黒猫+僕+探偵=事件 2
僕の住むアパートから三十分ほど歩くと古めのビルが見えてくる。
そこの二階が探偵事務所だ。
朝だというのに薄暗い階段を上がり、これまた古ぼけたドアを開けた。
「おはようございます」
「おはよう」
三人の視線が僕らに集まった。
「やあ、おはよう」
この四十代前半ぐらいの男性がここの所長。
本当の名前は知らないので所長としか呼びようがない。
「わーいカルネ君だ!」
彼女はポワソン・ペンサーレ。
ブラコン気味の僕の姉。もちろん血は繋がっている。
「おはよう二人とも」
こちらが姉さんの同僚、ライスさん。
受付・カウンセリング担当のさばさばしたお姉さんだ。
あと一人は…出掛けているのか。
「お久しぶりシアンちゃん。ここに来るなんて珍しいわね」
姉さんが少しだけ不思議そうな顔をした。
シアンちゃんが最後にここに顔を出したのは一ヶ月ぐらい前だもんな。
「暇だったんでな」
「溜まり場かここは…」
ライスさんが小さくツッコミを入れた。
まあ、分からんでもない。
所長が側に置いてあったファイルから紙を引き出す。
「ちょうど良いところに来たね。仕事があるんだ」
「仕事…入ったんですか?」
「世界でもおわるんじゃないか…」
「それはひどくない!?」
所長がショックを受けていた。
だって、この事務所最高二週間も仕事入らなかったことあるし。
仕事に関して姉さん達より遥かに常識人のライスさんが頭を抱えていたのを覚えている。
姉さんは『なければないでいいじゃない』とか言っちゃう人だからな。さぞかしライスさんの頭痛はひどかったことだろう。
「猫探しをして貰いたいんだ」
「猫ですか」
「なるほど」
手渡された写真には赤い首輪をつけた黒猫が写っていた。
名前はヤマトか。猫は名前呼んでも来ないけど一応覚えておく。
見つかった時に連絡できるよう飼い主の電話番号を携帯に登録した。
「ポワソン君達はこの後浮気調査が入っているからできないんだ」
「えっ、そんなに仕事入りましたか」
「そう。わたしもびっくりした」
「ライス君まで何を言っているんだい!?」
明日は槍が降るかもしれない。