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時計塔に眠る怪人 1

 アノマが、ゲルマノの企みを知ったのと、時、交差するように、ジファと美樹は時計塔の頂きへ登る階段を踏みしめていく。美樹の耳には、時計の針を動かす歯車の音が響いている。時計塔の歯車の音は調和し、その響きは、ゲルマノのプランが破綻するとは、誰も、当人でさえ考えもしなかったのを表わしてもいるように思わせる。

 ジファは全ての真実を一つ、一つ明らかにしていく。


「ゲルマノのプランは完璧だった。人工生命体はゲルマノの、そして宰相ノルガバの考えを広める最適のツールになったんだ」


 美樹は驚きを隠せない。ジファは美樹の手を引き、一段崩れた階段の上へ彼女を引き上げる。


「全ては二人の思惑通りだった」


 ジファは時計塔の頂きを見上げる。彼が見据えるのは、「頂き」にいるであろう「怪人・オルザヴァ」。オルザヴァはジファたちの、いや、民衆の反逆の象徴でもある。そう仄めかせてジファは語る。


「だが、ただ一つの障害が『怪人・オルザヴァ』だった」


 ジファは目の前から視線を逸らさない。その瞳はノルガバのプランを阻止する意思に満ちている。ジファは、オルザヴァが「怪人」となり得たあらましについて話をする。


「オルザヴァは人工生命体が持つはずのない、『自分の感情』を持った。そして戦争に反対した」

「ジファ、オルザヴァって……」 


 美樹は問い掛けた。美樹は全貌が明らかになるにつれて恐れにも近い感情と、それと対照する勇気をも抱いている。美樹の問いにジファは答える。


「そう。『怪人・オルザヴァ』とは人工生命体の一人。更にはいわゆる欠陥品だったんだよ」


 美樹はその事実を前に口を覆う。「怪人・オルザヴァ」が欠陥品。予想外の事実を前に美樹はショックを受ける。

 ジファは、ゲルマノが自らの「完璧な」プラン、「完璧な」理論が崩れ、当惑した様を美樹に話して聞かせる。


「ゲルマノは、『感情』を持ったオルザヴァを『怪人』と呼び、苦しんだ」


 机上の理論ともいえるプランを全て実行し、成功してきたゲルマノ。その彼の初めてとも言える挫折。美樹は、そこに科学者ゲルマノの敗北を見た思いがした。ジファは、驚嘆の眼差しで、ひたすらジファを見つめる美樹に話す。


「一方、オルザヴァは俺の父、ロウ・セラヴィナに会った。オルザヴァは『自由』を求め、ゲルマノから逃れた」


 ジファは階段を登りきると、琥珀色の扉の前に立つ。ジファは、その一連の経過をしっかりと把握して、もうすでに心の整理がついているようだ。


「この出来事は完璧主義者、ゲルマノの科学者としての『死』だった」


 ジファがセンサーに触れると扉は静かに開く。ジファは美樹を部屋へと迎え入れて、左手を大きく広げると美樹を歓迎する。


「さぁ。いらっしゃい。多くの科学者の人生を狂わせた存在、『オルザヴァ』との対面だ」



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