9話 ル・ロック
「ふあぁぁ...眠みぃ...」
あと20分ぐらいか、交代は
カイトはジェーンが寝た後コッソリ出した腕時計を見ながら2時間過ぎるのを待っていた。
やることもないのであたりを見回していたら人、屈強そうで、鎧は着てないが、剣を持った騎士っぽい男が一人こっちに近づいている。ここは道から外れてる
カイトは一応銃を持ち警戒した
やがて男はカイトたちの前に立ち止まった
「えぇっと、どちら様で?」
カイトが勇気を振り絞って尋ねた。
「その女をこっちによこせ」
「へ?」
「言葉がわかんないか?その女をよこせ」
「えー、ジェーンのご家族さんですか?」
「誰がそんな穢れた種族なんかと家族だ!」
(穢れた...?)
「いいか?獣人っていうのはな、神の失敗作なんだよ、俺らロス教団は偉大なる神が教皇様を通じて俺らに使命を与えたのだよ、この世から獣人を一匹残らず駆逐しろってな、わかったらその小娘をよこしな」
(こいつロス教団か!クソッ!どうするか!)
ふとジェーンのほうを向くとまだ気持ち良さそうに仰向けで寝ていた、こいつほんとに猫か?
(確か猫が仰向け寝るのはそれなりに信用してる時だっけ....)
そういえば実家の猫と犬は元気だろうか...
(まぁ...裏切れないよなぁ...それにこっちには拳銃がある)
「断る!!」キッパリとそう言った。迷いはなかった
「そうか...なら先ずお前を殺してからn
「先手必勝ぉ!」パスンパスンっと静かな音からは想像出来ないほどのエネルギーを持った弾丸が男の脚に襲い掛かる!
が、しかし
「ん?なんだ今の」
カラカラと薬莢と弾丸が地面に落ちた音が鳴った
ーーーえ?
理解できなかった。確かに脚のとこに当たったハズだ。なんでダメージがない?ハンドガンは威力は低いがそれはあくまで銃火器の中での話だ。一発でも十分死ねる威力はあるハズだ。なぜだ!?
「金属の弾を高速で飛ばす道具か...俺でなきゃ危なかったな《ル・ロック》俺には斬撃しか効かん、そうゆう能力だ」
男はクールにそう言った
まさかこいつ!!特殊魔法持ちだったか!!!
(チクショォォ!!とりあえず距離をとって対策しなくては!)
「おい待てどこに行く!」
幸いにも男は邪魔そうな剣を装備しているので機動力はこっちの方が上だ。
(斬撃しかきかない!?刃物で戦えってことか?っいやだめだ!こいつの剣の間合いには入ってはダメだ、あんな達人風のやつに敵うわけない、絶対死ぬ!)
体育の剣道ぐらいにしか剣術の心得がないカイトにはまともに剣で殺りあっても勝てるような相手ではないことは明白であった
(クソッ!!なんか手はないのか!!考えろ!俺!)
ガッ!!
カイトは地面にあった石につまずいてしまった
「あっ」
(やばいやばいやばいやばいやばいどうすれば!?)
「フッ」
男はカイトの無様な転び方を鼻で笑った後男は少し力をため、猿のように高く跳躍しカイトに向かって剣を逆手に持ち大きく振りかぶった!
ドスッ!!
暴力的な音が広がった。
が、剣はカイトを貫かず顔の真横の地面を貫いた
「次は当てるからなぁ〜?」
男はニヤリと楽しそうな顔をしながらそう言った。
「クソォォ!!」
(こいつ!!楽しんでやがる!)
カイトは起き上がり再び距離を置き逃げながら対策を考えることにした。
(何か...!なにかないのか...!この状況を打開できる物..!)
「くらえ!」
効かないとは分かりつつも銃弾を一発二発と撃ち込む
「お前も物分かりが悪いなぁ、そんな物で俺は殺傷出来ないぞ?」
勿論効かない
(殺傷...殺傷...!通じるか..!?)
カイトは何か思いつき、ノートを出し、とある物を出した。
ナイフとライターオイル
(えぇーっと、よし!あとは...賭けだがこれは保険用に...)
