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Rebellion of Luraunt  作者: RY
1/18

第0話

初投稿作品です。

誤字脱字が多々見られる可能性があり、

また展開も稚拙な場合があります。


それでも読んで下さるという方に、少しでも楽しんで頂ければ幸いです。


――振り上げられた鋼鉄の剣、朝日を浴びた其れは黄金の剣に煌いて見えた。



 大陸南東に浮かぶ島、ガレント島。


帝王ガーラント・バルパルスから帝國貴族キャロル・ダルダント候に与えられた領土の一部である。

帝國無き今、この島はダルダント家の下、実効支配が続いている。元はどの国にも属さない南西の海洋都市国家群の一つであった。帝國の侵略戦争に敗北し、帝國暦212年に帝國領に組み込まれ、224年に戦時貢献の褒美として当時の家長キャロル・ダルダント候に下り、今に至る。


島民の大部分は、島に古くから住まうギノア人と言われる民族。右目の眉の上から一本の角が頭部をなぞる様に伸びるのが特徴。古くは魔を先祖に持つとされ、身体能力が高く、また潜在魔力値も高い。亜人と属され、差別に苦しんだ歴史を持つ民族でもある。


 そんな彼等だからこそ、帝國の支配から今に至る半世紀もの年月は決して楽なものでは無かった。大陸からやってきたダルダント家の分家、グリタリア家が島を支配する様になって、ギノア人の苦慮の日々が続いた。鉱山資源の豊富なガレント島において、ギノア人の男達は鉱山夫として昼も夜も働かされ、女はその美貌の良い者から大陸に連れられていった。ギノア人の象徴でもある、右の一本角は一人残らず切断され、大陸に輸出された。

