第7話 佐久間萌亜は行動に移す
「その、だからね、かすっちとラブラブだっていうのを見せつけて、しつこい男を撃退できたらなあーと思って」
これでどうだ!
かずっちともっと仲良くしたいという希望をストレートに言ってみた。
これなら、他の男を寄せ付けないためっていう理由も入ってるんだからビッチだと思われないよね?
「えっと、その……もしかしてこんな男より俺の方がいいだろう?俺に乗り換えろみたいに言われたりとか……?」
はぁ?こんな男?かずっちのこと何も知らないのに、そんなこと言う人がいたら、どれだけかずっちが素敵なのか分かるまで話し続けるから!
男にだって、かずっちの魅力は伝わるんだよ。
高校で同じクラスになったチャラ男の亮だって、気が付けばかずっちにメロメロで「親友の座は誰にも渡さない」とか言ってかずっちの部屋に入り浸ってるんだもん。
くっそうらやましい。でも、男だから許す。私だって知ってる。オタクって男の友情を大切にするよね。ボッチじゃないことを誇るよね。
だが、女なら排除する。女友達?そんなジャンルはない。
あんまり漫画を知らない私だって知ってることはあるんだよ!
ただの幼馴染→のちの彼女。
馬鹿にしていた委員長→のちのデレ彼女。
クラス一の美少女→のちの彼女。
偶然出会ったアイドル→のちの彼女
助けた鶴→のちの彼女
助けた亀の飼い主→のちの彼女
ビッチ→ざまぁして排除。
「違うよー。彼氏がいるって言っても、大学の時とはちがって、社会人だとその、聞かれることが違うというか、しつこいのは男ばかりじゃなくて、女の先輩も「黙ってりゃ分からないし、合コン来てよ」って言ってきたり……」
【先輩だと断りにくいこともあるってことですね?】
「若いんだからいろんな男と付き合った方がいいよ~なんてニヤニヤして話をする上司がいたり」
かずっちがその言葉を聞いてムッとした。
「それ、完全にセクハラじゃないですか」
私のために怒ってくれてる!嬉しい!ぎゃー!嬉しい!
「そのたびに、その、彼氏がいるんで―って言ってるんだけど、普段から彼氏とのあれやこれを惚気続けたら、言われることもなくなるかな、と、思って……」
だから、もっと仲良くなろう?
キスして、抱きしめて、それから、どこか二人でお泊りに行って……。
会うたびに手をつないで、もちろん恋人つなぎで。毎日好きだよと通話しながら寝るの。
ぶああああ、最高すぎん?
「すいません、僕のせいなんですね……」【偽装彼氏なのに、彼氏役が上手くできてないんだ】
「違うよ、そうじゃないよ、かずっちのせいじゃないよ」
私のことを大事にしてくれてるのは分かってるもの。結婚するまではエッチはしないと思ってるんだろうし。キスとかそういうのも婚約してからと思ってる?
あ、キスして責任を取ります!みたいな漫画もあるとか?
てことは、かずっちの中でキスイコール婚約……?キスしたら結婚できるの?
結婚したい!よし、がんばるっ!もっと頑張るよ。脳内あざと先輩ご指導よろしくお願いしやっす!
「例えば、スマホの画像フォルダを彼氏との写真でいっぱいにするとか、そういうのしてなかったし……」
服のコーデ確認用に自撮りばっかりだよ。
かずっちと一緒に写った写真って、5年も付き合ってるのに卒業式……付き合いはじめた記念の写真と、数回。観光地に出かけた時の記念写真スポットでの写真くらいだ。
……なんとなく、かずっちが写真撮られるのが好きじゃないみたいだと感じていたから、なんだけど。はっきり嫌だと言われてないのに確認もしなかった。
「ほら、これもっ」
スマホを取り出して待ち受け画面を見せる。
半年前に二人で行ったネズミさんランド。日付がはいるフォトスポットでスタッフにとってもらった写真だ。
これみるとかずっちと行ったネズミさんランドのことを思い出せて元気が出るの。
かずっちも同じ待ち受けにしてくれてるんの知ってるんだ。えへへ~。
「背景を入れるためとはいえ、二人の姿はよく見えないし(もっとかずっちの顏大きな写真欲しい)、二人とも棒立ちで仲良し感が薄いし(腕とか組みたかった)、半年も前の写真からずっと変えてないのって、ラブラブ度低いっていうか……」
好きな写真だからいいんだけど。
もっと写真欲しい!
「かずっちさえ嫌じゃなければ、もっと二人の写真を撮りたいんだけど……」
写真を撮られるのは苦手と言われたら諦める。ドキドキして返事を待つ。
「一緒に写真、むしろお願いしたいです!」【萌亜さんの写真が手に入る!】
かずっちが嬉しそうな顔をする。
え?何?もしかして、写真撮られるの嫌いかもって、思い込みだったの?
なんだぁ!もっと早くにかずっちに聞けばよかった!
「じゃ、さっそく!彼氏ともんじゃ!って感じで。かずっちもへら持って、持って」
片手にへら。片手にカメラ。インカメラで自撮りとなれば、当然ですね。
「かずっち、ハイチーズ!」
ぎゅっと顔をかずっちに寄せる。だって、そうしないと2人は入らないもんね。
自然な接触。問題ない。
「僕のスマホでも、いいですか?」
「もちろんっ、んじゃ、もんじゃおいしーって感じで」
どさくさに紛れるよ。大丈夫だよね?自然だよね?
えーいと、かずっちのほっぺたにほっぺたくっつける。へらは口元に。
かずっちは一瞬ぎょっとしたみたいに固まったけれど、私と同じようにへらを口元に当て、ほっぺたくっつけたままスマホのシャッターを押した。
やった!一歩前進じゃん!
ほっぺたくっつけたんだから、ほっぺたにチューもいけるんじゃない?
ラブラブスマホの写真見せてメンドクサイ誘いを断る作戦ってことにすれば……。
ほっぺたチューくらいはしたりしてもらったりとか、いけるんじゃない?
まぁ、さすがに今日は、まだ、心の準備ができてない。
もう心臓バクバクで、それどころでは……。




