―魔界へ繋がる道―
ヌヌヌヌヌ・・・と不気味な声を出すエリアボスと俺たちの戦いが始まった。泥の塊のようなボスには、ロビンの弓矢も効かないらしい。ロビンは、ボスの周りを飛んでいるハエのような魔物を狙って攻撃し始めた。
「よし、俺たちはボス狙いで行くぞ!」
「わかった!フレイム!!!」
進藤が早速魔法を唱える。しかし、効果はいまひとつのようだ。
「俺が行くっ!!!」
剣を振りかざして俺がボスに斬りつけた。
ヌプッ・・・
俺の剣がボスの体に飲まれている。普通に斬っても無駄なことに気が付いた。
「まじかよ・・・」
魔法もほとんど効かない、剣でも斬れない、ロビンの弓矢も無理。じゃあどうやってこいつを倒すんだよ。
「勇生、どうしたらいいっ?」
「ちょっと考えるから、とりあえずフレイムで攻撃しといてくれ」
「わかった。フレイム!!!」
全く効果がないわけではないが、進藤のフレイムが与えるダメージは微々たるものだった。こんなチマチマした攻撃じゃ一体何時間かかるかわからない。くそっ・・・何か他に方法はないのか。俺たちの攻撃がまるで通用しないことをいいことに、ボスは反撃もせずひたすらじっとしている。
ロビンは次から次へと現れる、ザコのハエをひたすら弓で攻撃していた。どうやらボスが倒れるまではザコもエンドレスに出現するようだ。ロビンのためにも早くボスをなんとかしなければ。
「どうすればいいんだ・・・あいつがドロドロじゃなければ斬れるのに・・・」
「どうにかして固めようよ!」
優歩が言うが、そんな方法があるわけがない。
「ハアッ・・・ハアッ・・・キリガナイ・・・」
「はぁっ・・・こっちも・・・きつい・・・フレイム・・・」
戦い続けているロビンと進藤にかなり負担がかかっているようだ。このままでは二人とも力尽きてしまう。
「お兄ちゃん!」
「優歩!」
俺は優歩に呼ばれて、思わず優歩と手を繋いだ。そして、繋いでいない方の手のひらをボスの方に向け、強く念じた。
「固まれー!!!!!」
サ――――――――――――――――――――――――ッ・・・・・・
「!?」
突然、前に差し出した手のひらから砂のようなものが噴出した。
「なんだ!?」
「わかんないっ、けど、ほらっ!!!」
優歩がボスを指さす。砂のような細かい粒子が、ドロドロのボスの体に入り込み、ゆっくりと固めていくのがわかる。
「固まってきたぞ!」
ボスの足元からだんだんと体の色が変化し始める。あと少し、あと少しで頭の先まで固まる。そうしたらきっと斬れるだろう。俺は剣を握り直し、構えて、一歩前に踏み出した。
「よしっ行ける!」
ボスの頭のてっぺんまで色が変わるのを見届けた俺は、力一杯剣を振りかざした。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
叫びながら斬りつける俺の手に、激しい衝撃が襲ってきた。手がしびれるが歯を食いしばって剣を握り続ける。俺の剣はボスを真っ二つに割ろうとしていた。このまま、最後まで斬り続ける!しかし、今度は固くなかなか下まで剣が下ろせない。
「フレイムラッシュ!!!」
俺の背後から進藤が呪文を唱え、ボワッボワッと火のリングが渦を巻くように、俺の剣の方へと向かって行く。
ゴオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
進藤のフレイムラッシュを受けた俺の剣が激しく燃え上がる。その熱さでさっきよりも剣が下に行く気がした。
「おおっ・・・」
剣を握っている手に炎の熱気が伝わってくる。熱い。かなりの熱さだ。早く戦いを終えなければ火傷してしまいそうだ。
「行け~~~~!!!!」
俺は力を振り絞ってボスの足元まで剣を下した。燃え盛る剣の刃がボスの体を切り裂いた。
ヌヌヌヌ・・・・ヌヌ・・・ヌヌヌ・・・・
途切れ途切れに唸りながら、泥のような魔物は消えて行った。
「やった・・・」
俺は剣を収めて振り返った。
「・・・進藤!」
疲れ切っている時にフレイムラッシュを唱え、進藤の疲労はピークを越えてしまったようだ。ボスが倒れた後には俺の背後に倒れ込んでいた。
「美紀さん!美紀さんにヒール!」
優歩が進藤に回復の呪文を唱える。あたたかい白い光が進藤の体を包み込む。
「・・・う・・・ありがと・・・」
進藤が起き上がった。
「進藤の魔法がなかったら倒せなかったよ。ありがとう」
「ミキサン・・・ユウキ・・・オミゴトデシタ」
ロビンもかなり疲れているようだ。
「ロビンにヒール!」
優歩がロビンにも回復の呪文を唱える。
「アリガトウ。ゲンキニナリマシタ」
「良かったー」
――――――よくやった。記録ポイントを作っておく。
「シド!」
「シドちゃん!」
――――――この先は、いよいよ魔界へ通じる道に入る。今までの道より険しくなるから心して進むのだぞ。
「もうすぐ魔界に行けるのか・・・」
「怖いー。でも早く行きたいー」
俺たちは記録ポイントにスイッチを入れ、各自記録を済ませた。今日はもう少し時間がある。行ける時にこの先に進むか。
「ね、とりあえず、一回戻りましょう」
進藤が声をかけてくる。
「どうした?」
「一回戻って、お昼ご飯にしないと、多分お腹ペコペコだよ」
「あ、そうか」
「私お弁当作ってきたから、ね、戻ろう!」
「ロビン、30分ほどで戻ってくる。待っていてくれ」
「ワカリマシタ。デハ ノチホド」
「わーい!美紀さんのお弁当ー!ロビンー、あとでねー!!!」
こうして魔界へ続く道に入る前に、俺たちは一度腹ごしらえをしに戻ることにしたのだった。




