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あれから私は三日ほど生死をさまよっていたらしい。目を覚ました時は泣き出されてビックリした。
どうやら私ははまっていた乙女ゲームに転生したらしい。
まって!頭は正常ですから話を聞いてください!お願いします!!
題名はきちんと覚えてないけど【花姫~きみだけに~】こんな感じだったはず。通称【花きみ】
ゲームだけじゃなくてマンガや小説も出るくらい人気だった。
私は花きみのマンガを買いに行く帰りに死んだ。読みたかったなぁ・・・最終巻だったし。
そんなことはおいといて、このゲームは普通の高校に通っていたヒロインが16歳の誕生日に瞳の色が変わったことで、【彩陽学園】に転校してくることで話は始まる。そこで自分の正体が発覚し、攻略対象とともにいろいろなイベントを乗り越えていくというもの。
攻略対象は普通の人間ではなく、【先祖返り】と呼ばれる妖や悪魔の血を引き、その力が隔世遺伝した者たち。その証として、攻略対象にはその力を象徴とした模様の痣が体のどこかにある。
ほかにも、攻略対象には特徴があって【大企業の家のもの】【苗字が色の名前で瞳がその色であること】【生徒会役員であること】の三つ。
私はどうやら攻略対象の一人、【翡翠 怜】の双子の姉【翡翠 凛音】として生まれたらしい。
翡翠凛音は怜のルートで名前が少し出てくるだけのモブチャラだ。
怜と凛音の両親は仕事人でめったに顔を合わせることがなく、怜は怜で次期当主だからと凛音とは別々に暮らしていたため、交流なんてものはなく、二人とも家族の愛情というものを知らずに育った。これが凛音が名前しか出てこない理由。
ゲームでの怜は周りからの重圧と勉強がうまくいかず、心の奥で人間関係に一線を引き、逃げるようにスポーツに打ち込んでいる悩めるさわやか少年だ。ただし、さわやかなのは表面上だが。
だがしかし!そんな少年になってもらう気はさらさらないのです!話す相手がいないなんてつまらなじゃないか!私がだけど。
今世でも私はオタクをつらぬく気満々なのだ。たとえ、精神年齢が22歳だとしても!(現在で)
家から出られず、どうやって仲間を作ればいいというのだ!ならば私は、怜を頃合いをみてオタクの道に引きずりこんでやる!家族の愛がわからなくなる心配もこれで解決できるし、一石二鳥だ!
だったら、別々に生活することにならないようにそのフラグを折らなくては!・・・とりあえずくっつきまくってればいいかな?
あ、聞いてくださってありがとうございました。
凛音は生まれてから四か月にして体をバタバタさせながら意気込むのであった。
そして、その様子を不思議そうに怜が凝視していた。