聖夜になったその瞬間に
クリスマスの日、告白しようとしていた彼女に
待っていたのは・・・。
2017年のクリスマスに投稿した短編を移動させました。
クリスマスイブ、私は一人になってしまった。
好きだった俊介はもうこの世にはいない。
(私があんなことを願わなければ、良かったんだ・・・)
今日は俊介に告白しようと張り切っていた。
幼いころから隣に住んでいた私と俊介は幼馴染と呼ばれる部類の仲であり、
中学高校と同じ学校に通い、来年の春からは大学も一緒だった。
このままずっと一緒にいられると漠然とそう思っていた。
それなのに、現実は大きく違った。
俊介は大学に入ることを機に一人暮らしをする決意を固めていたようで、
9月の半ばから引っ越しに取り掛かっていた。
そしてその時まで私の中では俊介は単なる幼馴染だったはずなのに、
いつからか彼を好きだったということに気付くきっかけになってしまった。
大学に行けば絶対に会えることは間違いなかった。
だけど今みたいに一緒に学校へ通うことが出来なくなることだけが、
どうしても嫌だった。
このまま離れていってしまいそうで。
だから私は大学に入る前に告白をしようと思った。
それもできる限り早く、彼が自分の隣からいなくなる前に
私は俊介にお願いをした。
引っ越しの前日に伝えたいことがあるから、クリスマスタワーの前に来て。と
奇しくも俊介が引っ越しする日は12月24日のクリスマスイブだったのだ。
これが幸運だったのか、不幸だったのか、
その前日から家の近くにあるタワーにはクリスマスの装飾がなされ、
赤色と緑色の光が付くのだ。
私はこれの前で俊介に告白をしようと思った。
当日の朝から私は緊張しすぎて、挙動不審だったと思う。
彼への告白も結構考えた。
想いが通じ合うことがベストだったが、
もしも想いが通じなくてもいいと思っていた。
(これだけ考えたんだもん。どんな結果になっても後悔しないはず)
クリスマスタワーには待ち合わせ時間の30分前に着いた。
この時期はすごく寒いので、私はきっちりと服を着こんできて、
防寒は万全だった。
後は俊介がここへ来て、想いを伝えるだけ。
たったそれだけの事だった・・・。
もう既に待ち合わせ時間から1時間が過ぎようとしていた。
だけど俊介が私の目の前に現れることはなく、
告白できずに待ちぼうけを食らっていた。
俊介が遅れるなんてことは日常茶飯事のことだったが、
今日だけは遅れてほしくなかった。
(はぁあ、このまま俊介が来なかったらどうしよう。嫌だなぁ)
もしかしたら忘れているだけなのかも、そう思った。
本当はずっと待ってもいいと思っていたが、
心配になってきた私は電話をかけることにした。
(これでもし忘れてたら、脈ないんだろうなぁ・・・。)
電話に出ない。
いつもならコールから30秒程度で電話に出てくれるはずの俊介が出てくれない。
その時は多分、手が離せない状況だったんだと思った私は、
ストーカーみたいかもしれなかったが、10分おきに電話をかけることにした。
しかし、いくらかけても彼が電話に出てくれることはなく、
次第に不安と心配が大きくなっていった。
(事故にあってないよね?)
そう考えた瞬間だった。突如、急な風が吹いてきたのは。
それと同時に私は立ち上がると、俊介の家に向かって走り出した。
(なんだか今、嫌な感じがした。すれ違いになるのは嫌だけど、
一度俊介の家に行ってみよう。無事でいてよ。)
私は思い切り走った。
息を吸うのを忘れるくらいの速さで、
早く不安を拭い去りたいその一心で走った。
やっと俊介の家が見えてきた。
しかし、彼の家が視界に入った瞬間、違和感があった。
(な、に、あれ?)
私が目をこらしていくと、そこにあったのは救急車とパトカーの2台で、
どう見ても俊介の家の前に停まっていた。
(そ、そんな、まさかそんなことあるわけ・・・)
私は救急車とパトカーの姿を目に捕えた瞬間から、
どんどん速度が遅くなっていたのだが、
あるものが目に入った瞬間、顔から血の気が失せ、
倒れるように俊介の家にたどり着いた。
これが夢であったのなら、どんなにも良かったことだろうか。
私と俊介の家族、それに私の家族の6人は俊介の前で涙を流していた。
今、私たちの目の前にいる俊介はただ眠っているだけのように見えた。
少し体をゆすれば起きるかもしれない。そんな期待が胸をよぎったが、
無情にもお医者さんは彼の顔に白い布を乗せると、
絶対に聞きたくない言葉を発した。
「19時42分、篠宮俊介さん、18歳、ご臨終です」
俊介は死んでしまった。
後から俊介の両親に聞いた話によると、
俊介は今日のことを大変楽しみにしてくれていたようで、
更には自分と同じように何かを伝えようとしていたという。
だけど、神様なのか病気なのかは無情にも、その楽しみを奪っていった。
彼は昔から心臓が弱かった。
だからあんまり寒い場所にもいることが出来ないし、
体育をすることも控えるなど心臓に負担のかかることは極力避けていた。
だけど私と会う前日から楽しみにしていた俊介は
ほんの些細なミスを犯してしまった。
それは、これだけ寒い中、
冷房を付けたまま寝てしまうということをしてしまった。
普通の人であれば、風邪をひく程度で終わることだろう。
だけど極限まで冷たくなった部屋に心臓が弱い俊介はいたのだ。
俊介はそのまま息を引き取った。
そして最悪だったことに、
その日おじさんとおばさんは昨夜から仕事が入っていたようで、
家にはおらず、それに加えての超勤があったせいで、
