青と赤の救出作戦!? 13
「国の犬がああぁぁぁああああああ!!」
ドラマぐらいでしか聞かない台詞を彼は叫んだ。
アスマルトさんはそれを受けて「オレは国のじゃなくマゼンタのだ」とか口走ってたけどもうツッコミどころが多すぎて状況に追い付かないから放置しておく。
すいっと僕から狙いをそらし、まっすぐに銃口をシスコ…アスマルトさんに向ける。
がん鉄を下げ、引金に指を伸ばす。左手もきちんと添えた。
「うるらぁぁあぁぁぁ!!」
無駄に巻き舌で、気合いを入れるように叫び。
そして、引金は引かれた。
「――アスマルトさん!!」
美味しいところを全て持っていったのだからそりゃなにかしらあるとは思っていたが。
まさか。
まさか撃たれるだなんて―――
「ふざけんな。勝手に終わりにするなよ」
「……ちょっとノリで」
しかめ面の表情のままぴんぴんとしている。
ちなみに彼は黒い海賊みたいな眼帯をしているために表情と相まってマフィアの人間みたいだ。
「……くそっ!」
男の人は銃を床に投げつけた。
もったいない。
「やっぱり入れておけば良かった!」
「後悔先に立たず、ですね」
適当に反応する。
「…え、どういうことだ?にく」
一番びびっていたであろう小学生組を代表してシアンちゃんがもっともな質問をする。
…トラウマにならないといいんだけど。
「簡単だよ」
別に、身体能力がずば抜けてるとか実は幽霊だったとかではなく。
「ただ単純に、弾がこめられていなかっただけ」
それだけ。
だから僕は平常心を保っていられた。
弾がこめられていたら?
平常心欠いてその上死んでるけど?だって僕だし
「オレは賭けだったけどな。カルネ」
「はい」
「お前のほうは『弾がない』と判断していたのか?」
「ええ、まあ」
「ふぅん。なんで」
なんでと言われても。
聞いてどうするんだろうとは思ったけど、ここはおとなしく話す。
「…まず真っ先に、こいつらが『邪魔者』を消さないのはおかしいですからね」
計画の邪魔。
それは僕や、シアンちゃんやマゼンタちゃんのこと。
イレギュラーの存在。
「マゼンタが、シアンが、お前が撃たれなかった」コツコツと男のそばによりながら静かにアスマルトさんは語る。
「だから無いと判断した」
「それも、アスマルトさん同様に賭けでしたけどね」
「…ここまで弾を使わなかったのは無駄遣いしないためとは、思わなかったのか?」
「思いました」
だけど。
銃よりも自分の手を使ってシアンちゃんを殺しかけた。
つまり、あまり銃への意識ないし信用はないということ。
……怒りのあまり失念していただけなのもあったりして。
――ここまで一か八かの予想。というか期待。
それが外れていたら僕やアスマルトさんはお空の人になっていたわけであって。
非常に危険な綱渡りでした。
「はぁ……ま、危険なとこに突っ込むのはお互い様か。人のこと言えないな」
アスマルトさんがジリジリと後退していた男の人の襟首を掴んだ。
「やめっ」
「ちくしょったれがァァァァァァァァァァ!!!」
アスマルトさんは溜め込んでいた何かを吐くように、綺麗な背負い投げをして犯人を床に叩き伏せた。
機動隊が来たとき、すでにシアンちゃん、マゼンタちゃん、僕はアスマルトさんに正座で説教を食らっていた。
長すぎるなこの章