10話 準備
「ふにゃぁぁっ....って朝じゃないか!?しかもカイトいないし!!」
「ただいま、今帰ってきたぞ〜」
「どこいってたの!しかもその怪我どうしたの!?」
質問責めだなぁ、まぁあたりまえか
「いや、さっきロス教団に襲われたから撃退したんだ」
俺は素直に言った、あまり考えたくないが多分今後も襲われるから今嘘ついてもバレるだろう
「え?....なんで逃げなかったの!!」
ジェーンは血相を変えて言った。
「え、でも...撃退したし」
「それは結果論だよ!死んでもおかしくなかったんだよ!!キミ弱そうだから敵が油断しただけだよ!!!」
うっ...確か敵が普通に殺しに来てればピアノ線には引っかからなかったな...
「それに...まさかだけど撃退ってことは逃げられたってこと?」
「.........うん」
「どうすんのさ...これから、キミ顔覚えられちゃったよ...奴ら今後はキミにも襲ってくるよ」
「まぁ...やっちゃったことは仕方ないな...」
こうなることは覚悟はしていたハズだ
「それやらかした人のセリフじゃないよ、でも...まぁ...なに..助けてくれてありがとう...」
ガラにもない事を言うのは恥ずかしいようだ
「ほらみせて、回復魔法かけるから」
「魔法!?」
「....まさか魔法技術を知らないとでも言うつもりかい?」
「いや、さすがに存在を知らないこともないが」
「ならいいけど...」
《ヒール》
ジェーンはそう言い、手のひらを傷口に少し触れると黄色い光に包まれ、ジンジンした痛み消えていった
「こんなもんかな?包帯取ってもいいと思うよ」
言われた通り取ってみたが見事傷口は塞がっていた
「マジかよ...こんなすぐ治るもんなのか?」
「回復魔法って言ってもいろいろあるからね、
今使ったのは軽い切り傷擦り傷が治る程度のやつだよ」
「...?これって軽い切り傷の部類に入るのか?」
「入んないね!」
「?」
「私がすごいからだ!」
(赤面したりドヤ顔したり忙しいやつだ...)
「まぁそれは置いといてこれからどうする?」
ジェーンはいつも通りの表情に戻りそう言った
「うーん...同じ所に留まってるのは襲われる一方だし、ある程度街で準備を整え次第他の街に行くか。」
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「なぁジェーン」
ランチタイムの騒がしい街である程度買い物を済ませて歩いてるときに俺は尋ねた。
「ん?なんだい」
「魔法ってどうやって出すんだ?」
「え?キミ魔法使えないの?」
ジェーンは驚いたような目でこっちを見てきた。
「う...うん」
「よくそれでロス教団を撃退できたね.....」
ジェーンは完全に呆れた目で見てきた。
(しょーがねーだろ元現代人なんだから。)
「ま...まぁいいよちょうどあそこに魔法具店があるから待ってて」
(自分が火を操ったりすると思うとワクワクしてきたな!だが、もともとこの世界の人じゃない俺に魔法って使えるのかなぁ、まぁもし才能なくても、ないなりに頑張るが)
ジェーンはなんか胡散臭い感じの店に入っていったが、5分もしないうちに戻ってきた。
「おまたせ」
「何買ってきたんだ?」
「この魔石だよ、これには使った者の魔法の素質がどれくらいあるか分かる」
ジェーンはそう言い虹色の油膜みたいな柄をした石ころを出した。
「さぁ、この石に力を込めて手をかざして力をこめてみて!」
「こ、こう?」
カイトは指先がプルプルするぐらい力を込めた次の瞬間
パリンッ!!
(えっ??)
割れた、石が割れた。
「えーっとこれはどういう事だ?」
(まさかついでに魔力チートも神様からいただいちゃったか〜?)
「あー...うん...その...なんていうか、ご愁傷様」
「いやどういうことだよ!」
(まさかだけど...)
