58話 失ったもの
全てを懸けた王都での決戦。
その被害は大きなものだった。特に貧民街については原型を留めないほどの痛手を覆い、尚且つ八咫烏の攻勢により王城は崩壊した。
魔獣に変えられた者、反乱によって殺された者、魔獣の鎮圧に駆り出された騎士の犠牲。
死傷者は王都の約4分の一にまで減り、大きな痛手を被った。
だが、王国最大の痛手は──。
貧民街の奥地。『大罪』と『大英雄』の戦火の跡地。
そこに、『大英雄』の遺品が落ちていた。
傍らには、遺灰が舞っている。
『大罪』との死闘の末、『大英雄』は誰かを守るために散っていった。
桃色の髪を風に靡かせサファイアの瞳から涙が滲んでいる少女は、ダンテの遺品──彼がずっとつけていたマフラーへと手を伸ばす。
そして、それを抱えて。
「おとう、さん……」
いついかなる時でも気丈に振舞い、泣く姿など見せなかった彼女は今。
泣いていた。
宝石のような雫をマフラーに、地面に落として。
そんな姿に、シュウは何も言えなくて──。
王都での戦い。
結果的には勝利したものの、あまりにも失ったものが多すぎたのだ。
とりあえずは王都での決戦はこれにて終了です。
ですが、もうちょっとだけ続くんじゃ、ということです。




