12話 目覚め
ーーーーーー見慣れない天井だ...
「どこだよ!ここ!」
(っっっ〜〜〜〜!!)
勢いよく起き上がったのはいいが、その拍子にまた傷口が開いたようだ
「何やってんだか...」
そう言うのは昨日の男を縄で拘束してベンチにしてるジェーンである
「お前が何やってるんだよ」
チラッと男...たしかゼロ・メジャーマンの方を見ると困惑の視線に気がついたようで
「大丈夫、交渉の末だ」
(開口一番何言ってんだコイツ...)
「状況を説明するとね....
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どうやら俺はあのあと貧血でぶっ倒れたらしい、ほんでここ、ツーソンの宿屋にとりあえず運んだらしい
「で...そいつは?」
少し不服そうにジェーンのベンチになってる男について尋ねると
「これは先の戦闘後に言ってた通り名前はゼロ・メジャーマン」
「これ呼ばわりはひでーなぁ..まぁ気軽にゼロとでも呼んでくれ」
(そうだ!たしかコイツ!)
「なぁゼロ、お前たしかロス教団だって言ってたよな」
「あぁそうだ俺はロス教団だったが今は獣人絶滅を望んでるってわけじゃないんだぜ?」
「そんな嘘八百なことを...」
「知ってるか?教団の戦闘要員はほとんど特殊魔法持ちなんだ、おかしいと思わないか?
ただでさえ少ない特殊魔法持ちが教団にいる理由」
「まさか...」
(洗脳系か...!)
「多分そのまさかだ、幹部にそういう能力を持ってるやつがいるんだ、
現に俺も思想を捻じ曲げられていた、で、打ち所が良かったのか悪かったのか、頭打って洗脳から解けたってわけだ」
「じゃあ今後襲ってくるやつも頭ぶん殴ればいけるのか?」
「いや、そんな甘くない、そいつの能力の洗脳もあるが、もっと厄介なのが、ヤツは煽動家でもある、卓越した演説力で人の心を鷲掴みにするのさ」
「なるほどなぁ、最終的に自分の意思で教団の一員になってるからぶん殴っても効かないと?」
「あぁ、それに単純に金で雇われたヤツや戦闘狂のイカれたやつとかもいるしな」
「まぁ俺の心にあの演説は届かなかったがな!」
ゼロがドヤ顔で言う
「で、能力で洗脳されたと?」
「そーいうこった」
「そんな簡単に洗脳って解けるものなのか?信用できねーな」
(洗脳とかテレビですら見たことないしな)
「しらん、解けたもんは仕方ないだろ、だから自ら拘束されてるんだろが」
「精神的に図太いやつほど解けやすいんじゃないの?」
ジェーンがゼロに座りながら言った
「へ!ありえるな!...それともう一つ、おそらくだが上層部も獣人の全滅は望んでない」
「「上層部も?」」
「それは初耳なんだけど」
ジェーンもキョトンとしている
「なぁ、ロス教団ってのはいつ頃できたと思う?」
「え?一応宗教だし軽く600年前くらい?」
「10年前だ」
(みじか!新興宗教かよ!)
「そしてこの国で奴隷がいなくなって困るのは誰だ?」
「!!!!」
ジェーンは電流が走ったような顔をした
「ネコちゃんは分かったみたいだな、というかそろそろどいてくれ...眠いしキツくなってきた」
いろいろありすぎて気がつかなかったが今夜中なのか、今
「なるほどねぇ...その推測に免じてどいてやろう」
散々な扱いだったがさっきのでゼロを少し一目置いたっぽいな
「ダメ、もう限界眠い、ネコちゃん兄ちゃんおやすみ」
そう言いゼロは眠りについた
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「あのージェーンさん...俺なんもわかんないですが」
「あー、まぁカイトが知らないこともあるし仕方ないか」
「えっとね、簡単に説明すると、まずこの国の奴隷はほとんど獣人なの。
そして前に言ったけど国王は奴隷を解放しようとしている、
けどこれをよしとしないのが貴族どもなんだ」
「貴重な低待遇で働いてくれる奴隷がいなくなるからってわけか」
「そーいうこと」
(どこの世界にも腐った貴族っているんだなぁ)
「それで貴族たちが秘密裏に結成させたのがロス教団。政府すら報復を恐れて獣人を解放できない状況ってわけ今」
「はぇーなるほどなぁ」
「まぁあくまで推測だからね?当たってるとは限らないよ?今日はもう遅いし寝よ?」
「そいつは放置でいいの?寝首をかかれたらたまったもんじゃねぇぞ」
ゼロは縛られながらも安らかに寝ている
「いや、おそらく大丈夫だ敵意も殺気がない
「そんなことわかるのか?」
「だって猫だもん、そんなに心配なら自分で監視しときなぁ〜」
そう言いジェーンは隣のベッドの毛布に包まった
「......寝るか」
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(見覚えのある天井だ...)
窓からの柔らかな朝日、小鳥のさえずりとともに目を覚ましたようだ、二人ともまだ寝てるし二度寝するか...
(腹減ったトイレしたい口臭い!)
二度寝しようと試みたがこの三連コンボに阻まれた
「とりあえずトイレ行くか...」
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「案の定トイレは汚かったな。
ノートで道具出して歯磨きもしたしそろそろコイツら起こすか」
「お〜い、ジェーンの姉貴ぃ朝ですゼェ」
肩をゆさゆさ揺らすが
「ん〜あと五分」
(その言い回しは別世界レベルで共通なのか...)
「ダメだ、飯食うぞ」
「やだ」
そう言いジェーンは蹴りをかましてきた
(イテェ!、コイツ朦朧としてるとき性格悪くなるタイプか、ならばこっちも!)
