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Rebellion of Luraunt  作者: RY
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第15話 

番外編 とある泉のお伽話

大陸の南海に浮かぶ、緑豊かな島があった。

名もなき島は、幾つもの氏族が各地に集落を築き、互いに争い合っていた。

そんな島の、山麓の緩やかな傾斜地に、小さな集落があった。

山間の裾野で、ひっそりとそれでも確かな営みが其処にあった。


その村に、流れ着いた一家。

厳格な父に、優しい母、そして弟思いの姉、やんちゃ盛りの弟。

村民は、そんな彼等を向かい入れた。


一家は村の為に懸命に働き、何時しか彼等を余所者扱いする者は居なくなった。


名もなき島に、やがて統一の機運が高まる。

幾つかの強力な氏族は、侵略と征服を繰り返し、次々にその勢力を拡大した。


山間の裾野に位置したその村は、ちょうど二つの氏族の境界にあった。

一つは一角を生やし、一つは翡翠の瞳を持っていた。


度重なる話し合いの下、村はより強力な一角の一族に付く事になった。


しかし、一角族は、流れ着いた一家を警戒した。

一家の瞳は、同様に翡翠の輝きを持っていた。


村は俄かに殺気立った。

不信、疑惑、警戒。猜疑心はかつての共存の日々を簡単に壊した。


父は殺され、母も帰ってこない。

家の前に群がる、かつての隣人達。

放たれる火、肌を這う熱。


何が起きているのか分からなかった。

ただ此処にいては危ないと思った。

私は弟の手を掴むと、家を飛び出した。


村の遊び場、その広間で、私は磔の父を見た。


――殺される。


その夜の闇に、

幼い彼女が、聡い少女が、悟るには早すぎる現実が、

多分に潜んでいた。


武器を手に、姉弟を追う村民達。


―逃がしてはならぬ

―裏切る気だ

―禍根を断て

―恩を忘れたのか

―殺せ

―殺せ

―殺せ


弟の手を取り、必死に駆ける姉。


ふと、握り繋ぐ手の重みが消えた。

振り返れば、縋る様な目が、私を貫いた。


立ち止まる時間はなかった。

農具が、幼い身体を貫く残響を耳に、彼女は山の中へと姿を消した。


少女は山奥の開けた草地で、幾日も泣き続けた。

彼女は唯ひたすらに謝り続けた。


やがて彼女の涙は、泉を作った。

その美しくも哀しい泣き声に、幾人もの少年が魅せられた。

彼等のうちに、戻ってきた者は居ない。


年末年始にかけて多忙の為、次話投稿が遅れそうです。


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