青と赤の救出作戦!? 4
彼女たちに追い付いたのは、問題の廃虚付近だった。
「あぁ、どこのゾンビかと思ったらカルネのお兄さんでしたか」
「マゼンタちゃんって実は僕のこと嫌いだったりしない?」
「あはは、そんなわけないでしょう」
目が笑っていない。
シアンちゃんはというと、元は住んでいた住人の車が出入りしていたであろう門の前でじっと建造物を見上げていた。
細い肩から下げているショルダーバッグにはあのナイフが入っているのだろうか。
「……どうしても行くの?」
「うん」
シアンちゃんが赤と青の瞳を僕に向ける。
「一応、お兄ちゃんには連絡しました。問題はいつ動くかですが」
なんだかんだでアスマルトさんに電話したのか。
単純に通報すればいいのではとも思ったが、小学生の通報をイタズラとして受けてくれない場合もある。多分マゼンタちゃんはそれを見越して直接刑事の兄に連絡したのだろう。
あとはアスマルトさんがマゼンタちゃんを信じるか、だけど。
それは大丈夫そうだな。あの人シスコンだし。
シアンちゃんはツインテールをほどいて後ろで一つにまとめた。
このバージョンのシアンちゃんを始めて見た。
「ねえ」
そんな彼女に僕は疑問を口にする。
「そんなに友達が大事?」
「……」
何を言うでもなく、シアンちゃんは無言で僕を観察する。
隣でマゼンタちゃんは静かに事の成り行きを見守っている。
「気を悪くしたならごめん。でも、危険を承知で友達を助けにいく価値はあるのかなって」
「カルネのお兄さんは友達がいないのですか?」
うぐっ。痛いとこつかれたな。
「いるよ」少ないが。
「にくは友達が大事じゃないのか?」
「…大事だよ」
そう思う。
僕が中学生の頃、初恋の先輩が死んで以来どうにも自分の感情が掴めなくなった。
追い討ちであの事件だ。
「じゃあ、“大事”の位置が違うんでしょうね。あなたとわたしたちじゃ」
どこか冷ややかとも取れる笑みだった。
それにしてもベクトルって。高校で出てくる単語だぜ。
「あのな、にく」
いつの間にかシアンちゃんは門の内側に立っていた。
「私たちには動くことに『理由』なんていらないぞ」
「それに、わたしたち」
危なっかしげにフェンスから向こう側へ降りたマゼンタちゃん。
「「小学生だから難しいこと分かんなーい」」
きゃはっと無邪気に笑いあって、その場を走り去った。
残されたのは僕一人。
「頭固いって意味かなぁ…」
呟いて、門に足をかけてみる。時間はかかるけど、入れそうだ。
やっぱり短い。すいません。
次回はシアン目線です