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ストレンジアトラクター『いざ魔法世界へ!』  作者: 三海怜


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7/9

第7話

魔法世界に冒険者として生きる孤児であり主人公スタンリー・ケンプ。

そこに生きる人々の様々な些細な行動がまるでバタフライ・イフェクトのように世界を変えていく。


この物語のテーマとなる『ストレンジアトラクター』とは、難しくいうと・・・

カオス理論の研究の中で発見された奇妙な挙動を示す微分方程式の状態の総称のこと。

つまり動的システムが時間とともに発展する際に、予測不可能 で複雑なパターンを形成する現象を指すのです。


そんな泡沫の世界で生きるスタンリー・ケンプ

彼の目を通してその冒険譚を進めていきたいと思います。


また本編である『光と陰ー織りなす夢の形』のスピン・オフとして、本編シーズン4の最後と繋がる物語となりますのでお楽しみに!

そしてマイハイムに着いた。

ここは宿場町として開けた町であり、小さい町ながらもさまざまな地方から交易品が集まりマーケットが形成されていた。近隣の遊牧民や異教徒からの品々も混じり、希少な物品を求めて王国中から商人が集まっているようだ。


その通りをゆっくりと過ぎてスタンは目的地の旅籠に馬車を停めた。

「フリーダ様着きました!」

「スタンさん、ここはレーゲンブルクじゃないし、旅の間は2人だけなのでただフリーダと呼んでいただいてもっと気楽に話してくれていいですよ。」

「ありがとうございます!わかりました、では、俺もスタンでお願いします! しかしこの町は賑やかですね!?」

「そうね、わかったわ。 荷物を置いたら、父に頼まれている物があるからマーケットに行きたいの。」

「わかりました。」と言ってスタンは馬車を馬屋に停めて馬車の後ろに留めてある旅行バッグを持った。

そして2人は旅籠屋のカウンターに行きチェックインをしてから2階の部屋に荷物を置いた。


「あのー・・・」

「何、スタン?」

「部屋は1部屋なんですが・・・1部屋ってことは俺は馬車で寝ればいいんですかね? 俺は全然大丈夫ですけど、護衛の仕事が難しいかと・・・」

「あっ そうよね!? 実はうちは男爵家だけどお恥ずかしい話なんですがあまり現金がなくて・・・1部屋しか取れなかったの。」と恥ずかしそうにして下を向いている。

「全然大丈夫ですよ。」

「でも、確かに護衛の仕事にならないわね!? じゃー スタン、あなたが同じ部屋でも気にしないんだったらソファーで寝てもらえる?」

「フリーダこそ気にしないんですか?俺はいいですけど。」

「ええ、大丈夫よ。何か変なことをしたら魔法をかけちゃうから!じゃ、これから悪いけどそうしましょう!」


早速2人は宿屋を出てマーケットに向かった。

「遊牧民が遠方と交易したお香があるの。お父様は喉も悪いからその香りで楽になるんですって。だからそのお香を探すわね。」と、お目当てのものはそれだけではなさそうに見えるがフリーダは興味津々でマーケットを貪るように見て回っていた。スタンはなるだけ護衛に見えないように自然に彼女に着いて回っているが、彼の目にも新鮮なものばかりが並んでいた。


「あっ スタン!あったわ!! あれよ!」と言いながらフリーダは走って行った。その店はお香のみを扱う専門店のようである。彼女は夢中でそのお香を探しているが、お目当てのお香以外にも自分好みのお香が見つかったようだ。

「あっ、これ!私欲しかったの!」とスタンにも見せた。「サンダルウッドと言ってとても落ち着くいい香りがするの。それにこれがお父様用! この2ついただくわ!」と言って購入した。

「これで、ここでのお買い物は終了よ!スタンは何か見たいところある?まだ時間はたっぷりあるから付き合うわよ。」


「俺、途中で武器屋を見かけたんです。そこに行きたいですね。」

「わかったわ。ついていくわね。」

と言うとスタンはその店があった方向に歩き出した。

「ここです!」と2人は古そうな構えの店に入って行った。


店主は「こんにちは!」と言っただけで無言である。やはりマーケットがあるせいか客は黙っていてもどんどんきてくれるのであろうか? まあ、逆にスタンにとっては構ってもらわないほうが見やすいと思い、魔石を色々手に取って物色しているようだ。その隣にフリーダも黙ってついてきていた。水魔石を手に取りながら、

