ラブレターはほどほどに 2
「でだ」
友人が腕を組んだ。
「ええ」
生徒会副会長が眼鏡に指をやった。
「具体的に何をやったらいいんだろうな、カルネ」
「具体的に何をやったらいいのかしら、ペンサーレ君」
「しばいたろかお前ら」
開始早々投げるな。
囲碁だったら「お願いします」の直後に「負けました」と言ってるようなもんだぞ。
コーレアさんはかわいそうなぐらいに狼狽えていた。
なるほど、弄ってはいけないキャラだな。こいつらの餌食になるタイプだ。
なんとか守ってあげないと。
「だって学年も分からないもの……しぼりようが無いわ」
お手上げ、というようにムトンさんが手をあげる。
確かに。
この千人はいる学校で、特定の個人へ想いを持つ人間を探すのは簡単ではない。
「お前んとこの仕事場、文字の鑑定とかできないのか?」
さらりととんでもないことを友人がいいやがった。
僕は慌てて友人の胸ぐらを掴み引き寄せ小言で注意する。
「僕がバイトしてんの学校側に知られたらヤバイんだって!」
「でもさぁ、この子がペラペラ喋るとは思えないぜ」
「でもほら、『うわぁわたしが頼んだ人校則違反してたんだ死ねばいいのに』とか思われたくない」
「変なところでネガティブだなお前は……」
最悪なパターンを想像しておけば大抵は精神的に負担が減る。
僕が17年生きて学んだことだ。うん、なに学んできてるんだろうね。
なんというか、僕は打たれ弱いから他人からの評価がそれなりに怖い。
だから必要以上に凹まないための予防策なのだ。
まあ現実にそっくりそのまま同じこと言われたら泣きそうだけど。
「ここだけの秘密だけど、ペンサーレ君、探偵のバイトしてるのよ」
「え」
「副会長、貴様ァァァァァァァッ!!」
あっさり人を売りやがっただと!
勢いよく立ち上がったために椅子が後ろに倒れる。
周りが白い目で見てきているが気になんかしてられない。
「あら、小声だからセーフよ。セーフ」
野球の審判がするような両手を横に広げる動作をするムトンさん。
「アウトだ!」
アウトの動作がわからなかったけどとにかくアウト。僕の平和な学校生活が終わる。
原稿用紙十枚+生活指導なんて嫌だ。
しかも新ルールで学年×十枚だからね。二十枚だからね。死ぬよね。
「……ぺ、ペンサーレ君バイトしてたんですね…」
僕が立ち上がったことに目を白黒させている。
悪いが仕方あるまい。
「お願い、黙ってて!僕を生かしたいのなら!」
「は、はい」
「ありがとう」
ほっと一安心したもつかの間。
「コーレアになに詰め寄ってンじゃしばくぞオラァッ!!」
怒声が響いたかと思うと、僕の顔面にハードカバーの本がごっつんこした。
「あべしっ」
そのまま後ろに倒れる。
当たったのが角じゃなくて良かったなんて思いながら意識がブラックアウトした。スイーツ。