黒猫+探偵+僕=事件 後日談
「なんだその包帯」
「いやあははは、階段で転んじゃってさ」
数少ない友人が問いかけてきたので全力でとぼけてみせた。
説明とかめんどくさいんだよね。
それに半年前のこともあり、あまり心配はされたくない。
「階段で?バカだな、バーカ」
「大丈夫の一言ぐらい言えないのかお前は」
前言半撤回。ちょっとは心配しろ。
友人はスマートフォンを少し弄ったあとに僕に画面を見せてきた。
「それよりさ、聞いたか?昨日事件があったそうな」
「へー。どうせ幼女が中年の男性に声をかけられたとかそんなやつだろ」
「ちげーよ」
いや、もう分かるんだけどさ。
画面を見ると、昨日の事件がニュースとなっていた。
中心人物であったヤマトのことは一切書いていない。
ついでに僕らのことも。あ、でも暴行罪とは書いてあるな。
余計なことが起きないよう、関わったことは伏せておくように頼んだのだ。
「可哀想だね」
それしか言えない。
「しかもこれ、驚くことにだな――」
スマホをぺしぺし叩き始める。
時間がかかりそうな気がしたので退屈まぎらわせに辺りを見回す。
めったに起きない殺人事件が身近な所で起きたためか、クラス内はそんな話で持ちきりだった。
そんなもんだ。
当人達以外にとってはエンターテイメントそのもの。劇の上のお芝居ぐらいに現実感がない。
僕はそれを非難しようと思わないし、道理もない。
「犯人は金を狙っていたんだがな、その額は半端じゃねーんだ!」
「ほう?」
「なんと五千万!」
ガッターン。僕は椅子から落ちた。スイーツ(笑)
「カルネ!?動揺しすぎだろうが!」
「な、なんでもないよ…」
僕とシアンちゃんはそんなヤバいものと行動していたのかよ!
そりゃ狙うわな!殺す気で来るよな!
よく死ななかったな僕!そっちにびっくりだわ!
「五千万あったら何に使えばいいんだろう…」
「家一軒は買えるだろうな。膨大すぎてイメージ湧かない」
「だよね」
「始めるぞー」
重いドアを開けて担任が入ってきた。
軽く、短い別れを告げて自分の席に座る。
「不審者が多く目撃されている。なにか情報あったら遠慮なく言ってくれ」
変な人、本当に最近増えたよなあ。
シアンちゃん達は大丈夫だろうか。強いとしても心配だ。
逃げない子だから、尚更。
「あと貴重品が最近頻繁に盗まれているから自己管理はキチンとしろよ」
プリントを配って、担任は次の授業の為にさっさと教室を出ていってしまった。
心を盗まれる人いるのかなとかくだらないことを考えた。ルパンかよ。
前の席からプリントが回ってきたので目を通す。
なんてことはない、授業参観のお知らせ。
授業参観か。
小学生の頃はいつ親が来るかずっとそわそわしていたものだ。六年生になると姉さんが来ることもあった。
あれはかなり恥ずかしいものがある。
「カルネ、初っぱなから移動だから行こうぜ」
「うん」
ええと生物だから、生物室か。
教室から出る前、くしゃりとプリントを丸めてゴミ箱に放り投げた。