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8話 魔法

 シュウ達は大通りから離れ、外れにある公園に来ていた。


 公園とはいうものの花の一つも生えておらず、遊具すらなく、人一人いない状態である。


 果たしてここを公園と呼んでいいのかは分からない。


 ただ、ここに用があるのはシュウとレイだけなので二人には入り口付近で待ってもらっている。


 レイは迷うことなく公園の中心に進み、こちらに振り返る。


「さて、じゃあここでやろうか」


 そう、シュウ達がここに来たのはある理由があるのだ。シュウの魔法適性を見るためである。


 本来魔法属性を見る際には、専門の場所に行く必要がある。


 だが、シュウは世界的に嫌われている黒という偏見もあり、見てもらえない場合があるためこうしてレイが行ってくれていた。


 この世界の魔法というのは、四元素火・水・風・地によって成り立っている。


 今、レイが行っている作業はその四元素のうちどれと繫がりが強いかを調べるものである。


 例えば、火と繫がりが強いのならば火系統の魔法が得意になる、といったところだ。またこの四元素に含まれない光と影だのがあるらしい。


 ちなみにレイは水との繫がりが強いらしく、氷魔法が得意らしい。氷魔法自体、水と火の混合なので扱うには難しいということだった。


 また、どの属性と繫がりが強いかは体に宿る魔力を調べれば一発だそうだ。ただ、この世界の人ではないので魔力が宿っているか甚だ疑問ではあるが。


「はい、手を出して。調べるから」


 言われるがままに手を差し出すと、レイは目をつぶりながらその手を握る。


 そして、うっすらと目を開けて、


「あれ? おかしいな。なんでだろ。どの属性も繋がってない? いや、かすかに繋がってるけど‣‣‣‣‣‣もしかして嫌われてる?」


「ちょっと待ってくれ。嫌われてるって何? 俺なんもしてないよ!」


「いや、ということは‥‥‥うん、そうだね。やっぱり、影っぽい」


「影‥‥‥? ああ、確か四元素に含まれてないやつ?」


「うん、そうなんだけど‥‥‥」


 レイは首をかしげて、どこか歯切れの悪そうな顔をしている。


「普通、もっと繫がりがあるはずなんだけど‥‥‥でも、ほとんど繋がってない」


「そんなに俺のがおかしかったのか?」


「そうだね、例えるなら、普通は橋のようにがっしりと繋がってるんだけど、シュウの場合は、なんか紐を括り付けたように、いつ途切れてもおかしくない感じなの」


 つまりは、日本の瀬戸大橋とよれよれの紐みたいな感じで捉えればいいんだろうか。


「てことは?」


「うん。魔法は‥‥‥ほとんど使えないだろうね」


 この瞬間、シュウは運命に見放されたのだった。




















 しばらくしてシュウとレイは公園を移動、入り口で待機していた二人に合流。


「えっと‥‥‥どうしたの? シュウ」


 この世界に来て初めてといっていいほどへこんでいるシュウに気づき、シルヴィアが話しかける。


「いや、自分の運命を呪ってただけだよ……」


 本当にこの世界はシュウに対して厳しすぎやしないだろうか。


 戦闘力ほぼ皆無、黒髪というだけで不幸な目に会う可能性あり、そして極めつけは魔法をほぼ使えないときた。


 ここまで来ると、この世界はシュウに対して恨みでも持っているのではないかと疑いたくなる。


 シルヴィアはレイから事情を聞き、苦笑する。


「気にすることはないよ。私も魔法は使えないもん」


「シルヴィアも、なのか?」


「私の家系はもともと魔法が使えない一族だったらしいの」


 シルヴィアは少しだけ悲しそうに眼を伏せ、呟いた。


 意外も意外だ。『英雄』と呼ばれているシルヴィアの事であれば、魔法も完璧だと思っていた。


 シュウが知らないだけで、もしかしたらほかにも弱点があるのかもしれない。


「でも、使えないってわけじゃないし、教えようか?」


 レイの言葉に即快諾。


 これにより、西のブロックに来た本来の目的、聞き込みは、シュウの魔法適性を調べるものとなり、そして、シュウの魔法の練習に変わっていった。











 ここは王都の下に広がる下水道だ。その範囲は広く、王都中に広がっており、道さえ覚えておけば上の通りを通るよりも速く移動できるかもしれない。


 実際、何年か前まではここで暮らしていた者がいたとされているが、今では活動の痕跡が見当たらない。


 当たり前だ。ここは本来封鎖されているのだ。


 理由は単純だ。何年か前、ここで魔獣騒ぎがあったのだ。それからずっと立ち入ることは許されていないのだ。


 そんな下水道に一人、座っているものがいた。


 男だ。その男はローブを羽織っており、朝方事件を起こした者と姿が酷似している。


 男は上を仰ぎ、呟く。


「んだよ‥‥‥結局、俺頼りかよ」


 男は隅を見て、先ほどからうるさいほど鳴いていた鼠を一瞥する。


 それだけで、鼠は消えた。


 男はそれに満足したような顔を浮かべ、立ち上がり、ただ一点、王城の方を見て言う。


「そんじゃあ、始めるか」


 男は歩き出し、暗闇へとまぎれていった。

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