そんな折に帝王崩御の報せを受け、帝國版図の不穏な空気を感じた彼等は、乱世の動きに乗じて立ち上がったのだった。





――ザッ、ザッ、ザッ、ザッ

軍靴の音が鳴り響く。貴族が抱える私兵特有の規則正しさを奏でている。

彼等は支給された白銀製のフルプレートに身を包み、接近戦において脅威の殲滅力、そして生存力を誇る。

「……投擲準備」

バンダナを額に巻いた男が静かに呟いた。

僕は手の平サイズの麻袋に、引火性の高い魔虫の粉を混ぜると口紐を固く結んだ。

「投擲!」

男の号令の下、塹壕に並ぶ皆が一斉に小さな麻袋を投げた。暫くして、轟音が鳴り響いた。

「突撃!」

二の句を告げる様にバンダナの男が言う。

皆が雄叫びを上げて、青銅の剣を手に握り締めて、壕から飛び出していく。

僕の身体は竦み上がった。

男と目が合った。

「何をしている!突撃だ!」

僕は慌てて、青銅の剣を手に取り、皆の後を追った。

金属と金属が激しく衝突し、その衝撃音が耳に残響する。

砂塵が舞い、鮮血が飛ぶ。

恐れと怒りが綯い交ぜになった様な複雑な感情が身体を巡り、震えた。

飛び交う生と死。嘗てない程、克明に視界が晴れていた。


――これが戦場…


惚けた僕はさぞかし間抜けに映っただろう。

白銀の甲冑、そのフルプレートの隙間から覗く視線が僕と合った。

「…っ」

叫びたくとも声は出なかった。

白銀の甲冑が迫る。その一歩一歩が、永遠を刻むかの様。

「嗚呼……姉さん…」

自然と呟いた最後の家族。


――ごめんなさい、姉さん。僕は…


凄まじい衝撃で身体がよろける。迫る鋼鉄の剣に、運よく持っていた青銅の剣が当たっていた。

数歩後ずさりして右手を見れば、何時構えたかも定かでない青銅の剣は、途中で折れてしまっていた。

甲冑の隙間から覗く両の目に、僕は凄まじい悪意を感じた。


――殺される


そう思った。

甲冑の兵は再び剣を掲げ、それを振り下ろした。

その剣の横腹を叩く青銅の剣。その持ち主は僕の幼馴染でもあるヴァズの物だ。

「ロラン、平気か?」

「…う、うん」

辛うじて答える。

「鋼鉄の剣に真正面から戦えば、此方の剣が折れるだけだ。敵の剣は基本避けろ。どうしても撃ち合う時は剣の腹を叩け」

そう言うと、ヴァズは腰に差してあったもう一振りの剣を僕に渡した。


白銀の甲冑に身を包む敵。対しで僕等は薄い作業服。彼我の防御力は圧倒的だ。一撃喰らえば終りのデスゲーム。


「お前は左、俺は右だ!」

ヴァズに蹴飛ばされる形で左に飛び出す、僕は蹌踉めく様に敵の一撃を躱した。

乾いた唇に血の味が滲む。金属音と共にヴァズの声が届いた。

「今だ!ロラン、殺れ!!」

見ればヴァズの剣が敵兵の篭手を叩いている。


敵は蹌踉めきながらも剣を身体に引き寄せ―――


――甲冑の隙間、その奥底に伸びだ首筋が見えた。


僕に幼馴染が居る様に、きっとこの人にも友達が居る。

僕に姉さんが居る様に、きっとこの人にも家族が居る。


「殺れぇぇぇぇッッ」

ヴァズの雄叫びに僕の身体は反射的に動いた。


――ずぶり


手元に響く生々しい感触。決して斬れ味の良い剣では無い。蒼みを帯びた青銅の剣は、白銀の甲冑の隙間を抜け、皮膚を裂き、肉を絶ち、骨を砕いた。

敵兵が呻き、膝を着く。首から噴水の様に鮮血を流し、眩しい程の赤で白い鎧を染めていく。

甲冑の隙間から覗くその瞳は、純真無垢な子供の様。迫りくる何かに酷く脅えていた。


「モタモタするな、ロラン!荷馬車を奪ったらしい。目的は済ました。ずらかるぞ!」

ヴァズに手を引かれ、僕は走り出した。

脳裏には、鮮血に染まった白銀の甲冑。敵兵の揺れる瞳が何時までも離れなかった。



拠点に戻ると、僕に駆け寄る人の影があった。

「…ロラン!」

漆黒の長髪を後ろで一つに纏め、翡翠色の両眼を持つ。右目の眉上からは純白の一本角が頭部を沿うように伸びる。切断を免れた数少ないギノア人の一人だ。

「姉さん…」

僕は姉さんの姿を認めると強張った身体から力が抜けるのを感じた。

「ロラン!嗚呼…こんなに血を浴びて。大丈夫?怪我は無い?痛む場所は?ヤダ、唇から血が出ているわ!」

姉さんの過保護ぶりはちょっとした此処の名物になっている。

何時もなら嫌がる姉さんの過保護ぶりも、今日ばかりは僕に安堵を与えてくれた。


先の戦いが、僕にとって初めての戦場だった。

幾人もの同胞が先の戦いを初戦とした。

今此処に姿の見えない者も居る。

決して珍しい事では無い。

特別な戦いでも無い。

何時もの様に、僕達ガレント解放戦線はグリタリア家の私兵団の兵站輸送部隊を襲撃した。


帝王崩御から至る大陸情勢不安に乗じて、此処ガレント島は戦乱の時に突入した。

先住民族であるギノア人と、グリタリア家率いる大陸人との闘争。

島の大部分は未だグリタリア家の支配にある。

僕等解放戦線の勢力図は島の最南端に位置する港町リューゲンを中心に僅かだ。

此処では大陸から届く貿易品や船の管理・保管・輸送などが盛んで、鉱山行きを免れた人が多く、それが解放戦線の拠点を構えられる理由の一つにもなっている。

僕等も倉庫内の整理・管理に雇われ普段はその仕事に従事する。

島の要所の一つでもあるこの町は、グリタリア家の監視もまた強く、レジスタンス活動は極秘裏に行われる。

その為レジスタンスのトップがグレンという人であること、ヴァズや姉さんを含む数十人のメンバーの顔名前、その他少しの知識しか持ち合わせていない。


しかし各街にレジスタンスの勢力は隠れ潜んでおり、潜在的勢力は蓋を開いて見なければ解らない。

港町リューゲンも表向きはグリタリア家に隷属しているのだから。


「姉さん、僕は平気だよ」

尚も僕の身体に傷がないか調べようとする姉さんに言う。

「それならいいけど…もし万が一…」

姉さんは心配げに僕を見る。僕の姉さんはヒーラーの知識を持つ。鉱山に駆り出される以前、父は神父であった。その手解きを受けた姉さんは回復魔法を主に、補助魔法などを扱うことが出来る。

今やレジスタンスには欠かせない人物だ。


僕は服を脱がせて身体を確認しようとする姉さんを置いて、今日の戦果を振り分ける一群に近付いた。

「おう、ロランか」

ヴァズが僕に気付くと、荷馬車から麻袋を投げてきた。中味を確認し振り分けろということだ。

「初戦を生き延びた兵は、この先も生き残る」

ヴァズは僕よりも一週間速く戦場デビューを果たした。僕も彼と同時の訓練生卒業を望んだが、姉さんの猛反発に合い遅れてしまったのだ。

ヴァズに先輩風を吹かれるのは癪だが、彼の戦場でのヴァイタリティはどうも僕より高いらしい。

「あんまり気にするなよ。初戦は俺もあんな感じだった。身が竦んで動けなかった。軽い恐慌状態さ」

気を使ったのか、ヴァズがそんなことを言ってきた。

「次はあんな醜態は見せないよ」

僕はそう言うと袋の口紐を解き、中を覗き込む。カシューナッツの薫りが鼻をついた。


何かありましたら遠慮なくご指摘下さい。

また感想・意見なども大歓迎です。


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