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12話 答え

「呪いに対する定義? それが間違ってるってどういうこと?」


 シュウの突然の問いかけにレイが聞き返す。


「レイは呪いは触れなければ発動させられないって言った。だけど、それが間違ってたら? 触れなくても発動できるんじゃないか?」


 そんなシュウの意見にレイは不可能だと否定する。


「無理だよ。それこそ、人間にはできない。それを出来る人なんて『賢者』ぐらいしかいないんじゃないかな?」


 その発言を信じるとすれば、賢者は人間扱いされていないことになっているが、今回それについてはスルーの方向で行く。


「じゃあ、なんで呪いは触れなきゃ発動させられないんだ? きっとそうしなきゃならない理由があるはずだ」


「どうしてって‥‥‥、それは‥‥‥」


 呪いのそもそもの疑問にレイは答えることはできない。


 大体、最初からおかしかったのだ。べつに犯人に触れなければならないという制約でもついているわけではないのだ。例えば、呪いを物に移動させることだって出来るかもしれない。そして、それを素知らぬ顔で人に触らせていけば、呪いは発動してしまうのだから。


 だが間接的にも、直接的にも触れなければいけない理由については想像もできない。まあ、それについては今、解き明かす必要性はない。ただ、どうやって呪いをかけているのか、それが分かればいいのだから。


 今まで、ずっと黙っているシモンや、シルヴィアはこのやり取りに入ってくる素振りを見せない。ただ、ひたすらに沈黙の姿勢を取り続けている。


「さっき、レイは呪いは触れることがカギだって言った。そして、それは人間には不可能だって。俺より幾つもの死線を潜り抜けてきて、俺なんかより呪いのことを見てきてるんだ。間違いではないんだろうさ。だから、敵はそこを突いてきた」


 シュウの推測に誰も何も言わない。いや、言えないのだ。だって、シュウがやろうとしているのは彼女たちが信じている前提を壊す事なのだから。


「そこにシルヴィアの言葉も相まって、俺たちはさらに盲目的に信じてしまった。呪いは触れることが条件だと。それが、覆すことのできない絶対の掟だと」


「じゃあ、私たちが間違ってるの?」


 レイはおそるおそるといった調子で尋ねてくる。


「いいや、レイたちは間違っていないんだろうさ。人間じゃ不可能なのかもな。だけど、敵が人間じゃなかったら?」


 そう、人間には出来なくてもほかの種族だったらできるかもしれない。例えば、魔族だったら、人間を超える何らかの力を持っていたら。


 少なくとも、一人。シュウはこの世界でそれができるやつを見ている。今朝の事件を起こした敵。あいつはシュウに向かって何かをしてきた。考えてみれば、あれが呪いだったのかもしれない。


 そこで、ようやくシルヴィアはシュウの言わんとしているところを察したのか、会話に入ってくる。


「つまり、今朝の事件を起こしたやつと同等の力──魔族の力を使って呪いを発動させている‥‥‥?」


 シルヴィアの言葉にシュウは頷く。


「呪いの発動に関してはなんとなく理解できた。だが、敵はどうやって呪いをかけている? それが分からなければ、防ぐ手だてはない」


 今まで、沈黙を続けてきたシモンが口を開き、その先の説明を促す。


「ああ、こっから先はまじで何の根拠もない話なんだが‥‥‥」


 そこで、シュウは一拍おいて、


「たぶん、目で見たやつにかけられるんじゃないかって思ってるんだ」


 そう、目で見た人を片っ端から呪っていく。これだけ切り取ると、とんでもないチートだ。結局それに気づいたところで何の対策もできないのだから。


「そして、敵は貧民街でしかやる気がない。なんで貧民街にこだわるのかは分からねえけど‥‥‥。だが、そのおかげで場所のめぼしはついてる」


「そっか。目でとらえたものを呪えるのなら、出来るだけ高い位置からのほうがいい。とすれば、そんなことが出来るのは一つしかない」


 シュウの説明にシルヴィアが補足する。


 そして、シュウは唯一それが出来るところを指し、


「そう。敵はおそらく俺たちがさっきまでいたところ、あの高台にいるはずだ!」


 シュウの断言にシモンはわずかに瞑目して言った。


「わかった。俺たちは貧民街に待機して、暴動、または同じことが起こりそうになったら止める。お前らは元を叩きに行ってくれ」


 シモンからの提案にシルヴィアは頷き、シュウに早く行こう、と催促する。


 シュウはシルヴィアに待ったをかけ、


「レイ。見てほしいことがあるんだ。魔法に関してなんだけど‥‥‥」


 そう言って、シュウはレイに魔法の師事をお願いしていた。

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