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青と赤の救出作成!? 7

【シアン目線】

にくほど私は無駄話はあまり好まない。

何事もストレートに言ってくれた方がいいというのが私の持論だ。

でもまあ、ちょっとぐらいは無駄話もいいかもしれない。というか無駄話でもしないと余裕が保てない。


よく公園でブランコを漕いでいるスーツのおじさんがいるのだが、その人の口ぐせは「積んだなぁ…人生積んだ…」だ。

いい大人が陰気な事を言いつつブランコを占領しているんだから遊び盛りの子供――つまり私たちにとっては迷惑この上ない。

特にブランコは人気な遊具のひとつなので、早く退いてくれないかなと遠目から願っている日々だ。


さすがにハートブレイカー(相手の精神をつつくからこう名がついたらしい)という異名を持つマゼンタも

『公園の木で首にヒモ通してブランコされても困るから』

と言って静観するに留めるという、情けないのか凄いのか良く分からない存在だ。


ずいぶんと話が長くなった。

話の風呂敷をうまく畳めないのはにくと一緒らしい。何が言いたいかというと、おじさんの『積んだ』の意味が今非常によく理解できたということだ。


積んだ。


いや、まだ積んだとは言えないが。

積んだ一歩前――か。



三階に行ったまでは良かった。

しかし、運悪くエンカウントしてしまったのだ。

今度は顔の半分を刺青しているお兄さんに。みんな将来のこと考えろといってやりたくなる。


そして当然追いかけられた。

マゼンタの機転で私の懐中電灯を足元に投げ転倒(点灯だけに)させている間に四階へ駆け登り、

たまたま開いていた近くの部屋に飛び込んだ。

今は押し入れの上の段で二人体育座り中。

薄い襖を通して何人かの男の怒鳴り声が聞こえる。おお怖い。

これをきっかけにアンジュたちはひどい目にあってないだろうか。大丈夫かな。

今は自分の心配をしたほうが良さげだが。

なんというんだっけ。

袋のネズミ、だったか。

うん、それだ。

「……これは捕まりかねないな」

「そうだね…そうなったらカッコ悪いことこの上ないね」

マリオがクッパに捕まるようなものだ。お前何しに来たんだよ!みたいな。


足音が近づいてくる。ホラー映画でありがちなものだが、

それに『現実』というスパイスがかかってるから冷や汗が半端ない。

「あ」

「ん?」

マゼンタがふいに上を向き、ポケットからLEDライトを取り出した。

そして天井を照らす。

板が外れかかった天井が見えた。

「活路はあるよ、まだ」

眼帯で顔の半分ほどが覆われているが、それでも確かにマゼンタが微笑んだことは分かった。

「なる、あれを上ればここから出れそうだな」

ジャンプすれば穴に手が届く。

「できる?」

「あのぐらいはよゆー。マゼンタは?」

「……」

困ったように笑った。

上れないのか。


というわけで。


「ふんぎぎぎぎ」

踏み台さえあれば良かったのだが時間がないために私が踏み台となった。

肩車して、マゼンタを上に押しやる。

「あ、広い」

広い空間があるらしい。

なんとかマゼンタがよじ登ったのを見届け、私も穴に向かってジャンプした。

…腕の筋肉がキツイ。

マゼンタが私の腕を引っ張り、

――ここの部屋のドアが開いた音がした。

(やばっやばやばやば)

(はやくはやく!シアン!)

どうにかこうにかあがれた。


ゆっくりなんかできるわけもなく、慌てて外れていた板を元に戻した時、襖が開いた。

「いねぇぞ?」

「見間違いじゃないすか?ヤクのやりすぎでしょう」

「んなわけねーよクソ」

がやがやがやと声がした後に去っていく音。

安全だと確認して、ようやく私たちは安堵の息を吐いた。



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