「魔法が苦手とかそういうレベルじゃない、魔力自体がないんだ、けっこう珍しい体質だよ」
「......」
(魔法...使ってみたかったなぁ)
「そ、そう落ち込まないでよ!剣とか弓だって悪くないよ!それに..ほら!どうしても魔法が使いたいなら魔力内蔵の魔法具買えばいいし!」
「でもなぁ...才能ゼロ以前の問題かぁ」
儚い夢だった
「こういうものだってあるから!」
そうジェーンは言い、紙ペラを渡してきた
「なにこれ?」
奇妙な記号がたくさん羅列していて字面がとてもうるさい
「さっき言った魔力内蔵の魔法具の一つだよ」
「この紙切れが?」
「うん、小規模だが爆発を引き起こす魔法具、通称ブービーボム、点火型と接触型で使い分けられる」
「なぁ接触型は、なんとなーくわかるけど点火型っていうのは?」
「点火型は《点火》って念じながら拍手とか指パッチンとか紙に設定した音を鳴らすんだ、その音が届いた紙は爆発する」
「念じなきゃいけないのか?」
「いや、念じなくてもいいよう設定できるけどよく事故るからオススメはしないらしい」
なるほどねぇ、まぁありがたく能力で量産させてもらうけど
「他の魔法具も見てくるよ、どんなやつがあるのか気になるし」
「いや、さっき見たけど売ってなかったよ」
「えぇ...なんで?」
「普通に魔法撃った方がいいし、用途が魔力切れのやつが最後の悪あがきに使うぐらいしかないし、かなり値が張るしで置いてない魔法具店も多いんだよねぇ」
他も量産したかったけどなぁ...
「ちなみにいくらしたんだ?これ」
「お昼ご飯2年分くらい...?」
「それって相当高ェよな...」
「うん、めっちゃ高かった」
「さて、いっかいギルドに戻ろう」
「なんでだ?」
「あそこには図書館がある、地図を見に行こう」
「オーケイ、戻ろう」
ーーーーーーーサラマギルド図書室ーーーーーーーーー
(意外とこっちは静かなんだな、受付や食事場と違って、みんな黙って本を探したりしてるな)
「えぇーっと...あったあった!これっぽいな」
どれ、これを機にある程度この世界の地理を把握するか。
「見つかった?...ってそれ大陸地図じゃないか...そんなもの見たって...」
「まぁある程度の地理や領土とか把握したいし」
「そういえばキミ若干記憶喪失してるんだっけ...」
「出来れば色々教えてくれるとありがたい」
「しょうがないなぁ」
ジェーンはそう言い地図を広げた
「この私たちがいるこの大陸、【ミッシェル大陸】は主に5つの大国が幅を利かせてるんだ」
ミッシェル大陸か...随分とかっこいい名前だな
西の大国【タルミナ】
北の大国【ウィンターホールド】
東の大国【グロズニーグラード】
南の大国【フォーサイド】
それと、大陸の真ん中に位置する他の大国よりちょっと小さい国が【フィローネ】
「ちなみに今私たちがいる場所は、グロズニーグラード国の北部、サラマ地方だよ」
「他には国があるのか?」
「もちろんあるさ、まあさっきの5つと比べたら弱小国家だけどね。これを見てくれ、この国の地図だ、私たちは今だいたいこの辺りにいるんだ」
ジェーンはそう言い国の北部を指差した。
「ここから村や町を経由して南下していき王都を目指そう」
「なぜ?いろんなところに逃げ回ってたほうがいいんじゃないか?」
「いや、やつらの追跡能力を侮らないほうがいいよ、ストーカーの如くす~ぐ居場所を突き止めるらしい、被害にあった知り合いがそう言ってた」
「やつらも王都ならそう、目立った行動はとれないだろう、それにもしかしたら国に匿ってもらえるからね」
「そんな大層なこと国がしてくれるのか?」
「わたしも詳しくは分からないけど、国は外交的信用で奴隷制度の改善をしようとしてるけど獣人の奴隷関連でロス教団が邪魔で邪魔でしょうがないって」
「ほんとに国がそんなことでかくまってくれるのか?」
「目的もなくさまようよりはましじゃないかな?」
それもそうか、カイトは心の中で思った
「まぁいい、俺たちは今日どこへ向かうんだ?」
「サラマ町周辺の地図だ、ここから南東にツーソンって言う村があるんだ今日はそこへ馬車に乗って行く、まぁザッと今日の予定はこんなところかな」
「よし、じゃあ行くか」