「よし!もう逃げるのはやめだ!」
「ほう?諦めたか?、只の逃げるのではなくあの小娘を“見捨てて”逃げるだったら殺さないこともないぞ?」
「いや、そいつはできないね!」
カイトはライターオイルを男との中間ほどのとこに投げ、それを銃で撃ち、着火させた。
「んっ!?発火魔法か!何をする気だ!?」
男はカイトの行動に戸惑いを隠せなかった。
ノートを出し、カイトは言った
「何をするって?こうするんだよ!」
【マグネシウム粉2kg】
カイトは書いたらすぐ目を閉じ、腕で目を隠した。
ボジュゥゥゥ!!
一瞬、平原一帯はまるで昼のような明るさになった。
それを直で見たものは数十秒は何も見えなくなり、悪いと失明するほど、激しく、白く燃え上がった。
「グオォォォォォォ!!なんだぁぁ!?何も見えねぇ!何をしやがった!」
男は目を抑え悶えていた。
「特殊魔法ってとこかな?」
「なんだとぉ!!」
「あんただけじゃないんだぜ?特殊魔法を持ってるのは」
男は悶えている今ならいけるか?...いや
「なんだと!!貴様も特殊魔法だったのか!?そうか...」
ーーーーーーーーーーーーーーヒュッ!!
男に向かって風切り音を持ったカイトのナイフが襲う
ドスッ!
刺突音が鳴り響いた
「なら遠慮なく殺れるな...」
「ぐっ!?」
刺されたのはカイトだった。
「悪いな、俺は目で見なくても自分から1m以内は把握出来るのだよ、空気の流れを感じ取って...とは言え急所は外したか」
「クソ...どこの主人公だよ...」
カイトは地面に這い蹲りながら後退した
「おっ、目が見えてきたな。これは外さねぇからなぁ、アンタが悪いんだぜ?」
男はまた猿のように高く飛び上がりカイトを潰し刺そうとした。
ブシュ
ザクッ!!
一瞬のうちに二種類の音が聞こえた。
そして剣はあらぬところにあった、男の右手とともに。
「うぐああぁぁぁぁぁ!?クソッ!なんだ?右手がぁぁぁぁぁ!!」
「ピアノ線だ、あの光の後お前が悶えてる時に張らせてもらった」
カイトはすくりと立ち上がり、ノートで薬草を出し貪り食いながらそう言った。
「クソッ!」
男は地面に落ちた剣を左手で拾おうとする。
が、
「おぉっと取らせないぞ!」
カイトは剣を銃で撃ち、遠くに飛ばした。
「お前に勝ち目はもうない、止血剤ぐらいはくれてやるから降参しろ!」
「チッ! 撤退だ!」
ボンッ
男は球を地面に投げ付け煙幕を発生させた。
「うわっ!?ケホッ!!ケホ!!」
煙幕が晴れた頃には男は消えていた。
ーーーー あ゛あ゛あ゛疲れたぁぁぁ
(てかクソ痛てぇ、傷が浅かったから良かったが、もっと深かったら死んでるな、コレ、あとこの薬草ぜんぜん効いてないな。というか経口摂取でいいのか?これ?)
この世界の薬草はゲームほど即効性はないみたいだ、まぁあのレベルの薬草はもはや劇薬か
カイトは消毒とか包帯など、とりあえず自分にできそうな応急処置したあと、その場で座り込みしばらく休んだらジェーンのところへ戻ることにした。
おまけ
今まで出てきた特殊魔法紹介
魔法名:スクリブルノーツ
使用者: 桜木海斗
ノートを具現化し、そのノートに書いたものはだいたい出せる能力
規模がデカすぎたり、海斗が知らないものや、存在しない物は出せない
ちなみにノートとセットで出てくるペンはインクが切れることはなく、どこでもすぐ出せるので結構便利。食料品は喉を通った時点で消去不可能になり、ノートからは文字が自動で消える
魔法名: ル・ロック
使用者:ハーレン・ジードルンク(屈強そうな男)
斬撃 刺す以外のダメージは無効化にする能力、斬る刺すなら武器はなんでもいいらしい。
実はこの能力、1on1の時にしか使えない、しかも相手にも斬撃以外無効化の恩恵を受ける決闘型の魔法である。