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PUSH!!  作者: 桃色 ぴんく。
7/20

―強くなれ!―

 初めての魔物討伐が終わった後、俺は進藤と一緒に元の場所に戻った。

「焦ったな」

「ね、でも勇生格好良かったよ」

「お前も、魔法とか使ってすごかったな」

「なんか、ゲームみたいで楽しかった」

「いやいや、怖いだろ」



――――――さっきの魔物はかなり弱いランクだ。これで油断してはならない。



「だよな。冒険の始まりで出てくる敵はだいたいヘボいもんな」

 この先、もっと強い魔物が出てきた場合はどうしたらいいんだろう。



「シドちゃん!」

 進藤がシドに話しかける。なんだよ、その呼び方。

「あのね、もっと強くなりたいの。こんなんじゃ魔王なんて倒せないでしょ」



――――――そうだな。勇生も美紀ももっと強くならねば。



「どうしたらいいの?今はまだボタンが1つしかないから不具合であんな格好になるけど、それでも何か方法ないのかなぁ?」




――――――あることはあるぞ。



「え?それはどんな方法ですか?」

 思わず、食いついてしまう俺。どうせ戦うなら強くなりたい。




――――――なりきることだ。美少女戦士に。




「え・・・」




――――――美少女なら美少女らしく振る舞えば、真の力が目覚めるだろう。時間だ・・・また会おう・・・




 シドはそう言い残し、消えてしまった。美少女らしく振る舞うってなんだ?きょとんとしてる俺の顔を覗き込んで、進藤が言った。

「なりきるってことは、あれよ、ホラ、言葉遣いとか」

「え?どうすれば」

「とりあえず、女の子らしく話してみたら?『行くわよ!』とか。さっきみたいに『とうりゃああああ』とか言わずに『え~いっ』とか」

「ええ・・・そんなの出来ないよ」

「今度さ、一回女言葉で頑張ってみようよ」

「うう・・・」

 なんだよ、なりきったら真の力が目覚めるとか、そんなの嘘くせー。頭の中でいろいろ考え始めた俺を見透かすように進藤が言った。

「どうせ、嘘くさいとか思ってるんでしょ」

「なんでわかるんだよ」

「勇生のことは何でもわかるのよ。シドちゃんが嘘言うわけないじゃない。今度、戦うことになったら、一回女っぽいキャラになりきってやってみたら?」

「うう・・・だんだんお前に弱みを握られてきた気がする」

「何言ってるのよ。私たち、仲間でしょ」

 そうだ。俺と進藤は、この世界を救うために仲間になったんだ。笑われる、とか恥ずかしいとかじゃないな。俺は考えを改めた。

「そうだな。今度、やってみるよ。もし、俺が困った時はフォローしてくれ」

「うん!じゃあ、私帰るね。ここでいいよ。また明日ね!」

「おう」

 そうして、進藤と俺はお互いに背を向けて歩き出した。






 その夜、俺はなんとなくスマホで動画を見ていた。かなり昔に爆発的ブームを巻き起こした、美少女戦士のアニメの戦闘シーンの動画だ。少しでも、戦いの参考になれば・・・と、俺は食い入るように画面に見入っていた。

「・・・お兄ちゃん、そんな趣味だったの?」

 いつの間にか、優歩が俺の背後からスマホの画面を覗き込んでいる。

「わっ、ちがう。それより、勝手に入ってくんなよ!」

「ドアノックしたけど、出てこないからでしょ。ご飯いらないの?」

「あっ、ああ、わかった。すぐいくよ」

 俺は動画を切って、スマホをベッドの上にポンッと投げてダイニングへと向かった。






「勇生、あんた、エッチな動画見てたんだって?」

「えっ」

 俺は、バッと優歩の方を見た。優歩は素知らぬ顔でハンバーグを食べている。

「まぁ高校生だし、ダメとは言わないけど・・・」

「違うよ!そんなの見てないし!」

 俺が必死で弁解しようとすると、優歩が横から口を挟んでくる。

「でもすっごいミニスカで太もも丸見えだし、『いやぁ~ん』とか言ってたし」

「バカ!あれは、美少女戦士の戦闘シーンだろがっ!!!」

 思わず、声を大きくして俺は言ってしまった。父親と母親が、目を丸くして俺を見ている。

「え、あんたそういう趣味が・・・」

「いわゆる2次元萌えとかいうやつだね・・・」

「ちっがーーーーーーーう!!!」

 俺が弁解すればするほど、話がおかしな方向になっていくのだった。





 寝る前に、ボタンを見ると、虹色に光っていた。シドが呼んでるな。俺はボタンを押した。



――――――勇生に一つ言い忘れていた。



「なんでしょう?」



――――――時空の歪みの中で、5分経って私が姿を消しても、勇生たちはまだ戦えるのだぞ。



「あ、はあ・・・」




――――――私が消えた後も、体力が許す限り、戦いを続けてどんどん道を進むのだ。




「わかりました」




 つまり、一回の戦闘ごとに変身を解かずに、行けるところまで進めということだな。そりゃそうだよな、いちいち元の世界に戻ってたらいつ魔界に着くかわかったもんじゃない。よし、明日進藤と相談して、時間がある時にさくっと先に進んでみるか。




「美紀のボタンスイッチが出来たら、すぐに渡してくださいね!」



―――――――ああ、もちろんだ。しばらく2人で一緒に変身してがんばってくれ。



「はい。明日、なりきって頑張ってみます」




 シドが消えるのを見届けて、俺は部屋の明かりを消し、眠りについた。

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