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PUSH!!  作者: 桃色 ぴんく。
10/20

―癒しも必要―

「ねぇ!シドってなに?」

「・・・ああ、ゲームのキャラだよ。優歩もやってんのかと勘違いした」

俺は適当にごまかそうとした。

「なになに!?なんていうゲーム?優歩もやるから教えて!」

「やんなくていいよ。練習中だろ、邪魔して悪かった」

「ええ~教えてよ~ゲームやりたい~」

参った。必要以上に食いついてくるから面倒だ。

「また後で教えてやるから、な」

とりあえずそう言い聞かせて、俺は自分の部屋へ入った。





 制服のズボンを脱いで、部屋着に着替えるついでに右足を見る。やっぱり傷の跡形さえなくなって何もない・・・。あんなに激しい痛みを感じたのに。あの傷さえなければ、俺ももっと身軽に動けたのに。そうすれば、戦う時間だってもっと短縮出来たはずだ。

「そうだ」

俺はボタンを押し、シドを呼んだ。




――――――勇生か。呼んだか?



「はい。聞きたいことがありまして」




――――――どうした?



「時空の歪みに居る時、戦いで傷を負ったり戦闘不能になった場合、回復する方法はないのですか?」




――――――元の世界に戻るか、もしくは仲間に【癒しの魔法】が使える者が居れば・・・




「いちいち戻るわけにも行かないですよね。旅が進まないし。癒しの魔法ってどんな人が使えるんですか?あっ、そうだ!美紀じゃ無理なんですか?」




――――――美紀は【攻撃魔法】を使うから、今から【回復魔法】を覚えるのは大変だ。覚えたとしても、両方の魔法を使うには、まだ経験不足だな。




「そうなんですか・・・」

 今すぐは両方の魔法は使えない、か。例えば、進藤を回復魔法に回したとすると、それはそれで戦いの時に攻撃出来るのが俺だけになるわけで、今日みたいな中ボス、もっと強い敵が出た時なんてとても太刀打ちできないかも知れない。それじゃあどうすればいいのか・・・

「私、やるっ!!!回復!!!」

「えっ!?」

 振り向けば、優歩が部屋に入ってきていた。

「お、おまえ!見てたのか!」

「うん。この人がシドって人でしょ」

 どうやら、ボタンを押すところから全部こっそりとドアの隙間から見られていたようだ。




――――――勇生。その娘は?



「俺の妹です。優歩と言います」




――――――優歩。其方は魔物を目の前にしても、落ち着いて人の心を癒せると思うか?



「大丈夫!まだ中学生だけど、度胸はあるのよ!それと優しい心も!」

優歩はシドの姿を見ても、特に驚いていない様子だった。俺なんて、初めてシドと出会った時は悪魔が来たと思って大騒ぎしたのに。




――――――優しい心か。



「名前、優歩ていうのよ。”優しく歩く”と書いて優歩。回復系にピッタリでしょ」



――――――勇生。其方はどうだ?優歩も仲間に入れてみるか?



「う~ん・・・あ、美紀に聞いてみます」




――――――わかった。また声をかけてくれ。時間切れだ。また会おう・・・




 シドが消えて、俺の部屋に俺と優歩の2人になった。

「おまえ・・・見るなよな」

「だって、お兄ちゃんが教えてくれないからじゃん。ゲームのこと」

「今見たことは誰にも言うなよ。親にもな」

「わかってるよ~で、いつするの?ゲーム」

「ゲームじゃないぞ」

「えっ?今のシドって人もゲームキャラじゃないの?」

「お前さぁ・・・どうやったらこのボタンスイッチの隙間から映像を出せるんだよ。考えてみろよ」

 ボタンを押し、シドが出てくるのを見ていたくせに、何言ってんだか。

「いやぁ~最近のゲームってすごいな~って思って見てたの」

「ゲームじゃなくて、ゲームのようだけど本当の話なんだ」

「なんか全然わかんない」

 俺は、面倒だったが、数日前にシドと出会い、世界を救って欲しいと頼まれたこと。進藤も優歩と同じように俺がシドとやりとりしている姿を見て、そのまま仲間になったこと。今では、学校帰りに2人で時空の歪みに入り、敵と戦っていること、などを話した。

「え?じゃあ美紀さんって・・・お兄ちゃんの彼女じゃないの?」

「そうだよ。ただの仲間さ。って、お前つっこみどころ違うくね?」

 進藤が俺の彼女かどうかより、先に世界を救うことになったことに驚け、ってんだ。

「ふ~ん。まぁ、一緒に旅してる間にどうにかなっちゃうかもね~」

「なんだよ、それ」

「とりあえず!美紀さんに、私が仲間に入っていいか聞いてみて!」

「おまえ、でも、部活は?」

「もう今度のコンサートで終わりだよ。3年だし」

「そっか。じゃあOK出たら行けそうだな。明日進藤に聞いてみるよ」

「いぇ~い!冒険!回復!」

「・・・遊びじゃねぇんだってば・・・」

 もう仲間になったつもりではしゃぐ優歩の姿を見て、少し不安を感じる俺だった。






 翌日。俺は早速進藤に聞いてみた。

「あのさ・・・妹にシドのことバレちゃって」

「ええ??大丈夫なの?」

「なんかさ、私も仲間に入れてとか言い出したんだよ」

「ええ~???」

「ちょうど、シドに戦いの途中で回復する方法ないですか?とかって聞いてた時でさ、『私が回復役する!』とかっていきなり部屋に入ってきてさ」

「ぷっ・・・可愛いね。シドちゃんは何て?」

「進藤の許可もらったら別にいいみたいだよ。進藤が回復魔法覚える手もあるけど、攻撃魔法と併用して使えるようになるには時間がかかるし、攻撃出来る人が多い方が有利だし」

「なるほど。勇生と私が攻撃して、妹さんに回復してもらうってわけね。いいんじゃない!?」

「え?いいの?嫌じゃない?」

「なんで?」

「俺の妹だよ?」

「勇生の妹だったらなおさらいいじゃん!一緒に旅しよう、って言っといてね」

「ああ、わかった」

 こうして、妹の優歩も俺たちと共に旅をすることに決まった。帰ったら、シドに報告しよう。


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