―新たな出会い―
突如、床に開いた穴に、優歩が吸い込まれてしまった。慌てて駆け寄ったが、もう穴は消えてなくなっていた。
「どういうことだ?優歩は??」
「どこか別の場所に行ってしまったのかしら・・・」
「あいつ、回復しか出来ないから戦えないぞ!?どうすれば!!シド!!!」
――――――勇生。慌てなくても大丈夫だ。
「どうしてですか!?優歩が危険な目に遭ったらどうするんですか!」
――――――少し待っていろ。きっと優歩は戻ってくる。
「戻ってくる・・・あっそうか!一回元の世界に戻ればまたすぐここに来れるよな」
「そうね。待ってみよう」
「あいたたた・・・」
どこかに落ちた優歩は、足をくじいてしまったようだった。
「ここどこなのー」
お兄ちゃんたちとはぐれてしまった。こういう時は一回戻ればオッケーよね。優歩はボタンを押した。
「・・・あれ?」
押しても元の世界に戻らない。ええ~!?じゃあどうにかしてここから出ないとお兄ちゃんたちとはぐれたままになっちゃう!優歩は焦って出口を探し始めた。薄暗い部屋を隅々見回す。そんなに広い部屋ではないみたいだ。
その時、薄暗い部屋の隅で何かが動いた気配がした。
「え・・・」
優歩の目の前に、巨大なトカゲが現れた。
「うそ・・・」
優歩は必死にボタンを押すが、やはりボタンは無反応だった。
「どうしよ、どうしよー!!」
トカゲがのっそりと優歩に近寄ってくる。
「こ、こ、こないでー!!!」
優歩は、パニックになっていた。えっと、こういう時こそ落ち着かなくちゃ!私、もしかしたら魔法使えるかも知れないから使ってみよう!
「フレイムー!!!」
美紀さんのように呪文を唱えてみる。が、何も起こらなかった。
「あーだめか・・・フレイムー!!!」
だんだんとトカゲが近寄ってくる。魔法はやっぱり発動しない。
「どどどどうしよ!魔法も無理だ!わあああああーん!お兄ちゃんー!!!」
のっそりのっそり、もうトカゲが優歩の目の前まで来てしまった。
「誰かー!!!助けてぇえええええええぇええ!!!」
トカゲの目が赤く光り、するどい目で優歩を睨んだ、その時だった。
―――――――――――――――シュッ―――――――――
『グオオオオオオ』
優歩の目の前で、トカゲがもがきだした。なになに?何が起きたの?
「ああっ!」
トカゲの右目に矢が刺さっている。
「ダイジョウブデスカ」
優歩が振り返ると、弓矢を持った少年が立っていた。
「モウスコシサガッテ」
言われるまま、優歩が後ろに下がる。もがいていたトカゲの体が紫色になり、苦しさから大きく暴れたが、そのまま固まって、最後には消えた。
「すごい・・・一撃で」
「ドクヤナンデス」
「毒矢・・・」
ぽかんと口を開けている優歩に、少年が声をかける。
「コチラカラデレマス」
少年の目線の先を見ると、階段が出来ていた。少年と優歩は階段を上がって行った。
「あ、ここ!」
そこは、今日最初のスタート地点の記録ポイントだった。
――――――優歩が戻ってきたようだ。記録ポイントのところにいる。
「え?そうなんですか?行こう、進藤!」
「うん!」
俺と進藤は記録ポイントのある部屋に戻った。そこには、優歩が立っていた。
「お兄ちゃんー!美紀さんー!」
「良かった、無事で」
「あ・・・」
優歩の後ろに立っていたのは、赤い髪と青い瞳をした少年だった。俺の夢に出てきた少年だ。
「ロビン・・・?」
俺は、なんとなくその名前を口に出してみた。
その少年は、軽くうなづいて言った。
『ソウ、ボクハロビン。ヤットアエマシタネ、ユウキ』
「・・・俺のこと知ってるんですか」
――――――勇生よ。ロビンは私が捕らわれている魔王城の兵士なのだ。
「えっ・・・じゃあ、敵じゃないですか!」
――――――いや、敵ではない。味方だ。理由あって、魔王城に入り込んだのだ。
「ああ、なるほど・・・潜入作戦とかいうやつですか」
――――――ロビンは弓の名手だ。
「さっきね、私を助けてくれた時、すっごかったんだよ!毒矢がね、シュッ!って一撃!!!」
優歩が興奮を抑えられずに話してくる。
「妹を助けていただき、ありがとうございました」
俺はロビンに深く頭を下げた。ロビンという少年も、静かに笑ってうなづいた。
――――――勇生たちよ。今後はロビンとも協力して進んでくれたまえ。
「はい。わかりました。でもロビンは・・・」
――――――ロビンはスイッチを持たない人種だ。いつもこの時空の歪みの中を旅している。其方たちの行動を見る力があるから、いつでも会える。ロビンは瞬時に移動も出来る。
「じゃあ・・・俺たちは普通に旅を続ければ問題ないってことでしょうか」
――――――そうだ。勇生たちが旅を始めると、ロビンが駆け付けて合流することになるだろう。
「わかりました。今日はもう一度戻ります。また明日からお願いします」
俺は、ロビンに向かって手を差し伸べた。
『コチラコソヨロシク』
ロビンが俺の手を握った。ロビンの顔を見ると、吸い込まれそうに澄んだ青い瞳がとても印象的だった。
こうして、俺たちにまた新たな仲間が増えたのだった。