ノートで氷を出し唇に乗っける、イカやコンニャクにしなかったのは良心だ
ジェーンは不快そうに呻きながら氷を手で跳ね除ける、また乗せる、退ける、乗せる
「やめんかコラ!!」
「目覚めたか?」
「いや覚めたけども....まぁいいよ、じゃあゼロも起こしてご飯行こう」
「いいんか?」
「餓死させるわけにはいかないでしょ、それに敵意もなさそうだし」
「まぁそうだな」
「おーい起きろ!」
肩をガクガク揺らすと
「うぉぁぁ.....オハヨーさん。朝か?」
結構素直に起きてくれたな
「あぁそうだ...で、どこで食べる?」
ノートでだしてもいいが、せっかくならこの世界の食文化を体験したいな
「とりあえずやることやってから宿の食堂で食べよう」
ジェーンたちは顔洗いやらなんやらしている間に荷物の整理でもするか
「ん?あれ!俺の銃がない!!って戦闘で落としたんだったな...しょうがない新しいの出すか、いでよ二世」
そう言い一世を斜線で消し新たに銃を出し、ベルトの革製ホルスターにしまい予備弾倉も使ったぶんだけ補充した
「「準備終わったぞー」」
「へいへーい了解」
3人は下の食堂へ向かった
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「相変わらず食堂ってのはどこもワイワイガヤガヤ朝っぱらからうるさいな」
「まぁまぁ楽しんで食事をするのはいいことじゃないか」
ジェーンが固い肉を噛み噛みしながら言った、デジャヴを感じるな
「で、今日の予定は?」
「ない、次の町行き馬車の出発は3日後、それまで宿屋でごろごろするなり店を見てまわったりしてな」
「大丈夫なのか?そんな期間滞在して?」
「じゃあ歩く?結構遠いけど」
「うーんそれは勘弁だな...じゃあ今日何してようかな〜」
「暇ならギルド行こーぜ!」
ゼロがパンを食べながら提案した
「まぁとりあえず飯食ってからだな」
「お待たせいたしました!」
(きたきたきた!マンガ肉!)
「ありがと!」
カイトは気分良く肉を受け取った
「でかい肉だなー」
ゼロが物欲しそうにこっちをみている
「あげねーぞ?」
(男なら誰しもが憧れるよなぁ!この肉塊に!
料理ってのはまず数秒香りを楽しんでからだな)
焼きたてで立ち込めるマンガ肉、いやこんがり肉の香りとほんのりとこっそりシェフに渡した香辛料の香り、
焼かれた肉にポツポツと振られているハーブ
「ヒャア がまんできねぇ0だ!」
両端の骨を掴み下品にかぶりつくと同時に口の中に肉の旨みが広がる
(う〜んこういう料理にはこういう食い方が一番合うなぁ)
荒っぽい肉料理特有の臭みはなく、むしろタイムらしきもので風味豊かな味に仕上がってる
「よく朝っぱらからそんなもの食べられるね、そして食べ方汚いなぁ」
好きなのかジェーンは2個目の固い肉をガジガジと食いながら言った
「うるせえな!こうやって食うのが一番美味いんだよ」
(どっちもどっちなんだよなぁ)
とゼロは肘をつき、パンを食べながら心の中でそう思った
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「ふぇー満腹満腹」
しばらく肉はいいかなってくらい食ったな
「じゃあそろそろ町に出るかな」
「そうだな」
朝飯の会計を済ませガチャリとドアを開けるとサラマとは違い、森の中の町っていう感じだ
「はえ〜すっごいオサレ」
「たしか...ギルドはこっちだったかな?」
少し見てまわりたい気もするがおとなしくジェーンについていくか
武器屋に防具屋、道具屋パン屋、ギルドへの道に寄り道したすぎるものがたくさん
(あとでゆっくりまわるか)
「あった!ここだ」
ギルドの中に入るが受付と食堂が併設されてるせいかドッタンバッタン大騒ぎしててうるさい
(この世界では食堂で騒ぐのは文化なのか?喋るなとは言わんが...)
「こっちこっち」
ジェーンに案内されたのは受付横の掲示板っぽいもの
「これは?」
「ここにさまざまな依頼が寄せられるんだ、紙を引っぺがして受付に渡すと依頼を受けられるよ」
「お前冒険者なのにそんなことも知らなかったのか...」
ゼロが哀れみの目でこっちを見てきた、なんかうざいな
「まぁいいどれどれ...」
ペット探しに護衛、植物採集
(微妙だな、というか俺金いらんしなぁ...お!ダンジョン探索の依頼だ!なんと楽しげなものが)
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ダンジョンの初期探査 D
概要: ここから東にできたダンジョンの探査で
す、ちょっとした廃洋館なので規模は小さめ
と予測されます。
達成条件:地図作成
報酬:50000ユードル(地図の出来、コア発見など
で昇給アリ)
注意事項:規模が小さいといえダンジョンですので
油断はしないでください
依頼主:ツーソン自警団
「おい!これなんてどうだ!」
「ダンジョン探索だって?なにかと鈍臭いキミが生きて帰れるかなぁ」
「だ、大丈夫だって、多分」
「まぁいんじゃねぇの?依頼書によるとダンジョンの規模は小さいらしいし」
「そう?ならいいけど」
やったぜ。
さっそく依頼書を引っぺがし受付に持っていった
「ダンジョン探索ですね少々お待ちください...お名前は?」
「カイトです」
「カイトさんですねー...えーっとあなた冒険者になったばかりらしいですけど大丈夫何ですか」
「優秀な味方がいるんで」
受付嬢はふーんみたいな興味なさそうな顔をして業務をこなした
「じゃあこちらダンジョンまでの地図と方眼紙でございます、こちらで出来る限りダンジョンの地図を作ってください、ではいってらっしゃい」
「よし、行くか」