―2人で初討伐!―
俺の初めての変身は・・・なんと美少女戦士の格好だった。
「シド!どういうことなんですか!?」
――――――失敗だな。多分、2人同時に変身したから不具合が出たのだろう。
「じゃあ早く美紀にもボタンスイッチを渡してくださいよ!」
――――――まだ準備出来ていない。しばらくそれで我慢してくれ。
「とりあえず、一回戻ります。変身を解くにはどうしたら?」
――――――その状態で戻れば自然に解けるだろう。
「わかりました。美紀、戻るぞ!くっつけ!」
俺は、進藤の手を引っ張って、俺の体にしがみつかせた。そしてボタンを3回押し、元の俺の部屋に戻ったのだった。
「ふう・・・戻った」
俺は本来の俺に戻った。
「不具合ってなんだよ」
「でも、勇生可愛かったよ」
「うるさいっ」
女装趣味なんてないのに、女装した格好を進藤に見られるなんて・・・ありえないぐらい恥ずかしい。
――――――もう時間だ。勇生、美紀、ボタンが振動する場所を見つけ、そこで時空の歪みに入れ。そこに魔物が現れる・・・・・・
時間切れでシドが消えてしまった。
「ボタンが振動って?バイブみたいなのか?」
「そうかも。そこに魔物が・・・って、いよいよ戦いってことよね?」
「そうなるよな。でも、進藤のボタンスイッチがまだ届いてないから振動する場所を見つけても行かれへんな。あ、俺が一人で行けばいいのか」
「え?だめよ!私も連れてってくれないと!いいじゃん、今日みたいに2人で変身すれば」
「・・・不具合で変な変身になってるのにか?」
「それでも、2人なら大丈夫だよ、きっと」
「う~ん」
「あっ」
「何?」
進藤が慌ててカバンから教科書とノートを取り出す。
「ちょっとぐらい勉強もしないとね」
「ああ、そうだな。俺、ちょっとお茶持ってくる」
そう言って、俺が部屋のドアを開けると、目の前に母親が立っていた。その後ろには優歩の姿もあった。
「え、何してんの」
「お茶をね、持ってこようと思って」
「私も」
母親の手には何も持っていない。どうせ、俺と進藤が何をしているのか気になっただけだろう。
「じゃあお茶持ってきてくれよ。優歩は何してるんだ?」
「お母さんのお手伝い」
「嘘つけ。いいからあっち行ってろ」
「は~い」
「本当にお茶しかないけど、ごめんね」
と、母親が麦茶を持ってくる。
「いえ、突然お邪魔してすいません・・・おかまいなく」
と、進藤が答える。
「さんきゅ~、さぁ、勉強の続きするから」
「はいはい、お邪魔さま」
母親が部屋を出て行く。俺と進藤はとりあえず、明日のテスト勉強を始めた。
「あ、もうこんな時間」
時計を見たらもう夕方5時になろうとしていた。昼過ぎに学校帰りに俺の家に寄ってから4時間近く経っていた。
「遅くなってしまったな。そこまで送っていくよ」
「ありがと」
玄関を出る時に、また母親と優歩が顔を出す。どれだけ興味津々なんだか。
「お邪魔しました」
「いえいえ、また来てやってね!」
「はい!また絶対来ます!さよならっ」
進藤が大げさに頭を下げる。優歩も大きく手を振っている。やれやれ、このまま仲良くなって女同士タッグとか組まれたら俺はきっと勝てないだろうな。
「お母さんも優しそうだし、妹さんも可愛いね」
「そうかぁ?」
「一緒に住むようになってもきっと仲良く出来るわ!」
「なんで一緒に住むんだよ」
「えっへっへ~」
帰り道に、そんな話をしている時だった。
ブルルルルッ・・・
「わっ」
「え?なに?どうしたの?」
ズボンのポケットに入れていたボタンが振動したのだ。
「バイブきたよ」
「え・・・ってことは、この辺りが魔物が出現する場所ってこと?」
「だよな・・・どうする?」
「そりゃ、行くしかないでしょ!」
「変身する5秒間の間にやられちゃうことないだろうな?」
「え・・・そんな不安なこと言わないでよ。時空の歪みの中は真っ暗なんだから、大きな声を出さなければ魔物も気付かないんじゃない?」
「そうか・・・じゃあ、さっき一緒に変身したみたいにやってみよう。変身の合図は、小声で出すよ」
「うん、じゃあ行ってみよ」
そう言って、進藤が俺に抱きつく。もう抱きつかれるのにも慣れてきた。俺はボタンを3回押した。
時空の歪みの中に入ったが、やはり真っ暗で、魔物の姿も見えなかった。けれど、油断して声を出して、狙われたらいけないので、俺と進藤は無言のまま、さっきのように変身するためにボタンの位置を確認した。そして、ボタンの上の俺の指と進藤の指が確認出来た時、俺は小さい声で合図を出した。
(せーの!)
2人で一緒にボタンを長押しする。1、2、3、4、5秒。虹色の光が俺たちを包み、変身が完了した。
「やっぱりこれか」
俺の変身姿はやはり美少女戦士だった。恥ずかしい・・・と思ったが、その時目の前にライオンのような魔物が現れた。
「わっ!」
「きゃあ!」
しまった、どうやって戦えばいいのか、シドに聞いていなかった。魔物が牙を剥いて威嚇してくる。どうしよう、やられる!と思った時、シドの声が届いた。
――――――勇生、美紀、これを受け取れ。
俺の手に剣が、美紀の手には杖が現れた。よし、武器さえ受け取れば、なんとかなるか。
――――――美紀、「フレイム」と呪文を唱えるのだ。その杖で使えるのは炎の技だ。
「わかった!やってみる!」
威嚇していた魔物がついに俺たちに襲いかかってきた。俺の後ろに立っている進藤が叫ぶ。
「フレイム!!!!!」
叫びながら杖を魔物に向かって振ると、ボワッと炎が巻き起こり、魔物に命中する。その熱さに魔物が怯んだ隙に、俺は剣をふりかざした。
「とりゃああああ!」
ゴリッという鈍い感覚がして、俺の剣が魔物に突き刺さる。なんだこれ!魔物って硬い・・・。
「あっ!?」
俺の剣が急所に命中したらしく、バタッと魔物が倒れて、そして消え去った。
「お、おおお・・・」
「やったね!やっつけれたね!」
これが、俺と進藤の初めての魔物討伐だった。




