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オタク君が好きすぎるギャルの6年目  作者: 有
第一章 キスまで3万文字

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第4話 目黒和也は白昼夢かと混乱する

◇和也◇

 ここ、もんじゃ焼きの店であってるよね?

 僕は夢でも見てる?

 僕の隣に萌亜さんが密着してる。

 お金を払って女のこと楽しむ店じゃないですよね?!

 いやいや、落ち着け、落ち着け。

 初めは向かいの席に座っていた。

 鉄板があるため、向かい側の席では二人でスマホの画面を見るのは大変だということで、萌亜さんが僕の隣に座り直した。

 うん、そこまでは覚えている。

 それから、どうしたんだっけ。

 シート席で隙間がないので距離感がつかめないのか萌亜さんはスマホを覗き込みながらどんどん僕の方へと近づいてきた。

 そして、ぴたりとくっつくようにしてスマホを二人で覗き込むような姿勢になったというわけだ。

 助けて、脳内チャラ男さん!こんな時に男はどうしたらスマートにふるまえるの?

 いやいや、スマートにふるまう必要はないのかもしれないけれど。さっきからすごくいい匂いがしている。

 髪からも、服からも。体……からも。

 ごくりと思わず唾を飲み込む。

 だめだ。だめだ。萌亜さんが僕を偽装彼氏にしてくれたのは男を感じさせないからというのも一つの理由なんだと思う。ここで何かしでかしたらおびえさせてしまう。

 バクバク高鳴る心臓。助けて脳内チャラ男さんっ!

「お待たせいたしました。餅明太もんじゃとコーンバターもんじゃになります」

 店員さんの入室により、萌亜さんがぱっと僕から離れた。

 いや、スマホから視線を商品へと移したと言った方がいいだろうか。

 何も萌亜さんが僕にくっついてきたわけじゃないんだから。

 ……助かった。ありがとう店員さん。

「さっそく作ろう!動画見たから手順は覚えたよ。まずは、具と汁を混ぜるんだよね!」

 萌亜さんが嬉しそうに器に手を伸ばした。

 もう動画を見なくてもいいのだから、向かい側の席に戻ったらいいのでは?と思ったけれど言わない。

 触れちゃうくらい近い位置に萌亜さんがいるなんて至福すぎる。

 相変わらず少し動くたびにフルーティーでフローラルないい香りが漂ってくる。

「いい匂い」

「うん?」

 ヤバイ。気を抜いたらうっかり本音が漏れてしまったっ!

「うん、周りからずっとおいしそうな匂いしてるよね~!早く食べたい!」

 大きな器の中で具と汁を混ぜながら萌亜さんが屈託なく笑う。

 ごめん、僕の言ってる匂いはもんじゃの匂いじゃないんだ……と、そっと心の中で謝っておく。

「えーっと、混ぜたら、具だけ鉄板に乗せるんだよね」

 萌亜さんが勢いよく器から具を鉄板の上に載せた。ああ、そんなに勢いよく載せると……。

「熱っ」

 飛び跳ねた汁が萌亜さんにかかったようで、僕の方に身を寄せた。

「熱かった?」

 汁じゃなくて鉄板に塗った油がはねたのだろうか?

「あ、えっと」

 萌亜さんが器を置いて僕の顔を覗き込んではにかんだ。

「え、へへ、はねたからびっくりしちゃって思わず……。よく考えると熱くはないかも?」

 かわいい。はにかむ顏。そして隣で僕の顔を見上げるようにして見る角度。

 って、やばい、まずい。がっつりレースのキャミソールが目に入ってきた。中が見えそう、いや、見えそうで見えない。

 落ち着け、落ち着け。

「火傷してない?萌亜さんはちょっと鉄板から離れていて、また飛ぶといけないから」

 僕の脳の回路が飛ぶといけないから。

「え?大丈夫だよ」

「火傷しなくても、服が汚れちゃうよ。僕の服と違って、萌亜さんには1枚1枚が大切な服なんだよね?」

 萌亜さんにとって、オシャレは僕にとってのガンプラだって言われたことがある。

 趣味ってことらしい。

 組み合わせを考えたり、自分でリメイクしてみたり。服に合わせてメイクをして髪形を考え、バチッと決まると嬉しい。人に見てもらいたくなるし、褒められると嬉しいって。

 ……そういわれると、確かにガンプラも似たところはある。うまく塗装できたら嬉しいし、自分なりに工夫してアレンジを考えるのも楽しい。うまくできたら見てもらいたいし褒められたら嬉しい。

 それで……汚れたり壊れたりしたら悲しい。

 だから、飛び跳ねた汁が染みになったら萌亜さん、悲しいと思うんだけど、違ったかな?

