ラブレターはほどほどに6
「具体的には何をすれば?」
諦めて話を進める。
こうしている間にもラブレターが量産されているかもしれないし。
「まあ世間的にカップルだと思われるようなことでもしたらどうだ」
友人は投げやりだった。
カップル…。どういう感じだ。
僕そういうの避けてきたから今そんな提案されても困るんだよな。
「……事件が終わったら?」
「別れればいいんじゃないかしら。大丈夫、コーレアさんには被害がないようにしておくから」
そこのあたりは良く分からないのでまあ任せるとして。
「……僕には?」
「最低ドクズ野郎の烙印をつけておくから安心して」
「どこに安心できる要素が!あるん!だ!よ!」
僕は人助けで自分の人生を壊すほどマゾじゃないんだぞ!
やれやれと友人は僕の肩を叩いた、
「こういう役回りじゃないか、お前は」
ぶん殴るぞ。
とにもかくにも、放課後カップル作戦スタートである。
まずはマイルドに校内。
「……」
「……」
コーレアさんと僕は無言で並んで廊下を歩く。
手は繋がないし、距離もある。
最初からハードルあげたくないからまずここから初めては見たけど、これじゃラブレターの犯人も反応しにくいんじゃないかな。
むしろ何か二人で用事済ませているって言ったほうがしっくりくる。
反対側から来た生徒はなにか恐ろしいものを見たといった顔で避けていく。
そんなに珍しい取り合わせだろうか。
「…あの、顔が怖いですよ」
「顔?」
「ひとりふたり殺してきましたみたいな顔してます…」
「そんな顔をしていたのか僕…」
いかんな、緊張していたらしい。
手にしていた携帯が震える。開くとメールが一通。友人だ。
【犯人らしいのは?】
歩いてまだ五分だ馬鹿め。
そもそも放課後、部活動をしている子はいるけど大体は帰ってしまっている。
うーん。明日から始めたほうが良かったかな。
そもそも目星がついていないのにやみくもに歩き回ったって――
どさどさと紙の束が廊下に散らばった。
「えっ」
顔を前に上げれば、特進を担当している国語教師があんぐりと僕らを見ていた。
プリント盛大に散らばっているんだけどそれはいいのか。
……、まさかな。
「お、おう。なんだ、君ら、付き合っていたのか」
明らかに動揺したような質問だった。
「…そう見えますか?」
はた目から見てもそうとは思えない気がするんだけど。
「い、いや、まさか彼氏がいるとは調べ……いや、失礼、大丈夫」
しどろもどろに言い訳しながら教師は去っていった。
あやしさてんこ盛りだった。むしろ罠だろうか。
とりあえず僕は友人に電話をかける。
「多分だけど、犯人見つかったよ…」
『マジか』
今どこにいるのかと問えば下駄箱らしい。
手紙を投函するやつがいないか見張っているとのことだ。
「どうしましょう、このプリント…」
コーレアさんか生真面目に紙を集める。
僕はそれを手伝いながらため息をついた。
「もう放置でいいんじゃないかな…」