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オタク君が好きすぎるギャルの6年目  作者: 有
第一章 キスまで3万文字

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第9話 佐久間萌亜はナンパされる

《今週末会えないかな?》

 メッセージアプリに届いたかずっちの言葉に、電車の中だというのに声が出そうになった。

 え?嘘でしょ。昨日会ったばかりなのに、今週末も会えるの?

 だいたい今までは2週に1回会うペースだ。特にがっちり約束しているわけじゃないけれど、なんとなくそうなっていた。もちろん、学生のころは平日にも比較的時間を取りやすかったのでタイミングが合えばもっと会ってはいたけれど。社会人になって平日に自由がなくなってからはこんな感じに落ち着いた。

 2週も続けて会うなんて!それもかずっちから誘ってくれるなんて!

《もちろん!どこ行く?》

《待ち受けの写真を取り直したいから、撮影に適した場所とかあるかな?》

 待ち受けの写真の撮り直し?え、それは、ラブラブ見せつけ写真を撮り直すってこと?

 もっとラブラブしようって話?

 きゃーっ!どうしよう!って、まぁきっとかずっちだからそういう意味じゃないんだよね。もんじゃ焼きの店じゃなくて、海とか公園とかもっとちゃんとした場所で撮ろうってそういうことだよね。

 別に、いいのに。日常の一コマな写真っていうのが、普段からずっと仲良しですって感じで。

 うーん、でもせっかくだからインスタ映えする撮影スポット調べておこうかな。インスタ見れば、ラブラブアピール写真出てくるだろうし、他の人はここでこんな感じに撮影してるみたいだよと見せたら、かずっちもやってくれるかも。

 ひゃー、楽しみ。

 お姫様抱っこ……は、かずっちには無理させられない。

 相合傘が描かれた前で……は距離があってよくない。

 向かい合って顔を近づけ、口元を物で隠す……!こ、これだぁ!キスしてる風の写真ってことでかずっちにお願いする。そして起きる、ラッキースケベ!いや、別にスケベじゃないもん。

 口と口がぶつかっちゃうだけだもん。

 仕方ないよね、距離感つかめず、くっついちゃうのは事故よ、事故。

 ラブラブ写真見本フォルダを作って、写真を集めていく。

 あ、あとこの口元を隠すんじゃなくて、逆光で、触れそうな口と口の隙間から太陽の光が輝くのもいいね。

 どうしよう、ドキドキしてきた。……積極的になりすぎないように、自然にかずっちとキスできるかな。……。

 落ち着こう。

 あ、そうだ。場所、場所ね。

《調べておくね!楽しみ!》



 土曜日。

 楽しみ過ぎて早くきすぎちゃった。

 待ち合わせは、いつものファミレス前ではなく、駅前。

 ヒサヤオオドオリパークまで行くんだ。「stay」という寄り添う二人の像のベンチがある。そのポーズをマネして写真を撮るのが恋人たちの間でブームらしい。

 それから、観覧車に乗ろうって誘って……二人きりになったところで。

 きゃーっ!どうしようどうしよう。ラッキースケベを計画してるなんて悟られてはいけない。っていうか……本当にキスできちゃうのかな?記念日になるよ。

 駅前には待ち合わせしているだろう男女が何人も経っている。

 隣に立っていた女の子が手を振りながら待ち合わせの女友達と合流していく。

 かずっち早く来ないかなぁ。

「ねーねー、彼女一人?」

 と、ナンパ男に声をかけられた。

「彼氏と待ち合わせです」

 相手にしないのが一番だけど、しつこすぎるのも困るので冷たい言葉で答えると、すぐに去っていった。

 はー、まったく。早くかずっち来ないかなぁ。

 駅前を歩く人たちのファッションチェックを心の中でしながらかずっちを待っていると、ちょっとセンスのいい服装の男の人が目にはいった。

 黒のワイドカーゴパンツに、黒のスタンドカラーブルゾン、白い無地のTシャツを中に着ている。アクセントとして太めのチェーンをしているけれど。

 センスはいいけど好みじゃない。チャラっ。前分けのさらりと流れた髪もかなり手入れしてある。それほど日差しが強いわけじゃないのにサングラスているとことか。

 チャラ。それに、あの肌感は、がっつりメイクしてるよね。

 あ、さっき合流しあっていた女の子たちの視線がちらりと男に向いた。

 やめときな。一見ちょっとカッコよく見えるけど、見た目だけの男なんてさ。

 中身で男は選ばなきゃ。ほら、漫画でも「そのままの君が好き」って男の人が言うのにときめいたりするじゃん?女もその精神で男を選ばなきゃ。

 とか思っていたら、サングラスの男と視線が合ったような気がする。

 慌てて視線を落とすと、小走りでパタパタとサングラスの男がこちらに向かってきている足元が見えた。

 げ。

「萌亜さんっ!お待たせしてすいませんっ」

 かずっちの声に声を上げる。

 助かった。サングラス男に声をかけられる前に来てくれてありがと。

 うん?

 目の前にはサングラス男。かずっちの姿は?

「あの、萌亜さん」

 サングラス男がサングラスを外して首を傾げた。

「……」

 空いた口がふさがらない。

 しっかりメイクして、原形を探すのが難しいくらい変わっているけれど……間違いない。かずっちだ。

 女も化粧をすると化けるが、男も化ける。

 サングラスを外したら不細工とかでなく、がっつりメイクで、めちゃめちゃかっこよく仕上がっている。

 通り過ぎる女子が振り返って見てる。

「あ、あの、萌亜さんに声をかけるしつこい男の人が「こんな男より俺にしろよ」なんて言えない位な写真が撮れたらいいと思って、亮くんに手伝ってもらったんだけど……」

 くっそ。亮のやつ!余計なことを!

 優しくて気遣いができて賢くて癒しの空気をまとっていて、その上見た目がかっこよくなっちゃったら、かずっちモテモテになっちゃうじゃんっ!

 オタク好みの……清楚でかわいいお嬢様がかずっちのこと好きになって……かずっち純真だから、あざとい女にすぐに騙されちゃって……。

 私……振られちゃうんだ。

『ギャルって悪役令嬢ポジじゃない?ヒロイン系じゃないわ~。何もしてなくても悪者にされて振られそう』

 と、漫画好きな女の子が私をちらっと見ておしゃべりしていた言葉を思い出す。

「どうかな?」

「似合わないっ」

 思わず強い口調で断言してしまった。

 かずっちがショックを受けた顏をして下を向いた。

「そ、そうだよね……。メガネがないからどういう顔に仕上がってるかよく見えないんだけど、亮くんが頑張ってくれたけど……」【オタクの僕がどう頑張ったって無理だよね】

 傷ついた顔を見て、頭を下げる。

「ち、違うの、そうじゃなくて、見慣れないから落ち着かないというか……」

 かずっちがモテるのが嫌なんて嫉妬心で、かずっちがオシャレするのを止めるなんて……。最低だ。

 オシャレが好きと言いながら、人のオシャレを否定するなんて、本当……最低。

 ポタっと地面に涙が落ちた。

 




 



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