第14話
魔法世界に冒険者として生きる孤児であり主人公スタンリー・ケンプ。
そこに生きる人々の様々な些細な行動がまるでバタフライ・イフェクトのように世界を変えていく。
この物語のテーマとなる『ストレンジアトラクター』とは、難しくいうと・・・
カオス理論の研究の中で発見された奇妙な挙動を示す微分方程式の状態の総称のこと。
つまり動的システムが時間とともに発展する際に、予測不可能 で複雑なパターンを形成する現象を指すのです。
そんな泡沫の世界で生きるスタンリー・ケンプ
彼の目を通してその冒険譚を進めていきたいと思います。
また本編である『光と陰ー織りなす夢の形』のスピン・オフとして、本編シーズン4の最後と繋がる物語となりますのでお楽しみに!
2人はまず講堂を見てから剣術科と魔法科の教室練を見て回ることにした。
もちろん夏休み期間のため学生は見当たらず庭師が庭の手入れをしているぐらいである。
「学生がいない学校って静かね〜 でもこの学校良さそうな雰囲気じゃない?」と興奮しているフリーダを横目に、
スタンは「うん、そうだね。」と言いながら廊下を歩いていると反対から歩いてくる人がいた。
白いマントを羽織った特徴的な姿であるためスタンには誰なのかが?すぐに察しがついた。
そして付近まで来たので、相手の顔をみるとやはり昨日会ったケレブリンであった。
「やあ、君じゃないか!? 入学決まったのかい?」
「はい、彼女が俺のご主人です。」とだけ言ったのだが、フリーダは何か怪訝そうな顔をしていた。
「初めまして、今度こちらにお世話になるフリーダ・フォン・アルデンヌと申します。」
「あ、こんにちは!私は魔法科を担当するケレブリンじゃ。昨日君の使い魔というスタン君に会ってな。君の話は聞いておる。期待しておるから頑張ってくれよ!」とフリーダにとっては謎だらけの言葉を残して行ってしまったのだった。
「ねえ、いったいどう言うこと?」と少し怒った表情に変わっている。
「いやー君が面接を受けている間にマーケットをぶらついていたら話しかけられたんだー。」
「なんで??」
「それが、俺の剣の魔力が凄いんで見せてくれってことだったんだよねー。」
「なるほど、そういうことなのね!やっぱりここの先生はそんなことがわかるんだ!?」
「それで、君が面接に行っていることを言ったんだよ。もしかしたら俺もお世話になるかもってね。それだけ! 良さそうな人だったよ。」
「そういうことね! わかったわ。まあ、とりあえずお互い頑張りましょう!!」
スタンは使い魔として、フリーダとはまるで兄妹にでもなったかのような生活を過ごしながら入学式を迎えた。
大講堂で行われた入学式は、まず学長の挨拶から始まり、教授陣の紹介そして新入生代表の挨拶などが行われたのであるが、代表学生は毎年成績トップの学生が選ばれるのだ。今年の代表学生は侯爵の嫡男アルベルト・フォン・メレンドルフであった。
そして、そのあとはクラスごとに分かれてホームルームとなった。
2人は所定の教室に移動し、決められた最後列の座席に座り他の学生を眺めてみると、なんと代表のアルベルトもいるではないか!そして付属の魔法科高校からの入学組もいるためにすでに仲良しグループが存在していた。
「では、ホームルームを始めるぞ!席に座ってくれ!」と担任教師が言うと、学生たちはそそくさと自分の座席に座り静かになった。
「俺はお前たちのクラス担任だ。ゲルハルト・フォン・ハッセルという。授業では剣術クラスを受け持っている。今年1年宜しく頼む! いきなりだが、今 クラス委員を決めたいと思うのだが立候補制だ。委員長1人、副委員長2人だ。」と言うと教室を見回した。
そして一拍置いてから「誰かやりたい奴はいるか?」と言うや否や、先ほどの代表挨拶をしたアルベルトが勢いよく手を上げた。「はい、私が委員長をやります!!」するとその後に、手を挙げた男子学生がいた。
「俺はダミアン、アルベルトがやるんだったら俺が副委員長に立候補します。」
「あとはいないか? 副委員長の枠がもうひと枠あるぞ!」
スタンの横でなんとなくもじもじとしていたフリーダであったが緊張した面持ちで手を挙げたのだった。
「じゃ、私がやります! フリーダと申します!」
「よーし!これで3人出揃ったが・・・お前らとしてはこの3人でいいか? 文句がある奴は手を挙げてその理由を述べよ!」と担任のゲルハルトが言うと、教室はシーンと静まり返ってしまった。
