―新たな戦法―
2度目の中ボスは、水の魔法を放つ魔女だった。進藤の放つフレイムの魔法ではたいした効果もないようだった。しかも、俺たちの立っている場所の周りにバリアが張られていて、直接攻撃も出来ず、どうやって倒せばいいのか全くわからなかった。進藤の攻撃は魔女には弱く、魔女からの攻撃は俺たち3人とも受けて、その度に優歩がヒールで回復するという、無駄な動きを繰り返していた。
「くそっ・・・このバリアがなければ・・・この剣が届けば・・・」
俺は怒りから、剣先を地面に突き立てた。
ガガッ・・・
「ん?」
剣を突き立てた地面に小さくヒビが入った。
「もしかして・・・」
俺はもう一度、剣先を地面に突き立てた。今度は、少し前方に向かってもう少し力を込めて。
ガガガガッ・・・
「やっぱり・・・」
足元の地面の前方に向かって50cmほどのヒビ割れが出来た。これをなんとか使えないだろうか・・・。
「美紀、優歩、俺の後ろに下がれ」
俺の少し前方で魔法を唱えていた進藤が振り返る。
「えっどうして?」
「いいから!俺に方法がある。うまくいくかは知らないけどな」
「わかった」
進藤が俺の後ろへと下がる。頼む、うまくいってくれ・・・俺は大きく剣を上に引き上げ、思いっきり地面に突き立てた。
「届けーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
ガガガガガガガガッ・・・
「きゃあっ」
「わっ」
地面が揺れたので進藤と優歩が手を取り合ってお互いを支え合う。
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ・・・
ものすごい地響きと共に、地面のヒビ割れが魔女の足元にまで達した。
『はうっ・・・』
一瞬、魔女の足がふらついた。だが、これだけでは大きなダメージは与えられない。俺はダメ元で、剣に祈りを込めた。
「フリーズソード!!!魔女を凍りつくせ!!!」
魔女の放つ水の魔法に打ち勝つには、凍らせてしまえば・・・うまくいく保証はないが、この時空の歪みの中ではなりきることが大事なのだ。俺は、氷の魔法を使える、はずだ!
【フリーズソード】と唱えた俺の剣先から細かい白い霧が立ち込めて、ヒビ割れの中をシュー・・・ッと進み、魔女の元へと向かった。
『なんだ、これは、うっとうしい!』
魔女が足の周りに立ち込める霧が邪魔で、水の魔法を唱える。
バリバリバリバリッ・・・
『ああっ・・・』
魔女が唱えた水の魔法が、俺のフリーズソードの効果で凍って固まった。魔女の足元が氷で固定され、身動きが取れないようだ。
『おのれ・・・よくもっ・・・』
魔女が動けない間に、出来れば倒してしまいたい。
「もしかしたら・・・」
俺は、前方に少し剣先を向けた。さっきまで感じていたバリアの気配がなくなっている。魔女を氷が捕えたからだろう。
「よし!」
俺は剣を握りしめ、身動きが取れない魔女の元へと走って行った。
「えっ!?勇生!バリアは!?」
「んなもん、もう消えたさ!行くぞー!!!」
俺は、大きく剣を振りかざして、魔女を斬りつけた。
『ぎゃああああああああああああああ』
魔女の体は真っ二つに割れ、水たまりとなり、最後には蒸発して跡形もなく消え去った。
「やったな」
「すごい・・・よく思いついたね」
「この世界ではなりきってやってみることが大事だ。前回の中ボスの時もそうだったろ」
「そっか・・・あの時も無我夢中で使ったことない魔法使ったりしたもんね」
――――――よくやった。勇生たちよ。
「シドちゃん!」
――――――勇生の言う通りだ。思いついたことをやってみるのも新しい力が生まれるきっかけになる。
「はい。どうにもならなくて、とっさに思い付いたんですけど、うまくいって良かったです」
――――――その調子でこの先も頑張ってくれ。戻る前に記録ポイントを作っておく。記録してから行くのだぞ。
「はい!」
壁に四角い穴が開いた。それぞれ、ボタンスイッチをはめ込み、ボタンを1回押した。
「これで、今度はここからのスタートになるのね」
「良かったー!あの魔女とかもう絶対会いたくないし」
「よし。記録は済んだな。戻ろうか」
俺たちはボタンを押し、元の世界へと戻って来た。
時計を見ると、もうすぐ7時になろうとしていた。
「ああ、もうこんな時間か」
「私、帰るね。勇生のお母さん戻ってくる頃でしょ」
「ごめんな、そこまで送るわ」
「大丈夫よ、何かあったら魔法使うし」
「ここの世界じゃ無理だろ~」
「そうだけど、大丈夫。また明日ね!」
「美紀さん、お疲れ様」
「優歩ちゃんも、またね」
玄関まで見送って、進藤が帰って行った。優歩がニヤニヤしながら俺の方を見ている。
「・・・なんだよ?」
「ううんー。なんか、お兄ちゃんいつもと違って格好良かった気がするー」
「気がするだけかいっ」
「私のヒール、役に立った?」
「ああ。回復がないと進めないからな。また頼むよ」
「オッケー!まっかせといてー」
玄関でガチャガチャと鍵が開く音がする。母親が帰って来たようだ。
「優歩、旅のことは絶対親に内緒だからな」
「わかってるー。じゃ、また連れてってね」
そう言うと優歩は玄関に走って行った。俺は、自分の部屋へ行き、慌てて制服を脱いだ。学校から帰って来てすぐに冒険に出たから制服のままだったのだ。
「お母さん、おかえりー」
「あら、お出迎えしてくれたの?めずらしいわね」
「お腹空いたから待ってたー!」
「ごめんね、遅くなって。すぐ作るわね」
荷物を置いてすぐに母親がキッチンに立つ。部屋着に着替えた俺もキッチンへと急いだ。
「俺、なんか手伝おうか?」
「え?なあに?どうしたの?」
「いや、腹減りすぎて」
「勇生も優歩も育ちざかりなのかしら・・・いっぱい作るわね」
冒険でいっぱい動いたから空腹なのだが、育ち盛りということにしておこう。俺と優歩は晩御飯を作る手伝いをして、少しでも早く、この空腹感を満たしたいと考えていた。