「俺、今は全く魔法が使えないんだけど、魔石を使って馴れれば使えるようになるんだろうか?」とボソッと聞いた。

「全く?」

「全く!」

「ほんと??」

「多分・・・」


「ちょっと手を見せてもらえる?」

スタンは手を出して、フリーだがその手を持って何やら魔力を注ぎ込んでいるように見える。

すると、スタンの両手が色が変化してきたのだった。

右が赤 左が青 である。

「あなた、魔力はあるわね。右が火魔法 左が水魔法 二つの魔法が使える魔素があるわよ!」

「えっ そうなんですね。よかった〜! 魔力がないかと思ってたんで。」

「魔石は魔法が使えない人が持つものよ。高価だしね。大丈夫、私が訓練してあげるわ。」

「そうか、じゃーよろしくお願いします!」

「じゃそろそろ夕食にしますか?」


2人はまた繁華街にある宿屋に戻ると隣にある居酒屋に入って行った。

「私、こういう居酒屋っていうところ初めてなの!」と少し興奮気味のようだ。

「俺も!今まであまり外食したことがなかったから・・・」

とスタンもやっと砕けて普通の同年代の男女の会話になってきていた。


「しかし、周りはすでに酔っ払っているのね? あの人達は冒険者なのかしら?」

「そう見えるね。大体普通の冒険者はあんな風に見えるよ。」

「スタンはB級冒険者なんでしょ?」

「そうだね。上にはA級とS級があるんだけど、俺の年齢ではB級までしか行けないんだ。」

「ところであなたは幾つなの?」

「俺は18になったばかり、フリーダは?」

「私も18よ。奇遇ね! じゃ、歳がいくつになったらA級に行けるの?」

「20歳だね。あと2年・・・」


と静かに話をしていたところ、2つ隣で盛り上がっていたパーティーが立ち上がりこちらに向かってきたのだった。

「おい、おめえら!お嬢ちゃんとお坊ちゃんで仲良くご旅行かい?」と言いながら大笑いしていた。

すると、フリーダが「そうよ!羨ましい??」と受けて立ったのである。スタンは隣りで護衛としての役割があるため、少し様子見の強張った表情に変わっていた。


「おっと!このお嬢ちゃん威勢がいいねー 俺は嫌いじゃないぜ! 俺たちと一緒に仲良く呑まないか?そんな青いお坊ちゃんはほっておいてさ!」と誘っている。

そうそう、こんな荒くれ者達が集まる居酒屋では、フリーダのような令嬢は品があり綺麗なため目立つ存在なのだ。


「いやよ!この男性は連れなのよ!ほっといてちょうだい!」とサラッと断った。

「おいおい!そんな細っちょい男、俺らが構ってあげればすぐにおねんねしちまうぜ!そうなると寂しくなるだろ?」と脅迫じみた声で表情も険しくなってフリーダに迫ってきた。


『ああ、こんなところで暴れたくはないが、これは俺の護衛としての役目で、この場をどうにかしないといけないんだな・・・』と決心したようだ。

「おい、やめろよ!嫌がっているだろ!おっさん!!」

「なんだ、こいつ!おっさんだとよ! ションベンたらしながら言ってんじゃねえよ!」と食ってかかってきた。


他のテーブルもいつものことなのか見て見ぬふりをしている。居酒屋側もノータッチだ。

パンとシチューを食べていたスタンとフリーダは手を止めていたが、スタンが、

「今食事中なんだから邪魔しないでほしいな! 文句があるんだったら、迷惑をかけるといけないから外でやろうぜ!」と言った。

「おい!お前言ったな!お前から喧嘩をけしかけたんだぞ!売られた喧嘩は買わないとな!! なあ、みんな!?」と言うと、3人の中のリーダー格の大男が腕をぐるぐると回している。

『いすれにしても、そういう展開になったろうに!』とスタンは思った。


すると、フリーダはスタンの耳元で「私も後ろから援護するわ」と言うと一緒に外に出て行った。

すでに表の通りは人通りがなく、街灯の光のみで薄暗くなっていた。

「俺たちは3人のパーティーだが、お前は1人でいいんだな? 楽しく遊んでやるよ!」というと大男がスタンに殴りかかった。


すると、スタンはそれをヒラリと避けると横から脇腹にパンチを入れた。

体の大きさの差は2倍ぐらいある大男であるが、俊敏性はスタンの方が格段上のようだ。

その一撃はかなり効いたようであるが、大男は威勢よく「わかったぜ!じゃ本気出すぞ!ボロボロになって泣いて後悔すんなよ!」と言うと3人で連携をとったのだった。


3人はスタンを囲むと今度は同時に殴りかかってきた。

スタンは瞬時に下に屈み高くジャンプをすると1人の男の肩に乗り更にそこからジャンプをし囲みの外に出た。

彼はすかさずまだ後ろ向きの男の背後から蹴りを入れるとその男は地面に倒れ込んだ。また、その状況を利用しもう1人に回し蹴りを喰らわしたためその男も腹を抱えて倒れ込んだのだった。


これで残るは大男だけとなった。








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