「沈黙か と言うことは、意義なしだな! では、その3人、前に出て挨拶をしてくれ!」
そして3人は教壇に立った。
「先ほど代表挨拶をしたアルベルト・フォン・メレンドルフだ。そしてメレンドルフ侯爵の嫡男だ。私は属性の専門で言うならソシアルナイトになるので、ここでは馬術、剣術、魔術を学ぶことになるが、王国を支えるために自分に厳しく修行するつもりだ。君たちも宜しく頼む。」
と同級生とは思えない上からの挨拶をした。
「俺は、ダミアン・フォン・シュタインだ。親父は伯爵なんだが、さっきのアルベルトの親父を支えている。だから、この学校でも俺もアルベルトを支えることにした。宜しくな! そうそう、俺は体力に自信があるんで斧を使うブリガントだ。」と手短に挨拶をした。
そして、最後はフリーダの番になった。
「私は特待生として入学しましたフリーダ・フォン・アルデンヌと申します。父は辺境の男爵です。赤魔法士になるために入学しました。皆さん、これから宜しくお願いいたします!」
3人の挨拶が終わるとクラスからは拍手が起こった。
「ヨシ!では、委員の3人これから宜しくな!! 今日はこれで終了になるが、明日からすぐ授業が始まる。この学院大学の授業はなかなか付いていくのが難しいと言われてるぞ!予習・復習を怠るなよ!いいな!!? では解散! おっ そうだ!委員の3人は残ってくれ!」
クラスはザワつき、すでに仲良し組や隣の机の学生たちなど小さく分かれて教室から出ていった。
そして残った3人はそれを見ていたのだが、ゲルハルトが委員長のアルベルトに学年行事表を渡した。
「これは今年一年のスケジュールだ。お前ら3人は今後俺からの指示を受けることになる。この学院大学の役割は卒業後王立軍の下士官を養成することであるがわかっているよな。お前らは今日から俺の軍門に降ったと思ってくれ!故に上官である俺の命令は絶対だ。そして、お前ら3人の委員はこの機会にマネージメント能力を鍛えてもらいたい。よって、このスケジュールを把握して準備しておいてくれ!いいな!?」
「はい!」と言うことで解散した。
教室にはスタンの他に後2名の男性も残っている。アルベルトとダミアンの使い魔だろう。
アルベルトは擬人化した虎の使い魔、ダミアンも擬人化した熊の使い魔であり、高位の貴族のみがこうした魔獣とも言える猛獣の精霊を使い魔として護衛のために使役できるのである。その精霊の使い魔は主人が必要な時だけ姿を表すだけで今日の出現は確認を兼ねた特別なものであった。使い魔の能力が主人の能力を底上げするのである。そのため学生全員が使い魔を伴っているわけではなく、むしろ少数の貴族階級の学生のみの特権でもあるのだ。そしてクラスの学生は貴族は6割、あとは地方豪族や有力豪商の姉弟で構成されており、その中から約8割の卒業生が王立軍を中心に国の要職に就くことになるのだ。
アルベルトが、「へえー お前の使い魔は人間なのか?」とフリーダに言った。
「ええ、そうよ! 私の護衛なの。ね!」と胸を張って振られ、スタンはドギマギしていたのだが、
「あっ、俺はスタンだ、宜しく頼む!」とボソッと言った。
「彼は剣術がすごいのよ!」
「へえー そうなのか? じゃ早速俺と手合わせを願いたいな!」とダミアンが嬉しそうに言ってきた。
「えー 今日は学園初日よ!あなた傷を負うわよ!」とダミアンを牽制しようとしたのだが、
「いいな!ダミアンに勝てるのか?やってみようぜ!」とアルベルトも乗ってきてしまったのだった。
スタンとしては、『ここで引き下がるとフリーダの使い魔としての立場がなくなるな』と思い、
「わかった!じゃ付き合ってやろうか。」とあまり積極的ではない返事をした。
「では、早速 武道場に行くぞ!」と3人は移動した。
ダミアンとスタンは学園規定の簡易防具を着用し訓練武具を持った。
ダミアンはシールドとアックス、そしてスタンは双剣である。
「へえー フリーダの使い魔は双剣使いなんだな!?」とアルベルトが興味を持った。
「では、両者、準備はいいか? 僕が審判をやるが学生なんで寸止めでお願いする。」
「では、良いか? 位置について 始め!!」
2人はまず睨み合い様子を伺っているようだ。
スタンは双剣を持ち腕をハの字に開いて下半身はいつでもダッシュできるように左足を一歩出したスタンスである。
対するダミアンはシールドを左手に持ち右手のアックス(斧)を小さく振り回している。




