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オタク君が好きすぎるギャルの6年目  作者: 有
第一章 キスまで3万文字

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第8話 目黒和也の先輩と友達と。

◇和也◇


「おい、目黒。何スマホ見てニヤニヤしてるんだ?」

 社員食堂で昨日撮った写真を見ながら食事をしていたら、後ろから会社の先輩が声をかけてきた。

 4つ年上の27歳、僕の指導役の先輩でずいぶんお世話になっている。

「か、彼女の写真を見てました」

 ちゃんと萌亜さんには彼女ですと皆に言う許可を取ってある。

「へー、どれ」

 トレーを机の上に置いた伊達先輩は隣に座り僕からスマホを取り上げた。

「ん?誰?」

 僕と萌亜さんがもんじゃ焼きを食べた後に頬を寄せ合い……頬を……文字通り寄せてとった写真だ。

 ……昨日は家に帰ってからほっぺたを洗わずに過ごそうと思ったけれど、頭を洗った時点で無理だった。当然つないだ手も洗わずになど不可能だった。

 伊達先輩の問いに答える。

「だから、彼女です」

「いくら?」

「え?」

「この子、地下アイドル?声優?チェキじゃなくてスマホでも写真撮ってもらえるの?1枚いくら?」

 えーっと。これは、先輩の冗談なのか、本気なのか。

「だから、彼女ですっ!」

 ふぅーんと疑いの目を向ける。……オタクにも種類があるんですよ。僕はアイドルオタでもないし、声優イベントに足を運ぶこともない。インドア派のオタクなんで。

 アウトドア派のオタクのように、やれライブだ、コラボイベントだ、コミケだ、オフ会だと外に出る活動はしていない。

 家でアニメを見て、漫画や小説を読んで、感想をつぶやき、グッズを買い部屋に並べ、プラモを作り、ファンアートを描く、生粋のインドア派だ。

「ふぅーん」

 疑いの目を向けている。まさか、脳内彼女だと思われたのかな?写真はAIじゃないよ。本物の萌亜さんの写真だよ!

「なぁ目黒、この子、紹介してくれないか?」

「え?それ、どういう意味ですか?」

 僕の彼女に会ってみたいっていう意味?

「もちろん、目黒より、俺にしない?って声かけるためだよ」

 さーっと青ざめる。

 萌亜さんは伊達先輩が何と言おうとなびくようなことはないだろう。

 もし、なびいたとしてもNTRではなくて、僕は所詮偽装彼氏。

「ばか、なんて顏してるんだよ、冗談だよ、冗談」

 バンバンと伊達先輩が僕の背中をたたいた。

 冗談?先輩がこんな人をからかうような悪質な冗談を言うなんて?

 と思って顔を向けると、真剣な目で僕を見ている。

「もし、彼女から高いものをねだられたり、お金に困っている言われたら相談しろよ」

 と真面目な声色で言われた。

 うお、これ、僕が完全にかもられてると思われたのでは?

 彼女だとこれっぽっちも信じてもらえてない……。

 冷や汗がだらだらと出てくる。

 だめじゃん。全然だめじゃん。

 これじゃあ、全然偽装彼氏として役立たずじゃん。彼氏だと思われないとか、だめじゃん!

