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Rebellion of Luraunt  作者: RY
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第7話

激しい剣戟の応酬が続く。

剣が舞い、矢が宙を飛ぶ。

大地は血で染まり、焔が空を焦がす。

決して剣筋が良いという訳では無い。重ねて掛けられたエンチャントが彼を強化しているのだ。素早さ、反射神経、動体視力、直感、筋力に至るまで。あらゆる身体能力が向上され、更には女神の加護、幸運の呪い、祝福の類い。強力に過ぎる暗示と共に、彼に掛けられた補助魔法。そして何より、彼自身の確固たる意思。

哀しみ、怒り、恨み。

それらの激しい感情が、若きギノア人を爆発させている。

ミーシャは、突き出される血糊の剣を叩き落とした。

彼の勢いは留まる所を知らず、唯その殺意を膨らませる。

「何故、殺した!!何故殺した!?何故!!何故だ!応えろ!赦さないッ…殺してやる!」



ミーシャは苛立っていた。聖都クリスタル・ミリアリアを発ち一週間。

二日前にハーティを急襲、その足で軍をリューゲンへと進めた。山間を駆け抜け、騎馬隊を先行させた。ハーティ襲撃の報が敵に届く前に、リューゲンへ進撃。電光石火の速さで、自身が率いる千の騎馬で攻め入った。

予想を遙かに上回る開戦の速さに、リューゲンは一時的にミーシャの支配下に落ちた。

此処までは計画通りだった。

しかし、一日遅れで到着する筈の歩兵連隊の進行が遅れた。

戦乱に乗じて、捕縛したグレン・ジャーマイルは逃走。唐突の襲撃に対応出来なかった解放戦線は、一日という時間を経て反撃に転じた。千の騎馬では持ち堪え切れず、リューゲンを脱出。山々を背に、リューゲンを臨む丘にて陣を敷いている。



そもそもがこの島の先住民族だ。島民全てが敵である。

大陸人は人口の三割にも満たない。数で圧倒されるが故に、我々大陸人はそれを上回る個々の戦闘力の優位を維持しなければならない。

その為の歩兵、白銀の甲冑であり、白銀の剣盾である。

先行した千の騎馬は、重装備では無い。

少しでも馬の負担を減らす為の軽装備であり、また対敵軍特化のランス持ちが多い。

その機動性を生かし、集団で突撃し、敵中を突破し、反転を繰り返す。地に降りて単独白兵戦を熟せる装備では無いし、また歩兵特有の陣形成に不慣れである。

だから、後続一万の歩兵連隊との連携が必要だった。

ハーティ落城の報せが入る前に、リューゲンを奇襲。敵軍を混乱させ、数に頼らせる前に歩兵一万を投入し、白兵戦において圧倒する。

然る後に、島全体にてギノア人粛清を成し、反撃の芽を潰す。



ミーシャは舌打ちすると、山の峰を睨み付ける。遅々として、まるで亀の行進の様に、歩兵連隊の軍影が見えていた。

ハーティを出て五日目の昼下がり、ミーシャの陣営に歩兵連隊を率いる男がやってきた。

ソドフ・グリタリア、グリタリア家の三男だ。


「リューゲンはまだ落ちてないのか」


ソドフの第一声だ。ミーシャは気が狂いそうになるのを抑え、剣へと伸びようとする腕を震えさせた。

「ソドフ様、困ります。作戦では我々が敵地に斬り込み、その混乱の中に歩兵連隊が街を占領する手筈でした。我々は計画通りに敵地に乗り込みましたが、歩兵連隊の進軍間に合わず、撤退を余儀無くされたのです!」

ソドフはまるで自分の陣に居るかのような寛ぎ具合で、紅茶など飲んでいる。

「ミーシャ殿。我々は連なる山々の峰を上へ下へと、登りは下るを繰り返して来た。其れも、兵達は白銀の甲冑を身に纏い、貴軍の兵站も運びながら、だ。」

耳に纏わり付く様な声でソドフは言う。


「それは、そういう作戦で…!」


「たかが千の騎馬隊が馬の背に跨り、山々の景色を眺める旅とは訳が違う。一万を超えようかという歩兵大部隊だ。雨が降れば、重装備の兵達の足は重く、荷馬車の車輪が泥濘に沈めば、それを持ち上げるのは大変な重労働だ。そもそもがハーティからの強行軍、兵達の疲労は当然であろう。貴軍の兵站を護り、此処まで運んできた我等に対して、労いの言葉も無いとはこれ如何に?私は、自身の失態の責任を転嫁しようと企む小娘の喚き事を聴きに来たのではない。然るべき言葉を戴いた後に、リューゲン攻略の話に移りたいものだな」


ソドフはそう捲し立て、大袈裟に溜め息をついた。

いよいよミーシャの額に青筋が浮ぶ。

騎馬隊の先行を提案したのは確かにミーシャ自身だ。一万の歩兵連隊と歩を同じにしていたら、騎馬の機動性が生かせない。先行し、露払い程度の斥候役を担うつもりだった。

しかし、騎馬の機動性を活かすならばと、ソドフが先の計画を立てた。

一転して騎馬隊が一番のリスクを背負うが、確かに成功すれば効果は大きい。

勿論、騎馬による急襲後一日後に歩兵による進撃が果たして間に合うのか、疑問はあった。だが、今件において総大将の席に座るソドフ・グリタリアの言葉だ。軍議の席で、それを疑う詰問など出来よう筈もない。本人が出来ると言ったのだ。

居並ぶ兵長達の士気を下げる危険もあった。



私が悪いのか。私の責任なのか。

目前の男を斬り殺したい欲求に駆られつつ、ミーシャは膝を着いた。

「これは大変申し訳ありません。頭に血が登り過ぎていた様です。歩兵連隊の陣道指揮、兵站の輸送、そのご大任、感謝の限りであります」

屈辱に塗れながら、頭を下げる。

「うむ。焦る気持ちは分かるが、兵の頑張りに報わねばならぬ。それが上に立つ者の勉めなのだよ。して、リューゲン攻略に何か糸口は見えたか?」

煮え滾る頭を、必死に落ち着かせ、冷静に応える。


「敵は非戦闘員を含む烏合の衆。装備も脆弱にして、またリューゲンにはハーティの様な堅固な城壁城門を持ちません。逃げ場は無く、取れる一手が街内籠城にして、城を持たぬ敵。策は必要とは思いません。一万を超える我等の戦力と、大陸の秘法を扱う例の部隊があれば、真正面から潰す事が可能かと」


只々、暴れたいと思った。ギノア人の雑兵共を、殺して殺して殺して。目前の腐れ野郎を連想しながら、思い切り人を切り殺したい。さすれば、少しは気が晴れる。奇策などまどろっこしいものは必要ない。当初の作戦が失敗したからと言って、優位性が失われる訳では無い。

彼我の戦力差は依然として、変わらず。正面衝突、正面突破。多少なりとも被害は出るだろう。しかし負けは無い。


「ふむ。では貴殿が先陣指揮を執れ」

「元よりそのつもりです」

臆病者め。グリタリアの恥め。

ソドフが去った後も、ミーシャは総大将の背を睨み続けた。

「ミ、ミーシャ様?」

副官がその様子に声をかける。

「…兵長を集めろ。軍議後、その翌日にリューゲンに攻め入る!」



ちょいちょい編集し直したりしてます。

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