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副会長と僕と窃盗事件 8

「そんなことがあったわけだよ」


翌日の学校、昼休み。

生徒会室で書類整理を行っていたムトンさんに昨日のことを話した。

少年のこと、不良君のことを一通り。マゼンタちゃんのことは言わなかったけど。

同好会発足理由書なるものを手に彼女は難しそうな顔をした。

「不良ねぇ……この学校、わんさかいるし。ちょっと先生に聞いてみるわ」

「でもその不良君だけ捕まえても意味はないと思うんだ」

「どういうこと?」

「昨日考えたことなんだけどね――」

僕が考えているのは、不良君は直接窃盗には関わっていないということだ。

窃盗も売却も。

裏方で指示――というよりするように脅しているんじゃないかという予想した。

…ムトンさんも僕を脅しているようなものだからあっちもこっちも同じようなものかもしれない。

しかも素直に聞き入れてしまう僕の流されやすさよ。


とにかく、誰かを駒に仕立てあげ金品を盗ませて売り、その売上金を巻き上げる。

なかなか上手い手だ。

当然その裏方は売ったという証拠が残らないために疑われず、枕を高くして眠れる。

駒に裏切られない限りは、だけど。

そこまで頭がいっていない只の馬鹿なのか、それともよほどの弱味を握っているのか――。

どちらにしろ犯罪をさせているわけだから早めの解決をしなくてはいけない。

「じゃあその、駒にされているような人から証拠を聞き出さないと駄目ってこと?」

「だね。何らかの弱味を握られてるかもだから、素直には話してくれないだろうけど」

「世の中には力ずくで聞き出すという便利な手段があるわよ」

笑顔ではあったが完全に目が据わっていた。

誰だこの人を生徒会に入れたやつ。

「…それは生徒会のいうことじゃないよね?」

一応生徒会は生徒の代弁者という肩書き持ってるんだから。

代弁者が暴力沙汰とかどういうことやねん。

「冗談よ」

だから目が据わっているんだってば。

ムトンさんも生徒達の聞き込みに行くのかどうかは分からないけど、彼女の質問(いや、尋問か?それとも拷問?)を答える羽目になった人に早めの黙祷をあげておいた。

そこまで――特定の人物に聞き込みをすることの――権限を生徒会が持っているかはかなり疑問なところだけど。

昼休みの終了をつげるチャイムがなったので僕は生徒会室から教室へ向かった。



「カルネー、俺の雑誌しらね?」

教室に行くと友人が僕へ困ったように聞いてきた。

次の授業担当の先生は五分ほど遅れてくる人なのでまだ教室はざわついている。

「いや、知らないよ?」

まさか盗難か。しかし雑誌なんか盗んだところでどうにもならんだろう。

「どんなやつ?」

「男と男が筋肉のぶつかりあいしているやつ…」

「普通にプロレスっていえよ」

「ベッドの上で」

「お願いだからそんなもん学校に持ってくるなよ!家ならいいけどさぁ!」

雑誌はロッカーの上に置いてあった。

見る?と聞かれたが僕は拒否をしておいた。なんか、元の世界には戻れない気がして。



そして放課後。

結局、あの少年にも不良君にも会えなかった。

不良君は自主休校しているとして、少年は…確か一年だったからもともと会わないのか。

ちょっと話聞いてみたいんだけど駄目かなぁ。また逃げられるかな。

それか不良君が裏方、少年が駒だとすると、なんらかの圧力がかけられてそうな予感がする。

でも窃盗事件なんかには縁なんてなく、本当に僕が怖いだけで逃げ出したのなら笑えるよな。

「そしたら今度は僕が逃げる番だな…顔真っ赤にしながら」

そんなことを考えながら、比較的人の昇降が少ない階段を降りていく。

今日こそ中古屋さんで話を聞こう。

「ご、ごめんなさい……!」

だから、その言葉は突然のことだった。

今まで考えていたから意識に置いていなかったのかなんなのか、足音と共に現れた気配と、絞り出したような謝罪が後ろから聞こえた。

もしかして、昨日聞いたあの声だろうか。

そう思うと同時に背中を強く押された。

未来へと送り出されたわけではない。

物理的に、へ(・)。


全てがスローモーションにでもかけたようにゆっくりと景色が廻る。






あ。






今、




落ちてるな、僕。





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