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青と赤の救出作戦!? 1

キブスと松葉杖の生活に幾分か慣れてきた五月最終日。

僕は『新商品入荷!』とポップが貼られた公園の側にある自販機の前で何を買うかしばらく悩んでいた。

緑茶、サイダー、オレンジ、おしるこ。最後の季節外れだろ。

久々に炭酸が欲しかったのでサイダーにした。

爪をひっかけてプルトックをあける。あけた後にベンチに行ってからあければ良かったと後悔する。

松葉杖なので自由に動き回れないのだ。杖を突いてる拍子に中身が飛び出たら悲しいよな。

「……静かだ」

ちらりと公園を見る。

普段なら子供が騒いでいるのに、今はひっそりと黙っていた。


昨日、大きめの誘拐事件が発生した。

小学生で防災訓練だかなんだかで組んでいたある登校班の八名が忽然といなくなってしまったのだ。

それから数時間後、ビデオレター(CDだったようだが)が警察署に届いたという。

内容はその八名の小学生について。

それまで捜しまわっていた保護者と警察を嘲笑うように、犯人は宣言した。


『金と車を用意しろ』

『下手なことをすれば皆殺しにする』


まあいかにも分かりやすい、金目当ての誘拐。

しかし、手口はあまりにも堂々としているくせに未だ手かがりを掴めていないのだと言う。

犯人も、小学生が捕らえられている場所も。


――ここまでが僕が一日で知った情報。

広報放送や新聞、FMラジオなどで意識せずともかなりの情報を収集できた。

知ってどうするんだ、という話だが。


七、八ヶ月ほど前にあった事件のこともあり公園だけでなく町全体が不気味にしんとしている。でもこれじゃあ逆にまた誘拐事件が起きる可能性が――


「いやぁーーっ!!」


「!?」

確かにいま、誰かが叫んでいたよな?

残っていたサイダーを流し込み、炭酸に喉をやられ涙目になりながらあたりを見回す。

僕の住んでいるところはマンションや駐車場はともかく、田んぼも広がっているという田舎町。

本気で騒がないと助けはあまり望めない。ただのはしゃぎ声だろうと勘違いされたり、かかわり合いになりたくない人がいるから尚更だ。

これが最近よく言われる遠くなった近所付き合い云々か…。

ちなみに今回の誘拐事件は近隣住民は気づかなかったというから鮮やかに誘拐したのかも。



ではなく。話を反らしている場合じゃない。

そうこうしているうちに悲鳴の主が浚われていたらどうする。

不自由な身体に舌打ちしながらどこから声が聞こえたか方向をまず考えて――


ガサッと公園の低い木が植えてあるところからシュヴァインが現れた。

両手には少女二人を抱えて。

「………」

「よぉ、カルネ」

絶句する僕にシュヴァインはいつもの気だるさが混じったポーカーフェイスを向ける。

「……ええと…お前、誘拐犯だったのか…」

「ちげーよ」

誘拐犯の言葉は一旦聞かないことにして、脇腹に手を回され空を飛ぶ感じの格好に捕獲されているふて腐れた少女二人を見る。

「シアンちゃんにマゼンタちゃん…なにがあったの?」

「ぶたに邪魔されたんだ」

赤と青のオッドアイの瞳を持つシアンちゃんがむくれていた。

ぶたとはシュヴァインのことだ。念のためいうと、彼女のつけたニックネームに悪意はない。

「後ろから盗み聞きしたりとか趣味悪いんですよ、シュヴァインのお兄さんは」

右目を包帯とガーゼで覆っているマゼンタちゃんは口を尖らせた。

苦情を浴びるシュヴァインは呆れたように深く息をはく。

「…事務所に行こう。話はそれからだ」

「その前に警察に連絡してからでいい?ここに誘拐犯がいますって」

「ふざけんな」

駄目らしい。



「アンジュがさらわれたんだ」

と、シアンちゃんは神妙な面持ちで訴えた。

「アンジュ?」

ジュースを入れたコップを二人の前に置きながら姉さんは首をかしげる。

「シアンちゃんとマゼンタちゃんの友達だよ」

「へぇ」

「ついでにアンジュ・イエローって名前です」

マゼンタちゃんは礼を言ってからジュースを口に含んだ。

仕草がいちいち大人っぽくて本当に小学生なのかこの子と疑ってしまう。

「それで、シュヴァインは君たちの何を邪魔したの?」

窓の横で壁に寄りかかり腕を組んでいるシュヴァインを横目で盗み見しながら聞いた。

シアンちゃんとマゼンタちゃんは同時に答えた。


「「犯人のアジトへの侵入」」



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