十二章
あれから一週間が過ぎた。
和泉や両親に確認したが楚乃の記憶は無事戻っているようだった。
あの自称神様にはあれから出会っていない。
でもまだ女子の間では噂が途切れていないようだからまだ俺の知らないどこかで誰かの願いを叶えて回っているんだろう。
今日は日曜日。
天気は晴れ。
絶好のお出かけ日和だ。
今日は楚乃と出かける約束をしている。
あの日から楚乃は俺と一緒なら外に出掛けることが出来るようになった。
楚乃自身が変わろうと一生懸命頑張っているのがひしひしと伝わってくる。
……トン、トン、トン……
そんな事を考えていると階段をゆっくり上る音が聞こえドアが開けられた。
そこには白いワンピースに身を包んだ楚乃香が立っている。
「兄さん。準備できたよ。」
あれから楚乃は敬語を使うのをやめた。
楚乃との距離も一気に近づいたような気持ちになる。
……ドク、ドク、ドク……
心臓が高鳴る。当然だ。
俺はこれから兄妹の仲を壊すかもしれないことを言うつもりでいるのだから。
「なあ、楚乃香ちょっと大事な話があるんだが」
「なに? かしこまっっちゃって。」
深呼吸しその言葉を言う角度を決める。
「好きだ。」
「へ…?」
楚乃は一瞬ぽかんとした後にっこり微笑む。
「私もだよ、兄さん…」
そのまましばらく見つめ合う。
そして楚乃が口を開いた。
「兄弟としてだよ、兄さん。大好きっっ!」
「そうか…」
失恋…いや……っえ? そもそも気付いてさえもいない…だと…!?
...だが、これでよかったのかもしれない。
だって、俺たちは血がつながっていなくても兄妹であるということに変わりはない。
気持ちが届かないのは苦しいけど…
俺は楚乃の兄貴として楚乃を守らないといけない。
「じゃあ、行くか。」
俺は兄貴として妹の手を引く。
「ちょっと、兄さん!?早いよ!もっとゆっくり!」
そしてそのまま外に駆け出した。
「なあ、俺自分が何がしたいかが何となく見えてきたよ。」
「兄さんが何がしたいのか?」
「俺さ、楚乃かが安心して暮らしていけるようにしっかり金が稼げるようになりたい。だからとりあえず進学しようと思うよ。具体的に何をするのかはこれから考えないとな…」
「兄さんなら大丈夫ですよ。私だって外に少しなら出られるようになったんです。兄さんは私の人生を変えてくれました。だからいつか兄さんが私を助けてくれたように他の人を助けてあげてくださいね。」
「まあ、俺は他の誰でもない楚乃だからこそ助けたいって思ったんだけどな。他の人だったらそうは思わなかったかもしれないし。」
「もう!兄さんはすぐそうやって私をからかうんだから!
今日も目の前には大切な人がいて微笑みかけてくれる。
当たり前の日常が続いていく。
『そんな当たり前の日常がこれから先もずっと続いていきますように』
俺はそう神様に願った。




