青と赤の救出作戦!? 3
なんか短い
「…って、なんだか行くことを許可したみたいな流れだけど、行かせないわよ?」
姉さんがにこやかに言った。
「ちッ」
シアンちゃんがとっても黒い顔をしていたけど僕は見なかったことにした。
「だってそうじゃない。向かう先は危険だと分かっていて送る大人はどこにいるのよ」
「でも、向かう先は危険だと分かっていて突っ走った人がここにいるぞ?」
僕か。
「突っ走ったあげくに生死をさ迷って入院して留年しかけたのよ?」
僕だな。
半年前のとある事件で脇腹刺されて三日ほど昏睡していたそうだ。
現代医療の凄さとこの身の丈夫さに乾杯。
小学生二人は先例(僕)をちらっと見て少し苦い顔をした。
「にくは…なぁ。なんていうのか…」
「カルネのお兄さん、モヤシですしね…」
すごく言いにくそうにすごく酷いことを言われていないか?とくにマゼンタちゃんに。
「なんだい君ら、僕は判断材料にならないって意味かい」
「そういうことになるな、モヤシ」
シュヴァインが僅かに口端をあげていた。くそ、こいつまで便乗しやがって。
それにモヤシって散々な言われようだなオイ。
確かに肌は白いけどこれは数ヶ月病院に引きこもっていたからであって。ついでに痩せてしまったし筋力も落ちた。
…あれっ。僕、モヤシって言われても仕方がないんじゃないかな。
「とにかく。そんな無茶なことさせません」
腕組みをして姉さんが宣言をした。
とてもお母さんっぽい。
破壊神コンビは互いに目をあわせて困ったというように小さく肩をすくめた。
なんだか、いたずらがバレた子みたいだ。
「ジュース、ごちそうさまでした」
マゼンタちゃんはことりとコップを置いた瞬間、
「また今度な!」
シアンちゃんが一息でドアの前まで飛んで、開けたと思うと
「ではまた!」
マゼンタちゃんがその後ろをついて走り、
「「ごきげんよう!」」
ばたばたばたと階段を駆け降りていった。
つまるところ、逃げた。
見事に息あってたなぁとどうでもいいことを考える。
「ぬぬぬ…やられたわ」
姉さんが黒い顔をしていた。というか悪役そのものな顔をしていた。
僕は見なかったことにする。
「ぴちぴちに若い小学生を追いかけるのは先輩にはもう辛ぁいたただだだ!!」
「ちょっとシュヴァインくぅん?それどういうことかしらぁ?」
ヘッドロックをかけている姉さん達は放置するとして、二人が消え去ったドアを眺めて思考する。
喧嘩ごとをするとき、シアンちゃんは自分から退かない。
攻めて攻めて、攻めまくるタイプだ。
攻撃は最大の防御とは良くいうけど今回は相手が何を持っているかによって彼女の勝敗が決まる。
「ぼくまるで出番ないんだけど」
「ま、所長ですしね」
「ライスくんそれ酷くない!?」
……。ちょっと違う会話を聞いていた。戻ろう。
シアンちゃんは接近戦を得意とする。
だから、もしも相手が飛び道具で応戦してきたなら、勝ち目は0だ。
誘拐犯も拳銃をひとつぐらいは持ってるだろうし。予想で、なんとなく。
「僕も、ちょっと様子を見に行くよ」
かろうじて皆に聴こえるぐらいの音程で宣言して、そっと事務所から立ち去る。
ぐぬぬ、松葉杖はやはりめんどくさい。