第10話
魔法世界に冒険者として生きる孤児であり主人公スタンリー・ケンプ。
そこに生きる人々の様々な些細な行動がまるでバタフライ・イフェクトのように世界を変えていく。
この物語のテーマとなる『ストレンジアトラクター』とは、難しくいうと・・・
カオス理論の研究の中で発見された奇妙な挙動を示す微分方程式の状態の総称のこと。
つまり動的システムが時間とともに発展する際に、予測不可能 で複雑なパターンを形成する現象を指すのです。
そんな泡沫の世界で生きるスタンリー・ケンプ
彼の目を通してその冒険譚を進めていきたいと思います。
また本編である『光と陰ー織りなす夢の形』のスピン・オフとして、本編シーズン4の最後と繋がる物語となりますのでお楽しみに!
そんな会話のかな、2人の馬車は平坦とは言えない地形をかなりのスピードで駆け抜けていった。
「こんなに飛ばしてれば山賊には襲われないだろう!?」
「だけど、すごい揺れだし馬も大丈夫かしら?馬車だってネンキ入ってるからあまり飛ばすと壊れるわよ!」
確かに車両の軋み音が激しくなってきていた。
「そうだな、壊れちゃうともともこもないしね。わかったよ、ちょっとスピードダウンするね。」
と言った途端に車輪が歪んで回るようになり小刻みに左右にブレるようになってしまったのだった。
「おっ、ヤバイ!! これじゃ壊れるぞ!!」とスタンは急停車させた。
「だから、言ったじゃない!!」
「あっ ごめんごめん! すぐに直すよ! まあ車輪が外れなくてよかったわ〜」とスタンは御者台から降りて外側後部に格納されている工具類を取り出した。
どうやら、古い車輪のため車軸を通している穴が広がり緩くなってしまったようなのだ。
「うーん・・・これは・・・・」
「修理できるのよね?」とフリーダが少し焦っている。
「ねえ、フリーダ? これって君の魔法で直せないのかな??」
「えー 今の私の魔法じゃ無理よ! あなたがいけないんだからちゃんと直してね!!」と言って怒ってそっぽを向いてしまったのだった。
「わかったよ!直せばいいんでしょ!直せば。」と言いながら彼は修理方法を考え込んでいたのだが、一旦車輪を上げて外すと少し大きくなった車軸が通る穴を調整し始めた。
修道院時代の日曜大工の経験が役にたちそうである。
小1時間ぐらい経っただろうか? やっとどうやら調整ができたようだ。その間は幸いにも何事も起こらなかった。
「フリーダ!できたよ!!完璧だ!!」と車輪が再度元に戻った状態になって汗を噴きながらも悦に行っている。
しかし反応がない・・・
ホロの中を覗き込んで見ると、彼女は待ち疲れて居眠りしているのだ。
『こうやって寝顔を見ると可愛いな〜 昨晩は意外と俺の隣でぐっすり眠れなかったのだろうか?』と思った。起こすと可哀想な気持ちになりスタンはそのままゆっくりと馬車を前に進ませたのだった。
ここで時間をとってしまったのだが、やっと遠くの山麓に町が見えてきた。
ガッセル山脈の麓にあり温泉で有名な町のため所々に湯気が立ち昇り硫黄の匂いがしている。
街の中に入ると行き交う人々も色々な人種が入り混じりマイハイムよりは賑わっているように見えた。
露天ではなく様々な看板の店が並び、旅人が物色している姿が至る所で見ることができた。
「あっ ここが今日の宿屋だな!? フリーダ! 着いたよ!!?」
「えっ 着いたの?? ・・・」眠そうな目をこすりながら顔を幌から出して外を眺めている。
「あっ ほんとだ!! 私眠っていたのね・・・」
「君が眠っている間にちゃんと直したよ! 宿って、ここでいいんだよね!?」
「ええ、そうよ!よかったわ! じゃ荷物を持ってチェックインしましょう!」
そして2人は2階の部屋に通された。
「この1階の奥は男女別の温泉露天風呂になっております。いつでも入浴できますのでお寛ぎください。」と番頭が言って鍵を渡した。
「宿に露天風呂があるなんてすごいね!!」
「まあ、ここは温泉町だからね!」
「馬車の修理はあったけど、ここまで無事来られたね!」
「まあそうね。一瞬どうなるかと思ったけど、あとはカッセルの村を超えてから峠道が一番要注意なのよね!」
「今のところ 護衛としてはあまり活躍してないから何かあった場合はやっと活躍時だね。」
「でも、何もなくて越したことはないわよ!」
窓を覗くとすでに陽が落ちていた。
このローベックという町は標高が1000mを越す高い位置に位置し既に肌寒くなっていた。
「なんか寒くなってきたわね? 温泉は気持ちよさそうね! でも私ちょっと疲れちゃったみたい。少し休むわ。」と言うといきなりベッドに入って寝てしまったのだった。
スタンは、手持ち無沙汰になり窓際の小さなテーブル椅子に座ってボーッとしていたのだが、行き交う冒険者のパーティーを眺めているとあの時の懐かしさが込み上げてきてしまった。
すると、あの仲間が殺された惨劇がまた走馬灯のように浮かんできたのだった。
『俺がもっと強ければ!!』と後悔の念に駆られ、気づいた時には窓から飛び降り通りに立っていた。
『あれ、俺、今2階から飛び降りたのか?? しかも足には衝撃は感じなかったな。一体なぜ?』
「あれから全く剣を抜く時間もなくて、自分のこともまともにわかっていなかったんだが、もしかしたら、あの山小屋に救助された時に身体にも何か変化があったのかな? そういえば、あの冒険者のおっさんたちを殴った時も普通に殴ったのにかなり衝撃を受けていたよな!? まあ、あの深い傷が治っていたわけだから、少なくとも今日のフリーダのように誰かが特殊な治癒魔法をかけてくれたんだろうな・・・その時に何か付与されたんだろうか?? しかし、一体誰だったんだ?」とやっとあの時を回想できる精神状態になっていた。
『そうだ、あの双剣を背負ってはいるけれど、まだまともに振ったこともないな!』と思うと、スタンは人気のない場所に移動し双剣を抜き握りしめた。すると、なんと驚くことに2本の剣が右が赤色に左が水色に薄く光り出したのだった。
『なんだ、これは? これが魔剣ということなのか・・・』
そして2本の魔剣を双剣の型どおりに振り回してみると、ミスリル製の剣は以前より軽く切れ味も鋭く感じた。『しかし、護衛とか言っているが、自分の剣も把握してないなんて情けない・・・一体俺は何しているんだ!? 俺が強くなかったばかりに仲間が死んだというのいに!!』
と思いながら、その2本の軽い魔剣をスタンは戦闘時の型にはめて無我夢中で振ってみた。不思議と剣に意志がありそれと繋がったかのように感じたあとはまるで体の一部のように思い通りにパワフルに振れるようになった気がした。
『しかし、これはいいな!! これだったら今までより強くなった気がする!』
やっと以前の自分に、いやそれ以上の状態になったことを確認できたのであった。
『ヤバイ!そろそろ戻らないと!俺は護衛なんだから、この間彼女に何かあったら!』と我に返り急ぎ宿屋に戻って行った。
彼が部屋に戻ると、フリーダは起きてベッドに座っていた。
「あなた、何してたの?」と不機嫌な表情をしている。
今日はバースデーなので、おめでとう“いいね”とブックマークもお願いしますね!!(笑)




