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プロローグ
「この仕事をしていて、こんなこと言うのよくないと思うんですけど、結婚したくないんです」
カメラマンである彼女のイヤリングが揺れて、何だか懐かしい気持ちになった。女には、男と違って出産のリミットがある。三十路、晩婚化なんて言われて、満足に仕事を続けられず、育休も産休も取りづらい。なのに世間は少子化だと騒ぐ。そしてこの不景気。結婚したくないと思うのは、無理もない。
「今は自分の世話で精いっぱいなんです」
「うん、いいんじゃないかなあ。周りは急かすと思うけど」
「そうなんですよ、そこなんですよね」
「気にしちゃだめだよ。自分の生きたいように生きなくちゃ」
「そうですよね」
「うん。それに、本当に縁があったら、いやでもくっつくから」




