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【揺花草子。】(日刊版:2014年)  作者: 篠木雪平
2014年9月
270/365

【揺花草子。】<その974:今日をステキに始める場所。>

 【揺花草子。】<その974:今日をステキに始める場所。>


 Bさん「風が吹けばIKEAが儲かるって言うじゃん?」

 Aさん「言わないよ。

     風が吹かなくてもIKEAは儲かるよ。

     まだしばらくは混雑が続くよきっと。」

 Bさん「ぼくらの街ではここ10年弱ぐらいの間で南部副都心の再開発が進んでるよね。」

 Aさん「うんうん、そうだね。

     あっち方面ってなかなか行く機会ないけど、たまに行くと昔と街並全然違ってて

     すっごいびっくりするよ。」

 Bさん「ちょっと前だけどさ、うちのポストにIKEAのカタログが入っててね。」

 Aさん「へえ、そうなんだ?」

 Bさん「ちょっと暑い日でさ。

     風通し良くしようと窓開けて、吹き込む風に身を委ねながら

     窓際の椅子に腰掛けてカタログに目を落とすぼく。

     その日は休日だったんだけど、ママンはちょっとお出掛けしてて、

     ぼくはひとりでお気に入りの紅茶なんかを飲みながらお留守番中。」

 Aさん「あー・・・それはアレだね、画を想像しながら聞いてくれってことね?」

 Bさん「素敵なソファやカーペット、間接照明にテーブルにカーテン・・・。

     カタログには可愛らしい家具がいっぱい掲載されています。

     こんな家具や調度品で囲まれた暮らしができたら、どんなにステキなことかな・・・。」

 Aさん「ほほう・・・。」

 Bさん「そんな妄想が捗るカンジのカタログでした。」

 Aさん「妄想が捗るとか言うなよ。ちょっと良いカンジだったのに。」

 Bさん「カタログをぺらぺらめくるぼく。

     窓から吹き込む、夏の残り香を含んだ、でも優しく少しだけ冷たい風が髪を揺らす。

     午後のやわらかい陽射しが注ぎ込む。

     紅茶の香りが心地良い。

     そんなおだやかな空間の中で、いつしか弛緩していくぼくの意識。

     ──いつの間にかぼくは、うたた寝をしてしまっていました。」

 Aさん「うん・・・。」

 Bさん「目を覚ましたのは、窓の外から聞こえる大きな音のせいでした。」

 Aさん「大きな音?」

 Bさん「急に空模様が怪しくなってね。かなり強い雨が降って来たんだよ。

     雷も鳴り出してね。」

 Aさん「あぁー・・・。うん、最近そう言う日あるよね。」

 Bさん「風もけっこう出てて。開けていた窓際に雨が吹き込んでびしょびしょになっちゃって。」

 Aさん「うわー・・・それは大変だ・・・」

 Bさん「あぁまずいまずい、窓閉めなきゃ、って思ってたら、ちょうどママンが帰って来て。

     もう突然振り出した雨にやられてびっしょびしょなわけです。

     しかもそのまま部屋に入って来ちゃうから、もう玄関マットやら

     リビングのカーペットやらソファやらもびちゃびちゃ。

     そして窓から吹き込む雨のせいでカーテンもびしょびしょ。」

 Aさん「あぁ・・・それは厳しい・・・。」

 Bさん「まぁだいぶ古くなって来ちゃってたし、良いきっかけだしってことで、

     カーペットとかカーテンとかモロモロまとめて新調することにしたのね。」

 Aさん「へえ、そうなんだ?」

 Bさん「で、この前、IKEAでいろいろ買って来たんです。」

 Aさん「あぁ・・・。」


 Bさん「結果的に風が吹いたらIKEAが儲かったわけ。」

 Aさん「なんと言う強引な結末!!!!!」


 突然の雨とか要注意。


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「Meister's Brief」から自動転送

http://www.studiohs.com/28if/brief/2014/09/27.html


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