というか、こんなの私じゃない。
このクリスマスだけは予定を空けている私がこんな格好をしながら、
売り子をするだなんて、どう考えてもあり得ない。
だけど、今ここにいて売り子をしているという事実は変えられない事実なので、
しょうがなく売り子をしていた。
はぁ、早く帰りたいなぁ。
20:30
まだ帰ることができそうにない。
ケーキを100個売り終わるまでは仕事を終わることができない。
そんな今考えると無謀で鬼畜な仕事内容をなんで私は引き受けたの!?
この仕事を引き受けた時の時間軸にもしも戻れるならば、
絶対にその時の私を説き伏せて止めさせたはずだ。
っていうよりも、100個を赤の他人に売りつけるだなんて、
常識的にどう考えても無理!
精々20個ほどが限界だと私は思っていた。
それも完全なる素人の私が、
ただサンタコスを着ただけで売れるようになるわけがない。
それに先ほどから妙にねっとりと絡みつくような
気持ちの悪い男の視線を方々から感じていた。
まあ、そりゃ、こんなにもスカートの丈の短い服を着ていたら見てしまうのが、
男の人の本能なのかもしれないけど、当事者の私からすれば
想像以上に気持ちの悪い感覚だった。
「あ、あの!!」
うん?なんかナヨっとした少年がわたしに話しかけてきたわ。
その少年の顔はそこそこいい感じの部類には入るのだろうけど、
その自信のなさげな挙動や態度がその良さを激減させていた。
「あ、いらっしゃいませ~!ケーキをお求めですか?」
しかし、私に話しかけてきたということは、お客様である可能性が高い。
一旦、この場にいる不満は隅に追いやって精一杯の
作り笑顔を浮かべながら、彼に返答した。
すると彼は明らかに不振に目をきょろきょろとさせたかと思うと、
これまたぎこちない笑みを浮かべた。そして・・・。
「お、お姉さん!!あ、あの、も、もしも、良ければなんですけど、
お、俺とき、キスしてくれませんか!!」
「は!?」
あまりにも突拍子もない衝撃的な発言に私は思わず、
客という意識を忘れて、言葉を発してしまっていた。
はぁ!?何言ってんだこいつ・・・。
出会って間もない売り子にキスを求めるか?普通。
多分、友達との罰ゲームなのかもしれないけど、どう考えても悪趣味だし、
いじめなんじゃないの?これ・・・。
それにしても、どうしようかな。
こうあからさまに拒絶の意思を見せて追い返すと、後で嫌な目に遭遇しそうだし、
逆にこんなことでキスなんてしたら、絶対に周りにいる人たちに
変な目で見られてしまうことだろう。
はぁ、本当にどうしたものか。
私は悩んだ。
こういう突拍子もない状況に遭遇したことがなかったため、
回避するための手段や言葉が頭の中にはなかった。
こういう経験に慣れたくはないけど、
切り返し方の一つくらいは知っておくべきだった。
そうして回避のための言葉を考えていると、
彼は握りしめていた手を私の目の前に差しだしてきた。
かと思うと、その手をパッと開いて中を見せてきた。
中にあったのはなんと5万円だった。
売り子をしているこのケーキの値段は1つが500円。
つまりこの5万円をもらえれば、ケーキ100個を売ったことになるのではないか。
それは私にとってはメリットだらけの好都合な誘惑だった
だからといって、そんなにも簡単に唇を見知らぬ男性に明け渡すほど安い女ではない。
でもその5万円はどうしても欲しい。
この地獄のような場所から解放されるために必要最小限で最大限の金額。
しばらくの間、私の心の中の天使と悪魔が戦いを繰り広げている。
天使「そんなのダメよ!!そんな見知らぬ男性とキスをするだなんて、
そ、そんなの風俗嬢と一緒じゃない!!ここでそんな代償を支払う必要なんてないわ。
ここはおとなしく普通に売り子をしましょうよ」
悪魔「はぁ、お前の頭の中は花畑なのか・・・。ここであの男とキスしてしまえば、
この現状から抜けることが出来て、いつも通りのクリスマスに戻れるんだぞ。
なにを迷うことがある。それにだぞ、5万円を支払わせて、
キスだけならいいと思うんだけどな・・・。そんくらい出すってことはその先も・・・。」
天使「や、やめなさいよ!!下品だわ。本当に。いつもあなたはそうやって、
あの子に楽な道を示すけど、そういうのやめてくれない?迷惑なの!!」
悪魔「あ?迷惑なのはどっちなんだ!この偽善天使め!
