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【揺花草子。】(日刊版:2014年)  作者: 篠木雪平
2014年6月
179/365

【揺花草子。】<その883:出来が悪い。>

 【揺花草子。】<その883:出来が悪い。>


 Bさん「叙述トリックを使いたい。」


 Aさん「えー・・・うーん・・・。」

 Bさん「また阿部さん微妙なリアクションだねぇ。」

 Aさん「いや、なかなか難しいことを言うなぁと思って。」

 Bさん「叙述トリックは知ってる?」

 Aさん「知ってるよ。ミステリもののトリックのひとつだよね。

     文章上の仕掛けによって読者のミスリードを引き起こす手法のことだよね。」

 Bさん「そうですその通り。

     古くはクリスティの『アクロイド殺し』で用いられて

     探偵小説にセンセーショナルな風を巻き起こした手法です。

     いわゆる『信頼できない語り手』だね。

     近い例で言うと『アヒルと鴨』も叙述トリックに相当するね。」

 Aさん「うんうん。

     だから正直あの作品は映画化難しいんじゃないかなって思ってたよ。」

 Bさん「ともかく、叙述トリックですよ。」

 Aさん「はぁ・・・。」

 Bさん「ここでぼくはひとつの物語を提示するよ。

     主人公はガチホモ二次元キモオタクソニートのオッサンです。」

 Aさん「ちょっ!! それっ!!」

 Bさん「なにさ〜、あくまでフィクションだから、フィクション!

     実在の阿部さんには一切関係ありません。だよ。」

 Aさん「暗にぼくがモデルだと強くほのめかしてる!!」

 Bさん「とにかく、その主人公のオッサン。仮にABさんとしておきましょう。」

 Aさん「ABさんとしないで!! もっと離して!!!」

 Bさん「(無視)

     Aさん、いや間違ったABさんは周りの人々から

     『安定の事案ジェネレーター』と陰口を叩かれていました。」

 Aさん「今の間違い方はちょっと悪意がないですか!!?」

 Bさん「そんなABさん、ある日突然自宅に県警の皆さんが踏み込んできた。

     突然の事態に困惑するABさん。あっと言う間に拘束され連行される。」

 Aさん「おぉっ・・・!!」

 Bさん「『ぼくは無罪だ!!』『弁護士を呼べ!!』ABさんは叫ぶ。

     『過払い金請求させろ!!』」

 Aさん「そう言う弁護士の呼び方!!? 民事的なアレなの!!?」

 Bさん「そんなこんなでABさんは逮捕されてしまいました。

     罪状は昨今流行りの『単純所持』です。」

 Aさん「えっ!!!!! ちょっ!!!!!」

 Bさん「刺激的なニュースに飢えていた世の中にとって、ABさんの事件は格好の餌食となった。

     冷酷な捜査当局の追求と、乱暴な報道機関の倫理を逸脱した取材攻勢、

     そして自称『正義の味方』の利己的なネットユーザーたちの手によって

     ABさんの個人情報は世の中につまびらかにされ、同時にABさんの特殊な性癖も

     世に広く知られることとなった。

     結果、ABさんはもはや社会的に抹殺された。」

 Aさん「う・・・うわー・・・。

     あり得るハナシすぎて辛すぎる・・・。」

 Bさん「そして裁判が始まる。

     『単純所持』を激しく糾弾されるABさん。

     世の中の厳しい目の前には『疑わしきは罰せず』の原則など歯が立たない。

     数多くの『状況証拠』が世の中に頒布されてしまったせいでABさんの心証は極めて悪い。

     審理もそこそこに、あっと言う間にABさんの有罪が確定しそうになる。」

 Aさん「いやっ・・・そ・それは・・・!!」

 Bさん「さぁ、阿部さん。

     ここでABさんに成り代わって弁明を。

     ABさんのココロの叫びをここで聞かせてよ。」

 Aさん「えっ・・・ぼくが?」

 Bさん「そう。他人事じゃないでしょ?」

 Aさん「いや他人事だけど・・・って言うか他人事であって欲しいけど・・・。

     まぁでもとりあえず、弁明するとしたら・・・

     『ぼくはやっていない!』『単純所持なんてしていない!』

     『ぼくを見せしめにするための陰謀だ!!!』

     『司法の横暴だ!!』」

 Bさん「ふむふむ。なるほど。見せしめとは?」

 Aさん「つまり、児ボ法違反をするとこんだけ酷い目見ますよと言うのを

     世に知らしめるためにABさんを必要以上に厳しく処断したと言うことですよ。」

 Bさん「・・・。」

 Aさん「?」

 Bさん「なるほどね。

     ──阿部さん。やっぱり阿部さんはクロだ。」

 Aさん「はい!!? なにそれどう言うコト!!?」

 Bさん「ぼくは児ポ法違反だなんて一言も言ってないよ?」

 Aさん「えっ・・・!? だ・だって『流行りの単純所持』って・・・」


 Bさん「少し前に3Dプリンタで生成した拳銃を所持してて

     銃刀法違反で逮捕された事件があったでしょ?」

 Aさん「っっっっっ・・・!!!!!」


 ここまで書いといてなんですが叙述トリックってこう言うんじゃなくね?


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「Meister's Brief」から自動転送

http://www.studiohs.com/28if/brief/2014/06/28.html


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