第13話
魔法世界に冒険者として生きる孤児であり主人公スタンリー・ケンプ。
そこに生きる人々の様々な些細な行動がまるでバタフライ・イフェクトのように世界を変えていく。
この物語のテーマとなる『ストレンジアトラクター』とは、難しくいうと・・・
カオス理論の研究の中で発見された奇妙な挙動を示す微分方程式の状態の総称のこと。
つまり動的システムが時間とともに発展する際に、予測不可能 で複雑なパターンを形成する現象を指すのです。
そんな泡沫の世界で生きるスタンリー・ケンプ
彼の目を通してその冒険譚を進めていきたいと思います。
また本編である『光と陰ー織りなす夢の形』のスピン・オフとして、本編シーズン4の最後と繋がる物語となりますのでお楽しみに!
「それはいったいなんなんだ? 俺も知りたいんだ!!」
「多分、そのMはマーリーンを意味しており、マーリーンとは伝承で伝わる不老不死のエルフなのじゃよ。」
「伝承なのか? じゃこの剣はエルフがそもそもの所有者なのか?」
「まあ、そうではあるが、伝承と言っても人間界では伝承になってしまうのだが、エルフはそもそも不老不死のような種族であるから何百年も生きておるんだ。だから、そのマーリーンもまだ生きている可能性があるんだよ。」
「なるほど、じゃ俺を救ってくれたのはそのマーリーンなのか?? 奥が深いな・・・」とスタンは突拍子もない話のため、少し表情がこわばっているようだ。
「それは今の話だけではなんとも言えないのだが・・・マーリーンは後継というのか?いわゆる弟子にあたるものを探していると聞いたことがある。魔力量が絶大なものがエルフ族に限らず後継者になるそうなのだが、ただ今のお主にはそれを感じることができないのだよ・・・」
「まあ、そうだな。俺は今まで魔法というものが使えたことがないからな。」
「お主、剣の使い手か?」
「まあ、そうだな。自信はあるよ。」
「実はその双剣は魔剣ゆえ相当強力な魔法を引き出せるのだ。ただ、使い手がそれ相応の魔力がある場合のみなのじゃが・・・」
「なるほど・・・それはわかるよ。その気配は感じてはいたんだ。ただ、俺は・・・」
「が、しかし、もし仮りにお主を助けたのがマーリーンであれば、今のお主は開発されてはいないのだろうがその可能を秘めているということになるのじゃよ。それに伝承ではマーリーンが剣を授けるのは救世主メサイアだけなのじゃよ。」
「救世主メサイヤ??・・・救世主ってこと!? では、その可能性とは、どうやって魔力引き出せばいいんだ?」
「そうだなー・・・」と言ってエルフは何やら深く考え込んでしまった。
しばし無言の時が流れ、エルフは口を開いた。
「私は、ケレブリンという。実は王立魔法科学院大学の一介の教員なのだ。」
「えっ あなたはブリンデンブルク魔法科学院大学の先生ということ??」
「まあそうなのだが、ここで会ったのは他言無用で頼む。」
「わかった。それで??」
「私は君を教授枠での推薦学生としようかと考えているところなんだが・・・ただ、他の教授との兼ね合いもあるので私が専属的に教授することにはなるが・・・どうであろう?」
「あなたが俺の師匠になるってことか!? ・・・でも、それは、興味あるな。」
「ただ、ちょっと立て込んだ状況があるんだ・・・」
「なんだ言ってみろ!」
「実は俺はある娘と使い魔契約を結んだばかりなんだ。その女性は貴族の娘で、たった今お宅の大学の学長の奨学金学生への面接を受けに行ったんだ。そして、彼女が受かった場合は俺も一緒に学ぶことになっているんだ。」
「なるほど! それはそれで面白いな!使い魔とは!ハッハッハ!」と大笑いしている。
「しかし、メサイア候補が令嬢の使い魔とは面白すぎるぞ! まあ、でも、それはそれで良いアイデアだな。
それで入学してもらえれば、私だけの授業ではなくなるから学びの幅は広くなるし、その方が双方負荷がかからないだろう。」
「そうなんだ。でも使い魔で構わないのかい?」
「まあ、今のところはな。ただ、ゼミというのがあるのだが、ぜひ私のゼミに入ってくれ!」
「わかった。あなたは俺の師匠になるんだな、では、これから宜しく頼みます!」と言って別れたのだった。
宿に戻ると、ちょうどすぐに面接からフリーダも戻ってきた。
「おかえり!フリーダ!面接どうだった?」
すると満面の笑みを浮かべて、「大成功よ!!奨学生になれたわ!だから明日から大学の寄宿舎に住めることになったわよ。あなたも一緒にね!」
「ホント?? やったね! おめでとう!!今夜は盛大にお祝いだね!!」
そして、翌日2人は早速魔法科学院大学の寄宿舎に移動した。
赤煉瓦造りの蔦のからまる校舎に隣接してその寄宿舎は建っていた。2棟の細長い2階建ての建物で全部で40部屋があった。
2人が部屋に入ってみると、そこにはやはりシングルベッドが2つにデスクが2つ、壁面にはワードローブが付いているだけである。ただ、大学の綺麗な中庭を窓から見渡せるため部屋は狭いながらも視界は開けてるためあまり閉塞感がない部屋であった。
「まあ、狭いけど居心地良さそうね!」とフリーダが言うと、
「今度はシングルベッドだよ! でも本当に俺と毎晩同じ部屋で寝ることになっていいの??」
「もちろんよ!使い魔さん!あなたは護衛でしょ!」とニッコリ笑っている。
スタンにとっても、今回の旅でフリーダを女性として意識し始めていたために嬉しいような緊張するような複雑な心境にもなっていたのである。
「あっ、そうそう!あと私のクラスも決まったわよ! なんとAクラスよ!」
「それって??」
「最優秀クラスってこと!」
「へえー やっぱり君はすごいんだね! と言うことは俺も一緒なんだろ?」
「そうね! 他の貴族の学生も使い魔が一緒にいると思うわ。主に人間じゃない同性だけどね。」
「えっ みんな同性なの?本当に男でも大丈夫なんだろうか?」
「面接の時にも確認したんだけど、使い魔に性別の決まりはないそうよ!よかったわね!」
「じゃ、さっそく大学構内の探検に行ってみない??」
「よっしゃー!!楽しそうだね!」