こっちはアイツに最善の道を示しているだけだ。そういうお前の方こそ、
アイツに遠回りな道ばかり提示して、迷惑なんじゃねぇのかよ」
天使「そ、そんなことないもん!!そ、それにキスっていうのは
女の子にとってはすごく大切なことなの!!
そんな、見知らぬ男に安売りするものじゃないのよ」
悪魔「あ~。そうかよ。それなら、お前にキスすることの気持ちよさを教えてやるよ」
悪魔は天使を押し倒すと、そのまま唇と唇を重ね合わせた。
天使「あっ、な、なにするの、う、う~」
そして天使が言葉を発する余力を刈り取るかのように悪魔は舌で天使の口を弄っていく
天使「や、やらぁ、やめれぇ///」
いつの間にか天使の吐息は熱いものへと変わり、こぼれ出す喘ぎ声の数々・・・。
数秒後・・・。
天使「キスしちゃってもいいんじゃないかしら。減るもんじゃないんだから・・・。」
潤んだ瞳と紅潮した頬になりながら、天使は私に訴えかけてきた。
私の心の中の天使、ちょろ過ぎない!?
完全に雌に堕とされてるし・・・。
天使と悪魔の闘いは悪魔の完全勝利によって幕を閉じた。・
そしてそれは私が今からこの少年とキスをすることを意味していた。
はぁ、もう少しくらい粘ってほしかったわ。私の天使・・・。
キスをして5万円を手に入れる覚悟を決めた私は、
少年を周りの目が見えないような場所に移動させようと、
首をケーキケースの裏の方向へ向けた。
その動作の意味になんと瞬時に気付いてくれたのか、少年はそっちへ歩を進めた。
そして運命の瞬間は訪れた。
少年と私はお客が来ないことをちらりと確認しながら、ケーキケースの裏に隠れた。
鼓動がお互いに激しく脈打っているのか、
ドクンドクンという音が双方から聞こえてくる。
少年はあまりの緊張になのか目を閉じてしまった。
男の子とは思えないほどの長いまつ毛に
まだ"女"を知らないであろうその口が私の心を妙にそそった。
先ほどまでは全くそんなことを思わなかったはずなのに、
今ではこの男の子に無性にキスをしたいという衝動に支配されていた。
私はごく自然に少年の唇に自分の唇を重ね合わせると、
そのまま唇同士で挟んであげた。
少年は快楽に浸っているかのように嬉しそうな表情を浮かべながら、
チロチロと少しだけ申し訳なさそうに舌を差し込んできた。
それに応じるかのように私も舌を彼の口の中へ差し入れると、口腔内を弄った。
お互いの口の中で舌が絡み合い、まるでセックスを口の中で
しているかのような変な感覚に陥った。
気持ちいい・・・。
「お~い。秋葉。もうそろそろ起きろよなぁ」
誰かが私の名前を呼びながら、体を揺すってくる。
その絶妙にいい感じの揺れに、私の心はますます起きることを拒否していた。
だけど・・・。
そんな私の態度に痺れを切らしたのか、
私の名前を呼んでいた彼もまた隣に寝転がってきた。
そしてそのまま、何の前触れもなく抱きしめられた。
これにはさすがの私の意識も一気に覚醒し、目をぱちぱちさせながら彼を見た。
「あ、やっと起きたな。本当に秋葉はお寝坊さんだ。
ま、そんなところも俺は好きで仕方がないところなんだけど、
今日はデートするんだろ?せっかくのクリスマスだから、
明日は早起きして遠出しよって張り切っていたじゃないか。な?
あ、それとも気が変わって、このままこのベッドの中から
一日中出ないで俺と過ごすってことかな・・・。」
彼のその言葉で私は全てを思い出した。
そうだった。
今日はクリスマスだから、昨日の夜から彼の家に泊まって、
今日は早起きして遠出しようっていう計画を立てていたんだった。
なんで忘れちゃっていたんだろう。まあ、でもなんでかなぁ。
すごく幸せな夢を見ていた気がする・・・。
このままもう少しだけ、彼に抱きしめられながらゆっくりしてもいいかもしれないわね。
私は自分の手を彼の背中に回すと、私からも抱きしめ返した。
「お~。今日の秋葉はいつにもまして甘えん坊だな。
そんな可愛い俺の彼女にはこうしてやる。」
チュッ・・・。
彼の唇が私の唇に合わさり、昨日食べたケーキの甘い味が私たちを包み込み、
今年のクリスマスは今まで生きてきた人生の中で最高なものになる。
そんな予感がした・・・。
Fin