家に戻ったのはつい先ほど
当初、私に会いに行ったのだと思っていたらしいが、
おばさんが彼の部屋の電気がついていて、
開けたことで俊介をやっと発見したようだ。
室温は18度まで下がっていたそうだ。
そしてもう死後から何時間も経ってはいたが、
諦められずに必死に蘇生措置を施したが、その甲斐空しく、
俊介は死んだままだった。
私がさっき見たのは、そんな彼が担架で運び出された瞬間だった。
私は自分が許せなかった。
もしも私があんなお願いをせずに俊也に告白をしていたのならば、
こんなことにはならなかったのかもしれないのだから。
(私のせいだ。私があんなお願いをするから悪かったんだ・・・)
その瞬間、私の涙腺は崩壊して、大粒の涙が後から後からあふれてきた。
そこからどうやって家まで戻ってきたのかは覚えていない。
部屋に戻ると、そのまま私はベッドに倒れ込んで、また涙を流した。
どれだけ泣いても涙は止まってはくれなかった。
今夜は眠れないだろう
ピコンっ
私が失意のどん底に叩き落されている中、時刻は0時を回り、クリスマスになった。
ちょうど、その瞬間メールの通知音が耳に届いた。
(誰だろう。)
半ば嫌々スマホを自分の鞄から取り出し、
メールの宛先を見た瞬間、私は硬直した。
そのあて先は篠宮俊介だったからだ。
そして、そのメールが送信されたのは昨日の0時になっていた。
予約送信で送ったことに気付いた。
(これが俊介の最期のメッセージ・・・。)
本当はもう読みたくなかった。
だってどんなことが書かれていても返信も
会って話すことだってできないのだから。
一瞬、このまま読まずに消してしまおうかとも思った。
だけど・・・。
私は意を決して、俊介からのメールを開けた。
「メリークリスマス!!こうしてお前にこの言葉を伝えるのも何度目になるのかな。本当はお前に会ってからこのメールも作ろうと思ったんだが、俺って遅刻魔じゃん。今日お前と逢って楽しすぎて、そのまま忘れてしまっては元も子もないから今から作ってお前に送ることにしたんだ。今回は長文になりそうだから先に謝っておくよ。今日、お前と会う約束をしてさ、すごい楽しみだっていう気持ちと同時に話って何なんだ!?って不安もあるんだ。俺とお前は結構長い付き合いだし、それなりにお互いのことを分かっているつもりだ。だから俺と同じ気持ちならどんなに嬉しいだろうなって思う。もしかしたら今日の話は全く違う話なのかもしれない。だとしたら俺がこれから伝える言葉はすごく恥ずかしいことだし、迷惑かもしれない。だけどこんな日じゃきゃ伝えられない。だから聞いてくれ。
俺、お前のことが好きだ。これからは住んでいるところは隣じゃなくなるけど、俺の人生の隣でずっと笑っていてくれないか。な~んて少しキザなセリフだったな。俺今まではお前のことを単なる幼馴染だとしか思っていなかった。だけどこうして引っ越しの準備を初めてからよく思っていたんだ。「そ~か、これからはアイツと通学できないのか。隣にずっといないのか」って。そしたらさ、日を重ねるごとに愛しくなってきたんだ。これが好きだってことなのかもな。はは、本当に長文になってしまったな。それに先走りすぎて痛いな、俺。なんか本当に明日のことで盛り上がっちゃったな。悪い。それじゃあ、今日を楽しもうか。ってこのメールを見てるときは明日だからこれじゃあ、おかしいよな。
最後にもう一度伝えさせてくれ。好きだ。付き合ってくれ。
返事は何でもいいけど、お願いだから縁切るとかは言わないでくれよ~((笑))」
俊介からのメールは告白だった。
最後は俊介らしく面白おかしい締めで終わっていた。
私は目の前が見えなくなった。
それは涙によるもので、先ほどの涙とは違う涙があふれ出してくる。
そう私と俊介は両想いだったのだ。お互いがお互いに告白をしようとしていた。
もっと早くに告白をしていれば、私と俊介は結ばれていて、
こんな悲しいクリスマスを送ることもなかったのかもしれない。
そう思うと、また涙が出てきた。
15年後
「ねぇねぇ。先生はなんで結婚しないの~?」
「フフフ、それよく聞かれるけど私、もう結婚してるのよ~」
「え、そうなんだ!!俺、先生の事狙ってたんだけどなぁ。
でももう諦めがついたよ。
先生がそんな嬉しそうな笑顔でいう人ってことは結構いい男なんだろ?
そんな男には勝てそうにねぇよ。あ~あ、沙織にでも告白してみるかな。
俺、先生の次にアイツのことが好きなんだ」
「ふふ、そうよ~!!あの人は本当にいい人なのよ~。
今は遠いところにいるけどね。
それよりも山下君、そんな気持ちで沙織ちゃんに告白するのは失礼よ。
きっちりと好きだって思ってから告白しなきゃね。
あ、でもね!その気持ちが固まったら、
結果を恐れずになるべく早く告白するのよ。
そうしないと後悔しちゃうんだから~」
「わかったよ。先生、ありがとうな。」
山下君が去っていったのを確認した私は空を見た。
今日の空はいつもよりも真っ青な感じがした
「俊介、私はあなたのことを愛し続けながら生きていくわ。」
その言葉は誰の耳にも届かなかったが、
なぜか俊介には届いている気がした。
Fin
どうでしたでしょうか?
皆さんももし好きな人がいるならば、思い切って告白してみてはいかがでしょうか?
しないよりはして後悔した方が私はいいと思います!!
(その人がいつも元気で隣でいてくれるとは限らないので)
この作品が皆様のそんな想いの一助になったのならば、幸いです♪
(生意気ですよね(笑))