【揺花草子。】<その739:800のうちひとつくらいは。>
【揺花草子。】<その739:800のうちひとつくらいは。>
Bさん「すぐバレる嘘をつきたい。」
Aさん「いや・・・うん・・・。
一応『なんでですか』って訊いておくよ・・・。」
Bさん「あのさ、優しい嘘は人を慰めるじゃん?」
Aさん「おっ・・・思いのほか重いハナシするね?」
Bさん「深く絶望に沈んだ人がいます。
もう何も信じられない。誰も信じられない。
誰も自分を助けてくれない。
そんな、地獄の深淵<タルタロス>に幽閉されたような絶望のために
深く嘆く阿部さん。」
Aさん「ぼくなんだ!!?」
Bさん「そんな悲しみに沈んだ人のために、周りの人がしてあげられることって
実際そんなに多くないんだと思うんだよね。
『元気出しなよ』『頑張りなよ』『明日はいいことあるよ』なんて言う
空虚な言葉で励ますことしか出来ない。」
Aさん「いや、でも、言葉をかけてあげるだけでも・・・。」
Bさん「そうなんだよ。
悲しみ苦しんでいる人がいて、たとえそれが仮初めの優しさだったとしても、
声を掛けてあげる。
それはたぶん友達の役目だと思うんだ。
絶望から引っ張り上げるほどの力にはならないかも知れない。
けれど、絶望の底を少しだけ照らす懐中電灯にはなれるかも知れないんだから。」
Aさん「うん・・・そうかも知れないね。」
Bさん「その人だって、その言葉がいかに空っぽで浅くて軽いかってこと、
分かっちゃうと思うんだ。
絶望に沈む人に優しさの光はなかなか届かないものだからね。
この優しい光ももしかしたら偽物かも知れないと疑っちゃうものだから。
どうせ嘘だろって、思っちゃうから。」
Aさん「うーん・・・確かに絶望は人に猜疑心を与えるものだよね・・・。」
Bさん「それでも、言わないよりはずっといいはずなんだ。
深い深い闇の底まで、いつかは、たぶん届くから。
空っぽの、浅い、軽い言葉でも。
足元をほんのり、照らす光になると思うから。
その偽物の光の中にほんの少しだけでも、本物が隠れてるはずだから。」
Aさん「うん・・・。」
Bさん「だからぼくは、すぐバレる嘘をつきたい。」
Aさん「はぁ・・・。
そうなんだ・・・。」
Bさん「阿部さん大好きだよ。」
Aさん「今の話のあとには聞きたくなかったなぁ!!!!!」
嘘かな?
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