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オタク君が好きすぎるギャルの6年目  作者: 有
第一章 キスまで3万文字

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第1話 佐久間萌亜の気持ち

◇萌亜◇


 待ち合わせは、いつも同じ。高校近くの安いファミレス。

 サイゼッテリア。

 ランチを一緒に食べるところからデートが始まる。

 私の彼、目黒和也、かずっちが、店の前に立つ私の姿を見つけて、片手をあげた。

 うーん、今日も絶妙にダサかわいい恰好!

 なんでブルゾンにパーカー合わせた?いや、会わせるのは構わないけれど、大き目パーカーに小さめブルゾンはないわ。

 でも、きっとどこかでパーカーにブルゾンはオシャレみたいなの見て、デートのために精一杯頑張ってくれたのかなぁって思うと……。

 好き。かずっちのそういうちょっと抜けたところ大好き!

 オシャレばかりに熱心でちゃらちゃらした男よりずっといい。

「今日は混んでますね」 

「そりゃそうだよ~高校の卒業式だよ?」

 制服姿の生徒たちがグループになってファミレスに来ている。

 卒業生のグループもいれば、在校生のグループもいて、店内がまるで教室のように制服の子だらけだ。

「あ!卒業式……そうか、もうそんな時期なんですね!時が経つのは早いなぁ……」

 そうだよね。もう高校卒業して……付き合いだしてからマルっと5年も経つんだよ。

 そう、5年よ。別々の大学に進学して、卒業して就職して約1年。

 環境が変わっても、月に2~5度のデートを重ね気が付けば5年も経っていた。

 5年もたっているというのに……。

 いまだに手をつなぐくらいしか触れ合いがないっ!

 しかも迷子にならないようにという理由付きで手をつないだのもお祭りに出かけたときの3度だけ!

 どうして、もっと手をつないでくれないんだろう!

 キ、キスだってしたい。

 どうしてキスしてくれないんだろう……。

 ぎゅっと抱きしめてほしいし、それから、その……その先だって……。もう、大人なんだし……。

 うん、でも分かってる。

 かずっちはオタクだもん。

 きっと「結婚するまでそういうことはしない」と思ってるんだよね?

 だって、オタクってそういうものでしょ?

 流石に私だって、それくらいの知識はあるよ。

 でも、結婚してなくても、キスくらいはさ、してもよくない?

 あと、いつも手をつないで歩きたいし、時々ぎゅーって抱きしめてほしい!

 親友の奈々ぴょは「そんなん萌亜からすりゃいーじゃん」って言うんだけど……。

 私から、かずっちにキスなんて……。

 片手でかずっちの黒くて長めの髪の毛の中に指を入れて頭を引き寄せる。

 それから、黒縁のメガネの奥の瞳を至近距離で見つめて、少しだけ唇を開いて首を傾げて誘うようなしぐさをすればキスしてくれないかなぁなんて思ったこともあるよ。

 あるけど、あるけど!

 無理だよ、無理無理!自分から誘うなんて!

 ただでさえ見た目がちょっと派手なだけで、男関係も派手なんだろうとか思われがちなのに。

 自分から迫るようなことしたら、ビッチだと思われちゃう!

 オタクっていうか、世の中の男の人ってビッチは嫌いでしょう?

 特にオタクは清純な子が好きでしょ?

 だからさ、かずっち……ビッチのような行動する子は嫌いなんじゃないかな。

 やだよ、やだ。

 かずっちに嫌われたくないよ!

 気が付けば、かずっちが制服姿の卒業生をじっと見ていて、私を見ない。

 あれ?もしかして、かずっち、私より女子高生が好きなの?

 ……いや、さすがに未成年に手を出すような非常識なカスではないのは知ってる。

 ということは制服が好き、とか?

 そういえばオタクって、オシャレな服よりもコスプレとか好きだよね?

 制服も、現役じゃなければコスプレなのでは?

 高校の時の制服を着たら、かずっち、キスしてくれるかな?

「かずっちっ、女子高生ばっかり見て、その……制服、好きなの?」

 思わず緊張して声が震える。

 もし、制服が好きなら、まだ持ってるから取り出して着ちゃおうかな……。

「あ、ううん、そうじゃなくて、あの、その……懐かしいなぁと思って」

 なんか動揺してない?

「萌亜さんの制服姿を思い出して」

 私の制服姿?やっぱり制服着てる方が好きなの?

「ものすごく素敵で……こんな素敵な人はいないと思っていたんです」

 ……なっ!やっぱり制服を着た私の方が魅力的だってこと?

 どこに制服しまい込んだかな。

 サイズは変わってないからきらっるはずだけれど……。コスプレだと思えば……ああでも無理!いっそ制服のコスプレをした方がいいよね。

「だけど、今の萌亜さんの方がずっとずっと素敵で……」

「ふえっ」

 かずっちの横顔が赤くなっている。

「ちょっと空いてるか見てきます!」

 かずっちが逃げるようにして店の入り口にある名前を書くボードを見にいってしまった。

 一人店の前に残された私の顏もきっと赤い。

 かずっち、私のこと素敵だって言った!

 私のこと、素敵だって!どうしよう、嬉しい!

 ボードを確認してすぐにかずっちは戻ってきた。

「2組待っていました。別のところにしましょうか」

 うん?

「2組なら、すぐだよね?」

 かずっちと一緒に待ってればあっという間だよ。

 一緒にいるだけで幸せだし。

「あー、でも、人が待っているとゆっくりできないですよね?」

 そうだ。

 かずっちはとてもよく周りを見ていて気遣いができる人だ。

 誰かが待っていると気が付くと、食事が終わるとすぐに席を立つ。待たせちゃ悪いからと。

 あと、私が食べるのが遅くてかずっちを待たせちゃうことがあるんだけど「ごめんね、食べるの遅くて」と言おうものなら「もう少し飲み物飲みたかったからゆっくり食べて」とフリードリンクをお代わりしたりしてくれる。

 ……すでに3杯も飲んでいてもだ。私がゆっくり食べられるように気遣ってくれてると気が付いたのは付き合いだして3年目になってから。

 それまでは毎回飲み物一杯飲むなぁと思っていた。

 3年気が付かない私がとろいんじゃなくて、気が付かせずに気遣いができるかずっちがすごいんだよ。

 ああ、もう、好き!

 気が付いたときに、かずっちのことますます好きになったよ!

「卒業式の後、友達と一緒にゆっくり話をしたいと思うから……待っている人がいない方がいいと思うんだ」

 かずっちが卒業証書を手に店の中でおしゃべりしている高校生に目を向けている。

 もう!かずっち優しい!好き好き!

 だぁぁぁぁいすきぃぃぃぃぃぃ!

「じゃ、今日はもんじゃ食べに行こう!奈々ぴょがおいしかったって言ってたところ!」

 ああああ、かずっちの手を握っちゃった。

 だ、大丈夫だよね。

 こっちだよ!早く早く!と、手を引っ張る形で手を握っただけで、不自然じゃないよね。

 うん。ぎゅっと握ると、力が抜けていたかずっちの手がぎゅっと握り返してくれた。

 あー、好きすぎて心臓が飛び出そう。

 もう、23歳なのに。今年24歳になるのに。

 付き合って5年も経つのに。今年で6年目なのに!

 手をつなぎだけでこんなにドキドキするなんて。

 はぁー、しんどい。好きすぎてしんどい。

 しんどくて、幸せ。



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