 ぼとぼとと、僕も具を鉄板に乗せる。

「あとはそこまで飛び跳ねることはないかな?もう近づいても大丈夫だよ?」

 と、横を向いたら、萌亜さんがうるんだ目で僕を見ていた。

 え?何かしちゃいました?

「見て」

 そういって、萌亜さんは、パーカーのジッパーを下ろした。

 ちょ、ま、ま、ま、ま、待って!

 これは白昼夢?そうだ、僕はあまりにも萌亜さんが好きすぎて都合のいい白昼夢を見ているに違いない!

 萌亜さんは、ジッパーを下まで下ろすと、前を開く。

「どうかな」

 恥ずかしそうに頬を赤めながら、僕に感想を聞く。

 白いキャミソールは、胸元のレースとおそろいのレースがすそにもついていた。丈はおへその上10センチくらいと短く、しっかり細くて滑らかなお腹が見えている。

 ごくりと思わず唾を飲み込む。

 ジュゥーというもんじゃ焼きが焼ける音がやけに頭に響いている。

 だめだ、これは妄想だ。現実に戻れ、現実に……。

「ねぇ、かずっち、どう思う?」

 萌亜さんがグイっと胸を突き出す。

 どどどどどど、ど、ど、ど、どっ。っと心臓に血液が流れる音が頭に響いている。いや、この音もまた、妄想なんだろうか。

 胸に手を当てて、キャミソールのレースを指先で撫でる姿に、見てはいけないと思いつつも、胸へと視線が向く。

 ごくりと唾を飲み込んだはずなのに喉が渇く。

 も、も、もしかして、誘われている?何に?

 だから、これは夢。隣に座ると、お金を払わないといけないお店にでも来てしまった夢でも見ているのだろうか。そういう店には行ったことはないけれど、さ、触っても、いいのかな?ダメなのかな?

 パニックになってもはや何も思い浮かばず固まる。

「このキャミソールね、このレースの部分は私が縫ったの。丈も短くしてレースをつけて……」

「え?」

 服を見せたくてパーカーの前を開いて、服の感想を聞きたくてどうかなって言ったの?

「あ、あの、その、ごめん、えっと、あんまり魅力的過ぎて、言葉に詰まった」

 恥ずかしい。何が白昼夢だ。妄想だ。

 ただの勘違い野郎じゃないか!

 勘違いはしたけど、言葉に嘘はない。魅力的過ぎて何も言えなかったというのは本当だ。

 萌亜さんが赤くなった頬に手を当てた。

「……私にとっては、買っただけじゃなくて、自分で手を入れた世界に一枚しかない大切な服で……かずっちが一枚一枚大切な服だって言ってくれたのが、すごくうれしくて」

 萌亜さんが、感極まっとばかりに、両手を広げて僕に抱き着いた。

 ひゃーっ!

 ひゃーっ、ひゃーっ!

 脳内チャラ男さん、大事件です、萌亜さんが、萌亜さんが、僕に抱き着いてますっ!

 単に感激して思わずというだけだというのは理解してるけど、脳内チャラ男さん教えてクレメンスっ!この場合、僕は腕を萌亜さんの背中に回していいものでしょうか?

 それとも、このまま所在なさげに手を中途半端に制止させたままが正解でしょうか?

 なんて悩んでる僕の耳に、パリパリパリと聞きなれない音が。

 何の、音だ?

「あー!萌亜さん、もんじゃが、焦げるっ!もんじゃがっ!」

 萌亜さんがぱっと体を離した。

 くそ、もんじゃめ!空気を読め!

 ここは、ぐっとこらえて焦げずに堪えるべきだろう!具だけに。ぐっと……!

 





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