―頼もしい仲間―
翌日。進藤は家の人に『図書館でゆっくり勉強してくる』と言い残し、俺の家にやって来た。
「美紀さん!おっはよー!」
優歩も朝からテンションが高い。昨日で部活を終え、今日から思いっきり冒険が出来るからだろう。と、言っても受験生だから、出来るだけ早く冒険を終わらせて、受験勉強に差し支えのないようにしないといけない。たくさん冒険出来る今、めいっぱい行動するのみだ。
「おはよう!準備出来てる?」
「うん!バッチリ!今すぐいこー!」
「よし。今日は出来るだけ進むぞ。早速行こうか」
少しの時間も惜しむかのように、俺たちは進藤を出迎えた玄関でそのままボタンを3回押し、時空の歪みの中に入った。
「前回の続きからだね」
「そうだ。優歩が穴に落ちて戻ってきたとこだから、前々回と同じ記録ポイントからのスタートだ」
「ロビンはいつ合流するの?」
シドの説明によれば、ロビンはこの時空の歪みの中をいつもさまよっていて、瞬間移動も出来るし、俺たちの居場所も確認出来ているという。
「私たちがここに来たっていうことをパッと察知するような能力があるのかなー?」
優歩がそんなことを言った時だった。俺たちの目の前に一瞬にして黒い影が現れた。
「オマタセシマシタ」
「あ!来た!ロビンー!おっはよー!」
「オハヨウゴザイマス」
「よし、早速進むぞ」
「オッケー」
俺たちは、新たな道を先に進みだした。
ロビンが加わったことで、俺たちの旅は随分と楽になった。ザコを倒すのに全く苦戦しなくなった。それもそのはず、ロビンはここの中をたった1人で行ったり来たりしているのだ。ロビンの能力ならザコは本当に赤子の手をひねるほどの容易いもので、俺たちはほぼ戦わなくてもいい状況になっていた。ここに俺たちがいる意味は本当にあるんだろうか・・・ただ、魔王にとどめをさせるのは俺だけだとシドが言っていたから、その言葉を信じて今は進むしかない。
もうどれぐらい進んだだろう。相変わらずロビンが一人で敵を倒してくれるので、戦いによるダメージはほぼ受けていなかったけれど、だんだんと足取りが重くなってきた。
「もしかして・・・行動力がもう残り少ないのかな・・・」
「次の記録ポイントまで持つかしら・・・」
「もうー動けないよー」
優歩がその場にしゃがみ込んでしまった。俺と進藤も疲労感を感じていた。
「ロビン・・・君には行動力とかは関係ないのか?」
変わらず動いているロビンに思わず聞いてしまう。
「ボクハ ダイジョウブ。ユウキタチ、タビヲヤメマスカ?」
「いや・・・ここでやめたらまたさっきの記録ポイントからだし・・・」
「この先に回復の泉あったらいいんだけど・・・」
進藤の言葉にロビンが反応した。
「イズミデナオルノデスカ?」
「そう。回復の泉の水を一口飲めば嘘のように体が軽くなったのよ」
「ワカリマシタ」
「わかったって?え?泉があるのか?」
「チョットマッテテクダサイ」
そう言い残すと、ロビンはフッとその場から姿を消した。
「消えたー!」
「瞬間移動出来るって便利だなぁ・・・」
「オマタセシマシタ」
座り込んでいた俺たちの前にロビンが戻って来た。手には虹色に光る液体が入った小瓶を持っていた。
「イズミノミズヲ クンデキマシタ」
「おお・・・」
「わーい!ありがとー!」
俺たちは、ロビンから小瓶を受け取ると、一口ずつ水を回し飲みした。虹色に光る水を飲んだとたんに体にパワーがみなぎる。
「よし!復活したぞ。ありがとう、ロビン」
「頼りになるわ。本当にありがとう」
「泉の水って美味しいんだよー!ありがとー!」
俺も進藤も優歩もみんなロビンにお礼を言った。
「オヤクニタテテヨカッタデス」
ロビンが俺たちに笑顔を見せた。青い瞳の少年のはにかんだ笑顔を見た優歩が興奮したように言った。
「ロビンってかっこいいー!やばいーマジやばいー!キュン死するかと思ったー!」
相変わらずミーハーな妹だ。兄としてちょっと恥ずかしい思いだった。
ロビンのおかげで、行動力も回復し、その後もどんどん先に進んで行く。
「あれ?」
「なんだ?」
「なんか・・・臭くない?」
「優歩・・・お前か?オナラ・・・」
「えっ?何言ってんのー?オナラなんかしてないよ!ばっかじゃないのー?」
鼻をつくようなニオイがだんだん強くなってくる。
「コノエリアノボスガチカクニイマスネ」
「え・・・この臭いのは敵のニオイなのか」
「えー!くっさいのやだー!」
「わっ!!!」
先頭を歩く俺の体がよろけた。地面がぬかるんで、足を取られたのだ。
「みんな、気をつけろ!歩きにくいぞ!」
だんだんと臭いニオイがきつくなって、ウッとなる。
「マモナクデスヨ キヲツケテ」
「ロビンがいるから平気だよー!」
「イエ コンドノエリアボスハ ボクノユミハ キキマセン」
「えええええええ~~~~~?」
「ボスヲ カコム ザコダケ ボクガタオシマス。ミナサンハ ボスヲネラッテクダサイ」
なんだって・・・ここに来てボスは自分たちだけで攻撃しないとダメだなんて。
ヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ・・・・
「ヌヌヌってなによー!お兄ちゃん!来たよ!ボス!」
変な音を出しながら、俺たちの目の前に現れたのは、泥の塊のような変な化け物だった。見たところ、かなりドロドロだ。確かにこの敵にはロビンの弓矢もささらないかも知れない。
「わっ・・・くっせー!みんな、こんな臭いのさっさとやっつけようぜ!」
目にしみる刺激臭の中、新たなエリアボスとの戦いが始まった。




