―崖の上の道―
「おっべんとおっべんとうれしぃなぁ~♪」
優歩がのんきに歌っている。
「いっぱい作ってきたからいっぱい食べてね」
進藤が荷物を広げる。
「すっげー!お重だ!」
ダイニングのテーブルに重箱が3段並べられた。おにぎりやいなり寿司、卵焼きやウインナー、からあげなどが入っている。
「運動会みたいだねー!」
相変わらず優歩はテンションが高い。
「ゆっくりしてられないぞ、ロビンが待ってるんだから」
「そうだった!いっただきまーす!」
「時間ないし、取り皿に取らないでそのまま食べちゃおう!」
俺たちは一斉にお弁当に箸を向けた。
「んぐっ・・・そういえばっ・・・ぐっ・・・ろびんって・・・」
「先に飲み込んでから話せよ」
「優歩ちゃん、お茶、お茶!」
優歩がお茶をぐいっと飲んで話し出した。
「そういえばロビンって、ずっと時空の歪みの中にいるんでしょ?」
「ああ、そうだな」
「瞬間移動は出来るし、行動力も減らないみたいだけど、お腹も空かないのかな?」
「どうだろうな。俺たち人間と違うみたいだしな」
「あとで会ったら聞いてみよっと」
「もう5分ほどしかないぞ、急げ」
「はーい!あと1個いなり食べるー!ウインナーも!!」
「お腹いっぱいで動けなくなったりして」
「でも腹が減っては・・・だからな。ふぅ、ごちそーさま!」
「美味しかった?」
「ああ、うまかったよ。進藤って勉強も出来るし料理も出来るんだな」
「いつお嫁にきても大丈夫だよね!?」
「え、お嫁?」
「うひひひひー。お兄ちゃんたち、ごちそーさま!」
優歩がニヤニヤしながら俺たちの方を見ている。
「さ、行こうか」
俺たちは再び時空の歪みの中へと戻った。
「オカエリナサイ」
時空の歪みの中に入ると、ロビンが座って待っていた。
「待たせたな。早速行こうか」
――――――いよいよ魔界に通じる道に出るぞ。道幅がかなり狭いから気をつけるように。
「シド!わかりました。みんな、慎重に行くぞ」
俺たちは記録ポイントの先に進むため、先へと進む道のドアを開けた。
ヒューーーーーーーーーーーーーーーーーー
ゴォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「わっなんか風が強いぞ!」
「さ、寒い・・・」
ドアの向こう側は、冷たく強い風が吹き付けてくる、崖の上だった。足元を見ると、人が一人通るのがやっとの道幅で、横に見える景色は白い煙がうずまく谷底のようだ。
「こわい・・・」
「こんなの、進めないー!」
「・・・」
俺も怖かった。下を見れば怖いが、見ないと進めないほど道幅がないのだ。
「でも、ここを進まないと魔界に行けないんだろ」
「そうだけど、なんか普通に歩く以外の方法ないのー?怖いよー」
――――――勇生たちに、これを授けよう。
「シドちゃん!何か方法があるの?」
突然、俺たちの前に、鉄で出来た靴と杖が現れた。
「え、これって・・・」
――――――その杖と靴で少しずつ道を進むのだ。
「見るからに重そうだけど・・・」
俺はとりあえず鉄の靴を履いてみた。右足を1歩踏み出そうとするが、重くて持ち上がらない。
「え・・・こんなんじゃ歩けない・・・」
――――――勇生よ。足を持ち上げずに、擦るように歩いてみるが良い。
「え?擦る・・・?こう、ですか・・・?」
俺は、地面に足を付けたまま、右足を前方に動かしてみた。
ズリリリリッ・・・
「あ!動けた!そんなに重くない」
――――――歩いた後に、道にくぼみが出来るだろう。そのくぼみに足を入れて、美紀や優歩は付いて行くが良い。
「おおー!」
優歩が俺の付けた道のくぼみに足をはめて進んでみる。
――――――時々、強い風が吹くから気を抜かずに、杖を突きながら慎重に進むのだぞ。
「わかりました!ありがとうございます!」
こうして、俺たちは擦り足で杖を突きながら少しずつ細い道を進んで行く。
ヒューーーーーーーーーーーーーーーーーー
ゴォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「寒いー飛ばされるー」
「しっかり杖を突くんだぞ!」
時々冷たい強い風が俺たちを襲ってくる。油断すると吹き飛ばされて谷底まで落ちてしまいそうだ。
「あ・・・」
そういえば、杖と靴は3人分しかなかった。ロビンはどうやってここを歩いているんだろう。
「ちょっと止まるぞ」
俺は後ろに向かって声をかけ、その場で振り返ってロビンの姿を確認した。
「!?」
「なぁに?お兄ちゃん、その顔」
俺の口があんぐりと開いていることに、優歩がツッコミを入れてくる。
「いや、ロビン!」
「ナンデスカ?」
「その体、どうかしたのか?」
「アア、キニシナイデクダサイ」
俺の言葉に進藤も優歩もその場で振り返ってロビンを見る。
「ええー???」
俺たちが驚いたのは、ロビンの体がまるで石像のように見えたからだ。
「アトデセツメイシマス」
「・・・わかった。みんな、行くぞ」
やはりロビンは普通の人間じゃないから、いろんなことが出来るんだな・・・そんなことを思いながら俺たちは先へと進んで行った。




