第9話
魔法世界に冒険者として生きる孤児であり主人公スタンリー・ケンプ。
そこに生きる人々の様々な些細な行動がまるでバタフライ・イフェクトのように世界を変えていく。
この物語のテーマとなる『ストレンジアトラクター』とは、難しくいうと・・・
カオス理論の研究の中で発見された奇妙な挙動を示す微分方程式の状態の総称のこと。
つまり動的システムが時間とともに発展する際に、予測不可能 で複雑なパターンを形成する現象を指すのです。
そんな泡沫の世界で生きるスタンリー・ケンプ
彼の目を通してその冒険譚を進めていきたいと思います。
また本編である『光と陰ー織りなす夢の形』のスピン・オフとして、本編シーズン4の最後と繋がる物語となりますのでお楽しみに!
そして何事もなく朝が来た。
「あなた、夜はお利口さんだったわね? ちゃんと約束守ってくれて!」
「そりゃそうでしょ!だってもうあなたの使い魔なんだから!」
「まあね! でも私にとっても初めての使い魔だからなんか実感が湧かなくて・・・
じゃー 準備ができたらすぐに出発しましょうか?」
2人は早々と馬車で次の町に向けて立っていった。
次に向かうのはローベックという町であった。
この町は峠の山道が始まるカッセルの手前にあり、カッセル山脈が活火山であるため温泉で賑わう町なのだ。
マイハイムまでは平坦な緑の野原が広がっていたのだが、ここからローベックまでは周囲の風景が森林に変わっていた。街道はいわゆる幹線道路ではあるが、視界を遮る森の中を進むため、このあたりから盗賊や時には魔獣が出現するイエローゾーンとなるのである。
スタンは御者をしながら、
「なんか深い森で見通しが悪い道になってきたね!? この辺りから用心しなかればならないのかな?」と言うと、
「そうよ!カッセルからの峠は最も危ない道になるけど、この辺りも被害が出るところね。護衛よろしくね!」
とフリーダは意外に心配していないような雰囲気である。
しばらく進んでいくと、前方の木々に囲まれた道端に3人の冒険者風の者たちが横たわった負傷者を介護している光景が飛び込んできたのだった。
「なんだ、あれは?」
「えっ 出た?」
「いや、冒険者だと思うんだけど、1人やられているみたいだね。」とスタンが言うと、フリーダが前に乗り出してきてそれを見ていた。
「怪我しているようね! そこで止めて!」
「えっ、大丈夫なのかい?」と言いながら、スタンは馬を止めたて降りた。
「ねえ、あなたたち? 怪我をされたのですか?」とスタンがまず声をかけると、
「そうなんです!いきなり山賊が出てきて、抵抗する間もなく、彼女が切り付けられて荷物を盗まれてしまったんです。彼女自身が白魔道士なんで、俺たちは治すことができなくて・・・」
と、その白魔法師はぐったりと横たわっていた。
すると、フリーダが馬車から降りてきたのだ。
「私が治してみますのでいいですか?」と彼らに話しかけ横に座ったのだが、
負傷して横たわっている人は魔道士風の衣装を纏った若い女性であり腹部が斬られ出血が激しかった。
フリーダはまたウォンドゥを出して詠唱を唱え始めたのだった。
すると、昨日契約時に起こったような現象がまた起こり、今度は白っぽい光が負傷者の体を覆い腹部の深い傷の中にまるで液体のように覆いながら傷の中に消えていってしまった。
すると同時に傷口が盛り上がりながら塞がれていき傷がない状態になっていったのだった。
「す すごい!! 治りましたよ!! ありがとうございます!!」と冒険者仲間の1人が感激して叫んだ。
「これで傷は治りましたので大丈夫です。あとは出血がひどいので治癒ドリンクを飲ませるか栄養があるものを食べさせて養生してくださいね。」
「僕はこの冒険者パーティーのリーダーマテオです。本当に有難うございます!なんとお礼をしたらいいのか・・・」
「いえ、困ったときはお互い様ですから。しかし、その山賊って何人いたんでのですが?」とフリーダが尋ねた。
するとアーチャーが「5人はいましたね!本当に森から咄嗟に現れて、いきなり彼女が倒れたかと思ったら、
マテオが持っていた荷物を盗んでまた森の中に消えていったんです。弓を射る間もありませんでした。」
「そうですか。この道は出ると聞いています。お気をつけください!」
「ありがとうございます!俺が彼女を背負っていきますので。大丈夫です!せめてお名前だけでも聞かせて頂けますか?」とタンクのマテオが言った。
「いえいえ! 私はフリーダと申します。」
「フリーダさんですね! 彼女に命の恩人と伝えておきます!」
スタンはその様子をじっと眺めていたのだが、内心フリーダの白魔法に感動しているように見えた。
「では、これで私たちは失礼いたします。」というと2人はまた馬車に戻り出発したのだった。
スタンは馬を走らせて、この件で時間が取られた分を取り戻そうとペースを早めた。
「しかし、すごかったよ! ああやって魔法は使うんだね?」
「そうよ、でも私 白魔法よりも黒魔法が得意なの。」
「魔道士ってどっちも使えるのかい?」
「人によるわね。私は幸いどっちも使えるんだけど、身を守るには攻撃魔法を鍛えないと!と思っているの。だから魔法学院に入学したら、黒魔法を専門で鍛錬しようと思っているのよ。」
「でも攻撃魔法も得意な属性があるんだろ?」
「そうね、でも私は火・風・水が使えるわ。土は才能がないみたいね。」
「へえー いくつも使えるってすごいことなんじゃないの!? だって一つの属性しか使えない魔道師が多いんだろ?」
「あま、そうね!だから私、今回奨学生になるために面接に行くわけだけど、絶対に受かると思ってるのよね!」
「えっ、という事は、まだ入学が確定していないのに俺を使い魔にして大丈夫なのか?」
「大丈夫よ!絶対に受かるから!」と自信満々であった。
その自信はどこから出てきているのだろうか?
「そういえば、俺も火と水を使える素質があるとか言ってたよね!?」
「そうね。」
「君が合格して俺も一緒に学ぶことができれば絶対使えるようになりたいな・・・」
「大丈夫よ!私、不思議なんだけど、そうなると確信しているの!」
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本編『光と陰ー織りなす夢の形』もSFカテゴリーにて投稿済です。
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