「さ、目黒、午後もがっつり働こうな!」

 食べるのが早い伊達先輩はトレーを片手に、立ち上がって去っていった。

 伊達先輩は、僕が騙されているんじゃないかって心配して冗談のふりして探りを入れたんだろうな。

 スマートに気遣いができ、面倒見がよくて、明るい。しかもオシャレでかっこいい。どこか萌亜さんに似ている。

 きっと、萌亜さんとお似合いなんだろうな。

 うじうじする自分に喝を入れる。また心が高校生の頃の自分に戻っている。

 僕は彼女にふさわしい人になろうと決めた。そのために努力して、いつか告白する。

 そして、そのために今は……。

 偽装彼氏役を全うして彼女との縁が切れないようにしないといけないんだ。

「助けて~亮くぅーんっ!」

 高校からの友達、亮君にSOSのメッセージを送ると、仕事帰りの亮君が僕の部屋に来てくれた。

 あ、ちなみにメッセージを送らなくても1週間に2日くらいは仕事帰りに僕の部屋に寄っている。

 というのも、亮君は美容師なんだけどビフォーアフター動画をyoutubeにアップしている。その動画の編集を僕の部屋でやっているのだ。

 なんせPCに詳しくないため、いつも見ないメッセージがパソコンに表示されるだけでパニックに陥る。慌てて電源を切ってパソコンが壊れること2回。さらにはウイルス感染、フィッシング詐欺……その他諸々……。

 美容師として絶大な人気を誇り、イケメンユーチューバーとして騒がれているけれども、パソコン関係に関しては才能がどうも、無い、見たいで。

 バンっと実家の僕の部屋のドアを勢いよく開いて亮君が入ってきた。

 時計の針は8時半。店の営業が終わってから超特急で駆けつけてくれたようだ。

「何、何、何、かずが助けてなんて、何だってするよ!いつも世話になってるし!お礼もさせてくれないし!」

「あ、かっこいいね。髪の毛の色を変えたんだ。さすが亮くん。似合ってる」

「そうなんだ、かずはいつもすぐに気が付いてくれるから嬉しいなぁ。毛先だけブリーチ強めのミルクティアッシュで、このグラデーションっぽい色合いをって、ちがーう、そういって、話をはぐらかしてお礼させてくれないんだから」

「お礼って、別に……と、友達が困っているのを助けてるだけだし……」

 友達だよ、友達。オタクの僕と、カリスマ美容師でユーチューバーとしても脚光を浴びている亮君。まったく縁がなさそうなのに高校からずっと仲良くしてくれてる。

「で、やっと巡ってきた恩返しのチャンス、助けてって、何?何を置いても助けてやる!」

 ……恩を返せというつもりはないけれど、助けが必要なのは本当なので、友達として相談に乗ってもらう。

 スマホの待ち受けを見せた。

「お、おおお!ついに、ついにそういう関係になれたのか?長かったなぁ、うん、長かった!」

 バンバンと満面の笑みで背中を叩かれるけれど……。

「いや、たぶん亮くんの思っている感じではないとは思うけど」

「何言ってんだ、これ、こんな風にほっぺたくっつけて写真とるなんて」

 といいながら亮君が僕にほっぺたをくっつけてスマホを構えた。

 カシャッとシャッターを切る音がする。

「……友達でも、するか……」

 急に亮くんのテンションが落ちた。

「そうか……友達でも……ほっぺたくっつけて自撮り……するか」

 と、今取った写真をしょんぼりしてみている。

 亮くんは、僕が萌亜さんのことが好きだということを知っている。偽装彼氏をしているのは言ってない。友達として遊んでいると思っている。

 そして、僕のことを応援してくれている。いい友達だ。

「んー、だけど、なんか確実に距離が縮まってると思うぞ?友達は友達でも、俺とかずくらいの超仲がいい友達じゃないと、こんな写真撮らないもんな!」

 ニコニコと笑って、今取った僕と亮くんがほっぺたくっつけてる写真を見せてくる。

 いや、男友達とこんな写真撮ってるやついる?……オタク界隈では見ないけど、美容師界隈では普通にあるんだろうか?

「で、助けてとは?」

 写真を僕と萌亜さんのものに変えて見せる。

「正直に言って欲しいんだけど、これ、どう見える?」

「仲がいい」

「それ以外に思うことはない?」

「うーん、萌亜っちまたかわいくなった?」

「だよねー。って、そうじゃなくて……この写真、会社の先輩が見て、いくらだったって……撮影代」

「は?」

「もしくは、金を巻き上げられるんじゃないかって心配された」

「……あ……」

 亮くんが察してくれた。

 それくらい、かわいい萌亜さんと並んだ僕はさえない。


 

 


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