第16話
魔法世界に冒険者として生きる孤児であり主人公スタンリー・ケンプ。
そこに生きる人々の様々な些細な行動がまるでバタフライ・イフェクトのように世界を変えていく。
この物語のテーマとなる『ストレンジアトラクター』とは、難しくいうと・・・
カオス理論の研究の中で発見された奇妙な挙動を示す微分方程式の状態の総称のこと。
つまり動的システムが時間とともに発展する際に、予測不可能 で複雑なパターンを形成する現象を指すのです。
そんな泡沫の世界で生きるスタンリー・ケンプ
彼の目を通してその冒険譚を進めていきたいと思います。
また本編である『光と陰ー織りなす夢の形』のスピン・オフとして、本編シーズン4の最後と繋がる物語となりますのでお楽しみに!
7人が集まりテーブルを囲んで学食の夕食メニューにて食事会が始まった。
学園の長い歴史が窺われる天高のアンティークな空間でいくつもの立派なシャンデリアが並ぶ荘厳な雰囲気の食堂である。もちろんこの場はパーティーリーダーのアルベルトの仕切りである。
「みんな、宜しく頼むぞ!」と言うと全員で陽気に乾杯をした。
「それはそうと、これは重大発表だ。心して聞いてくれよ!」
全員がなんだろうと思いアルベルトに注目をした。
「なんと、我々Fグループには、アデリナ姫御一行も所属することになった。つまり同じグループになるわけだ。
これから合同訓練があると思うが、くれぐれも粗相がないように気をつけてくれよ! と言うのは一応建前にして、しかし、面白くなってきたよなー、諸君!」
「えっマジ??!」
「姫と一緒に戦えるのか!? 俺、萌えるぜ!!」
「今からドキドキしちゃいますねー!!」
「でも、本当に何か粗相があるとまずいよな!」
「合同練習ってどんなふうにやるんだ?」
「皆さん、静粛に!ここには他の学生もいるので!」
「それと、もう一つある!」
「我々と同じ1年に、神聖教会が押すプリーストである第3王女のシャルロッテ・フォン・ヒンデンブルク姫がいらっしゃる。これはあまり知られていないかもしれないが…」と。ここで小声になった。
「第3王女は王の側室の子で教皇側が押しているのだ。つまり王室側と教皇側が激突することになるのだが、神聖教会は総力を挙げて王女をサポートしてくると思われる。」
「ああ、あの王女か・・・なんかぶりっ子で俺は嫌いなんだよな〜」とダミアンがボソッと言うと、
「でも、可愛いから男性女性どちらからも大人気よ! 能力の方はどうなんでしょうね??」とフリーダは援護しているようだ。
「成績は魔法であればそこそこ優勝らしいよ」とアルベルトが言い出すと、
「俺は、断然アデリア姫派だな! 文武両道というか 媚びないというか 王族として尊敬できる尊厳がある姫だよな!」
とダミアンがそれを遮った。
「ダミアン、その情熱は今回のグループ戦で発揮してくれよ〜!」とアルベルトは笑ってダミアンを嗜めるが如くこの話題を終わらせた。
「そして、今年のグループ戦だが・・・内容としては、サバイバルゲームになる。」
「と言うことは??」
「全部で18グループになるのだが、王家の谷の定められたエリア内にそれぞれ18グループが布陣を敷くのだ。
そして日の出の合図とともに総力戦で敵陣地の旗を奪っていき、最終日没までに奪った旗の数が多いグループが優勝となる。もちろん、旗を奪われた時点でそのグループは敗退だ。」
「それは厳しいサバイバルとなるが、私たちのグループは王女を戴いているから負けるわけにはいかないのだ。」
「なるほど〜」
「今から、準備と戦略を練らないとならないな。」
「ちょっと質問がある!」とスタンが切り出した。
「なんだ、スタン?」
「戦いとは真剣なのか?」
「ああそうだ! だが、王家の谷の指定されたエリア内は教授が防御結界を張っている。その結界の意味は、真剣で切られたとしても防御魔法で守られているため、体にはそれなりの衝撃が走るが命には別状がない状態となるんだ。
だが、しかし、その度合いを教授側で管理しているから、致命傷と判断されると腕章の魔石が赤く光って死亡とみなされ退場となる仕組みなんだ。」
「と言うことは、実践さながらと言うことになるんだな・・・」
「まあそうだな、だから今年の達成度がわかる大会ということなんだ。あと1ヶ月あるから入念に戦略を練って準備していこう!」
そうそう、学園でのスタンの学びの方はと言うと・・・
例のエルフ教授のケレブリンのゼミに入り、特待生という名目で授業終了後も魔法技術の個人指導を受けていたのであった。
その甲斐あって、魔法が全く使えなかったスタンは、剣の魔法種に合わせて、まずは火魔法と水魔法を使えるようになっていた。最初はマッチ程の炎とグラス1杯分の水を出すことが精一杯であったのだが、ケレブリンの厳しい指導によりどんどん魔力は開発されていったのだった。
ただ、スタンの兵種としては双剣のフリューゲルであるため、いわゆる魔道士が使う魔法ではなく、魔剣である双剣を通じて実行できる限定魔法となるのだ。簡単に説明すると、火魔法は剣を振ると剣先から炎の柱が発射されたり、水魔法では、空中に氷のスピアを幾つも用意して剣を振るとそれが発射し的を射るなどで魔剣である双剣を媒介とした魔術がメインであった。
残りは実技課題としては、双剣を同時に使用し風魔法を起こすことが残されていた。
しかしながら、火魔法と水魔法の2種のみでもかなりの攻撃力に達しているため、剣技と絡めると以前のスタンとは力量も全く違ったレベルにまで仕上がっていたのだった。
また、一方フリーダの方も、入学前は白魔法である回復魔法、支援魔法、強化魔法は可能であったが、黒魔法においては、いわゆる攻撃魔法であり4大元素からなる火・水・風・土の魔法のうち火と水・風を少々使えるだけであった。まあ、そもそも1つの元素に特化した黒魔道士も多い中、幾つも使えること自体希少性を持っているわけだ。彼女も学院の座学と実践で熱心に魔法を磨き上げ、今では4元素を全て使える黒魔法を習得していた。つまり赤魔道士としてもあとは実戦にてレベルアップしていくことだけなのだ。
さて、Fグループを構成する1、2、3年生の兵種であるが、
1年生のフリーダ達が所属するパーティーの兵種構成としてはソシアルナイ ト、ブリガンド、アーチャー、プリースト、メイジとなる。そしてFグループを構成する2年生はアデリナ姫を中心としたアーマーロードの騎馬隊で攻めに徹した7騎の構成なのだ。残る3年生は守備に徹したアーチャー3名、タンク1名、フリースト1名、メイジ1名となる。
さて、ではこの学年横断のFグループ内でパーティー単位での役割分担はどうするのか?
その合議が各学年の代表学生間で行われていた。
そこであらかたの戦略が決まったようである。




