―仲間申請―
今日のテストが終わり、帰り支度をして教室を出る。俺は、カバンに隠し持ってきたボタンスイッチが気になって仕方なかった。
学校を出てすぐに、人気のない方の道を選んで、俺は帰りだした。そして、カバンの中のボタンを確かめる。
「あ、虹色だ」
これは、シドが俺に何か言いたいことがある時だな。俺は周りを見回して、虹色ボタンを押した。
――――――待っていたぞ、勇生。
「すいません、学校の間はちょっと」
――――――わかっている。早速だが、変身の仕方を教えよう。
「え、ここで?」
――――――時空の歪みの中に入るのだから、大丈夫だ。
「でも、消える瞬間を誰かに見られたらどうするんですか」
――――――消えるのも戻るのもほんの一瞬だから、人の目には錯覚と映るだろう。気にするな。
「どういう解釈・・・まぁ、いいです。やってみます」
――――――ボタンを3回押すのだぞ。勇生、後ろの・・・・・・
シドが何か言っているが、俺は先にボタンを3回押してしまった。俺の背中に何か触れた気がしたが、周りの景色がぐにゃっと歪んで、俺は時空の歪みの中に入った。
「きゃっ」
一瞬、聞き覚えのある声がした気がした。
時空の歪みの中は、真っ暗だ。この中ではシドの姿が見えない。
「シド??」
――――――勇生。・・・後ろにいる娘は誰だ?
「え???」
そう言われると、確かに背後に人の気配を感じる。俺は、後ろに向かって声をかけてみた。
「誰?」
「朝倉くん・・・真っ暗で何も見えないんだけど・・・なんで??」
この声は・・・
「進藤か?なんでお前ここにいるんだよっ」
「暗くて怖いっ!!朝倉くん!!!」
進藤が俺に背後から抱きついてくる。
「おい、やめろよ!シド!一回戻ります!」
俺はボタンを3回押し、元の場所へ戻った。進藤はまだ俺に抱きついている。
「進藤、もう暗くないぞ」
「あ・・・れ?」
進藤は辺りをキョロキョロしている。
――――――勇生。その娘に見られてしまったようだ。
シドの声がして、姿を見た進藤が再び騒ぎ出す。
「朝倉くん!!!あ、悪魔が!!!何か言ってる!!!」
「・・・シド。この子に全部話してもいいですか?」
――――――構わない。その娘が誰かに話しても誰も信じないだろう。時間だ、また会おう・・・・・・
「あ、悪魔消えた」
ほっとした表情を見せる進藤に、俺は言った。
「俺が今から話すことを、ちゃんと聞いてくれるか?」
「うん」
「他の人に言ったとしてもバカにされるだけだから、出来れば黙っててほしい」
「うん、わかった」
「まず・・・今の悪魔みたいな人、見ただろ?」
「悪魔だよね!本物!?」
「いや、あの人は悪魔じゃないんだ。時空を操る、神みたいな人でシドっていうんだ」
「神!?神キター!!!」
「おい、ちゃんと聞けよ・・・」
「はい、ごめんなさい」
「で、俺は、シドに選ばれた戦士というかヒーローというか・・・」
「なになに!?朝倉くんが戦ったりするわけ?」
「まだ変身もしたことないんだけどな。いずれは戦隊ヒーローみたいになるだろう」
「ええ???ドラマの撮影とか?」
「ドラマじゃないよ。嘘のような本当の話さ。さっき、一緒に行った真っ暗なところ、覚えてるだろ?」
「うん。何にも見えなかった・・・」
「あの暗闇の中が時空の歪みの中という場所らしい。で、そこを進んで行くと、魔界に行けるらしい」
「魔界って・・・ゲームみたいだね」
「そうなんだ。まだ実感がないからゲームしてるような感覚かもな」
「魔界に行ってどうするの?」
「そこで捕らわれているシドを助け出し、最後は協力して魔王を倒すことになる」
「シドってさっきの人よね?」
「そう。姿見ただろ?なんかペラペラの紙みたいな状態だったろ」
「うん。神って言いながら紙キター!!みたいな」
「冗談はいいよ。あのペラペラの姿は、仮の姿らしいよ。ああやって現れて、俺に指示をくれる」
「ふうん・・・でも消えちゃったよ」
「そう。なんか仮の姿で出てこれるのは5分間だけみたいなんだ。だから話がなかなか進まない」
「ウルトラマンよりかは長いね。ていうか、私が邪魔しちゃったから話が進まないのよね」
「いや。進藤が来なくても、ろくに話進まないから。5分って短いよ」
「そっかぁ・・・」
進藤が俺をまじまじと見つめる。
「な、なんだよ?」
「いや・・・なんか朝倉くんの顔がさ・・・」
「え?なんかついてる?」
「ううん。なんか逞しく見えるの。本当にヒーローとか勇者とかになれそうだよ」
「えっ・・・そ、そうかな」
「私・・・私のサポートがあればきっと楽勝だよ。魔王退治」
「ええ???」
「今度さ、シドって人に会ったら、私も仲間に入れて欲しいって言っといてよ」
「進藤が?おいおい、ゲームじゃないんだぞ?危険なことに巻き込むことになるよ」
「いいよ。朝倉くんと一緒に居れるんだったら」
「え・・・」
「そうだ!」
進藤が思いついたように手をポンッ!と打つ。
「今朝、教室で呼んだみたいに、朝倉くんのこと勇生って呼んでもいい?」
「・・・いいよ」
「やった!仲間になるんだし、勇生も私のこと美紀って呼んでよね!」
「まだシドに聞いてないから仲間じゃないよ」
「・・・きっと、大丈夫な気がするの。じゃあ仲間になれたら美紀って呼んでよ?」
「ああ、わかったよ」
こうして、進藤が仲間になりたがって、俺は今度シドに会ったら話すように言われたのだった。変身の仕方は今度落ち着いて聞くことにしよう。まずは、進藤の件だ。俺と進藤はそれぞれの家に帰って行った。




