第1話
魔法世界に冒険者として生きる孤児であり主人公スタンリー・ケンプ。
そこに生きる人々の様々な些細な行動がまるでバタフライ・イフェクトのように世界を変えていく。
この物語のテーマとなる『ストレンジアトラクター』とは、難しくいうと・・・
カオス理論の研究の中で発見された奇妙な挙動を示す微分方程式の状態の総称のこと。
つまり動的システムが時間とともに発展する際に、予測不可能 で複雑なパターンを形成する現象を指すのです。
そんな泡沫の世界で生きるスタンリー・ケンプ
彼の目を通してその冒険譚を進めていきたいと思います。
また本編である『光と陰ー織りなす夢の形』のスピン・オフとして、本編シーズン4の最後と繋がる物語となりますのでお楽しみに!
孤児として辺鄙な村に生まれた男がいた。
名はスタンリー・ケンプ。
孤児院ではスタンと言われている。
孤児たちの世話を受け持っている修道女によると、彼は赤子の時に修道院の玄関口に捨てられていたとか。
編んだ篭の中にボロ切れで包まれていたという。
彼は他の孤児の仲間と一緒に育てられ、今ではたくましい少年になっていた。
そして、この修道院には男女共学の学校のようなものも併設されていたのだった。
主に自活できるようにという修道院長のはからいで読み書きはもちろん、特技を伸ばすという目的で剣術や魔法の簡単な道場もあった。
総員60人ぐらいの孤児の中で、自我が強いが仲間思いのスタンには男女5人の親友がいた。
生まれが孤児でなかったら、ある程度のレベルにまでいけたのでは?と言うのが仲間の見立てである。
そして、スタンが17歳になったとき、その仲間たちと冒険者パーティーを組んだのだ。
パーティーメンバーは、タンク、アーチャー、プリースト、メイジによる5人構成だった。
スタンはこの頃は片手剣で戦い、当時話題になっていた町外れのダンジョンへ仲間を連れ立って魔獣討伐に出かけたのであった。
好奇心旺盛な彼らは魔獣を討ちながら順調に洞窟内奥深くに潜っていった。
そして今、ラスボスがいるという通称『謁見の間』に立っている。
「ここまではチョロかったな!みんな、ここが最後の階層だ! まだ誰もラスボスには遭遇したことがないらしいが、獅子型の巨大なやつだという噂がある。 俺たちが最初にやっつけるんだ!!みんな気を引き締めていこうぜ!」とリーダーであるスタンは仲間に呼びかけた。
「ウォー!!」5人は構えながら少しづつ玉座のように見える大きな岩に向かって行った。
ちょうど洞窟中央に立った時である。
中央の床石が不気味に赤く光ったのであった。
「何か来るぞ!」
すると、洞窟奥から不気味な影が巨体を現した。
「なんだ、あれは??」スタンが焦った声で叫んだ。
それは巨大な赤龍であった。
「やばい!あれはドラゴンだ!ドラゴンなんかいるって聞いてないぞ!!」とアーチャーが言った。
「でも、後戻りはできないぞ!俺達あいつに睨まれているからな!」とタンクが。
「何かあったら私がヒールするわよ!」とプリーストが言った。
メイジがまず率先してファイアーボールをいくつも打ち込んだのだが全く効果がない・・・
すると赤龍がリベンジの火炎を吐き出したのだった。
タンクが大きなシールドでメンバーを守り、龍が吐き終わった瞬間にスタンが走り
大きくジャンプすると岩の上でさらに宙に飛び赤龍の頭の上から勇ましくソードを振り下ろしたのだった。
今までの魔獣はそれで必殺だったのだ。
もちろんスタンもこれで決まったと思った。
それが、赤龍の鱗の硬さに跳ね返されたばかりか剣が割れてしまったのである。
そして落下する際に赤龍の太く長い尻尾に強く殴打されて洞窟の壁に叩きつけられたのだった。
落下したスタンは腹部にまともに食らったため全く動けず、視界も暗くなってうずくまっていた。
だが、微かな音だけが彼の耳に入ってきていた。
その戦闘の音の中で、まずはプリーストがやられた叫び声が聞こえたと思ったら、次は魔法を連発していたであろうメイジが竜に噛み砕かれる音がした。
残ったアーチャーとタンクは逃げようとしたのだが、赤龍に逃げ道を塞がれ、踏み潰された鈍い音が聞こえたのを最後にスタンの意識が遠のき動かなくなった。
彼の目からは無念の涙が流れていた。
そして、気がついた。
『あれ、ここは? 天国か? いや天国でも地獄でもなさそうだな・・・』
視界が戻り、仰向けになっている状態であたりを見回してみた。
『ここは山小屋なのか?』
スタンは大きな古いテーブルの上に寝かせられているようである。
赤龍に強烈な一撃を食らった時には肋骨が砕け内臓も破裂していたはずなのだが、なぜか元通りになっている自分の姿を発見したのだ。
『なぜ、俺だけが・・・』と不思議であった。と同時に仲間の声が頭を離れなかった。
スタンは起き上がり膝を抱くと涙が込み上げてきた。
激しい感情が溢れ出し、彼はテーブルから降りると壁に頭を打ちつけて泣き叫んでいる。
仲間を失った責任と強い後悔の念だけが残ってしまったのだった。
「しかし、いったい誰が俺を・・・」
ふと我に返り、小屋の中を見回してみたがやはり他に人の気配はなかった。
この廃屋のような山小屋の壁には古のロマン文字のイニシャルMの紋章が飾られており、その下にはまるでスタンに使ってもらいたいかのように2本の剣が飾られていた。
『なんだ、これは? 双剣なのか?』
スタンは思わず2本を鞘から抜き手に取ってしまった。
すると強烈な電気ショックのような感覚が走り、双剣のグリップの下についている丸いポンメルの部分が微かに光ったような気がした。一瞬剣とシンクロしたような感覚が走ったのだ。
そして、気がつくと気を失ってまたその場に倒れていた。
『なんだ?わけがわからない・・・早くここから出るぞ!』と思い、
双剣を背中に挿して小屋を後にした。
何も考えずに咄嗟に小屋の外に出たのであるが、そこは見た事もないような深く暗い森の中であった。
『いったい 俺はここから出られるんだろうか・・・』
本編スピンオフの新たな物語の始まりです!
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途中で本編とリンクしますのでお楽しみに!
そして投稿は、また引き続き火曜日と木曜日にして行きたいと思います!




