表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/44

副会長と僕と窃盗事件 6

歩きながらじゃ危ないから、どこか落ち着けるところで貰った資料を読みたいと思った。

候補として、教室か図書室。

教室は…どうだろ。練習中の吹奏楽部とかち合わせたら気まずいだろうな。

だとしたら図書室だな。よし行こう今行こう。



―――――


遺失物届け


5/8 2年、ゲーム機(白)

   2年、ゲーム機(赤)

※どちらも中に入っていたソフトごと無くなっている


5/9 1年、携帯音楽機器シャンパンゴールド

   2年、ゲーム機(赤、ストラップ有)


5/10 2年、携帯音楽機器(水色)

   3年、現金5千円


※5/11朝から鍵をかけ始める。


5/11 無し


5/12 2年、現金

   1年、携帯音楽機器(青、裏にシール有)




――――



プリントには淡々と盗まれたものがリストとしてのっていた。


…想像以上に多い。

ただの遊び目的じゃないな。これは売っている。


先生方もそれに気づかないほど馬鹿ではないから既に中古屋へと聞き込みに行っているかもしれない。

頼まれ(脅され)ている以上、僕も聞き込みにいった方がいいだろう。

一番近い中古屋にちょっと寄ってみるか。




そして中古ゲーム屋。

「……とは言ったものの」

僕の短所は思い付いたらすぐ行動するところなんかじゃなかろうか。それか、考えが浅い。

しかし不思議だよな。

世の中の小説の主人公は『良く考えないで行動→痛い目にあう→しかし成功→しかも成長』という図式になのに、僕は『良く考えないで行動→痛い目にあう→病院→しかも通院』だ。

九割方は自業自得なため誰にも攻められないことなのだが。世の中は不公平だとも思ってしまう。


そんなことを思いながら頭をかきながらチラリとカウンターの方へ視線を走らせる。

何のへんてつもない店員さんが暇そうにしている。

…恥ずかしい話だが、人とコミュニケーションをとることは僕が苦手とする一つだ。

相手の気持ちはおろか自分自身の感情にすら疎いために、何を話せばいいか分からない。

もしかしてこういうスキルがないから大変な目にあうのか?

だとしたらなんてシビアな世界なんだ。

「話術あったらあったでアイツみたいに人を追い込ませちゃうんだろうけどな」

なんとなしに呟くと隣でゲームソフトを見ていた人が僕から一気に離れた。失礼な。

意を決して店員さんに話を聞くことにする。

深呼吸をして、さながら戦場に行く家族持ちお父さんのように堂々と胸をはれるわけない。若干猫背でカウンターへ向かう。

「……あの」「あの」

僕より少し先に、後ろにいた誰かが店員さんに声をかけた。

振り向くと僕の高校と同じ制服をきた、ちょっと不健康気味な少年。

校章の色は、青。一年生か。

「あ、すいません……」おどおどと頭を下げジェスチャーで僕を先にと促す。

二つのカウンターのうち一つは現在休止中で、実質ひとつだけしかカウンターは動いていない。

よって、どちらかは待つことになるということだ。

それにしても、顔色を伺われると少し戸惑うな。そんな悪い顔してるか僕。

「先にいいよ。僕は急ぎじゃないから」

あんまり公に聞ける話ではないしな。

「すいません……」

ぺこぺこと頭を下げながらカウンターへ向かう。


僕は数歩後ろに下がり、辺りを見回した。

側にあったガラスケースにゲーム機が売り物として飾られている。

興味を持ってガラスケースに近寄る。

ふぅん、こういうゲーム機もずいぶんと進化したものだな。僕は家庭用ゲーム機で遊ぶ方だったのでこういう持ち運べるゲーム機は持っていなかった。

…アパートへ引っ越す時に壊したけど。

使わなくなったのもあるけど、思い出が強すぎて。

盗品らしきものはないかなーと僅かな希望を持ってプリントに書かれていたゲーム機の色や形を思い出しつつ見る。

結果は、それらしきものがなかった。

見過ごしの可能性もあるけれど、先生方や警察がここに聞き込みに来ていたとすれば店側も盗品かどうか調べているはずだ。

聞くしかないか。

それにしても遅いな。


「個人を証明できるものを持っていますか?」

「…はい…」

「では、査定を行いますので十分少々お待ちください」――査定?

妙な引っ掛かりを感じたので怪しまれないようにカウンターに置かれているものを覗く。


それは携帯音楽機器。


どくんと心臓が強くなった。ような気がした。

箱にも入っていない。説明書もない。

おどおどした態度。おろおろした態度。

まさか。しかし。いや。でも。


落ち着かなさげに周りをキョロキョロと見る少年。

少年のほうを見ている僕と当然視線はかち合うわけで。

見つめあったまま数秒硬直状態。

ふと我にかえり、とりあえず少年に話しかけるべく歩み寄った。

それだけで彼は目を見開いて怯えた顔をした。…なんだか悪いことをしている気分だ。

「あ……あ…」

「や、何もしないよ?ただね、その音楽機器って――の(・)なのかなって」

「!」

パクパクっと少年は口を金魚みたいに開け閉めしたあとに、身分証明書を引っ付かんで外へ飛び出していった。

「ちょ、ちょっと待って!」


すぐに追いかけに行く辺りが考え浅いんだよなぁと思った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